IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第664話】
前書き
三週間ぶりな更新
現れた無数のドボン太達、色ちがいのドボン太の手には無数の風船が握られていた。
『アルセーヌ・ドボン太三世、あらゆる物を盗む泥棒だよ。 子供達のハートも盗むんだ!』
赤いドボン太がポーズをとると、次は――。
『次元ドボン太、早打ち0コンマ三秒のガンマン。 頼りになる相棒だ』
グレーがかったドボン太がそう告げ、次は――。
『石川ドボン太、何でも一刀両断。 この世に斬れぬものはない怖い男』
そしてピンクのドボン太――。
『峰ドボン子。 敵か味方か、謎の女』
まだまだいるドボン太達――。
『ぼくドボえもん! 未来世界からやって来た!』
『ドーボン・太、ドボン太の従兄弟!』
『ふもっふ!! ぼくボン太くん! ふもふも!! もっふる!』
『おら、ドボのすけだぞ~』
色とりどりのドボン太達、ヒルト達三人を取り囲むように手を繋ぎ、三人の周りをぐるぐると回る。
何かのイベントなのかと思ったギャラリー達が思い思いに写メを撮り始めた。
ある意味注目の的になってしまった一同。
『あはははは』
『ここは楽しいテーマパーク』
『皆で一緒に踊ろうYO!』
『楽しい楽しいダンスだ!』
『Let's dance!!』
『ふもっふ! ふもももも!』
『綺麗なお姉さんを取り囲むゾ~』
楽しそうに回るドボン太達、セシリアとソフィーは状況が理解できなく、困惑している最中でヒルトは俯き、小さく震えていた。
「……ン太……ん」
「ヒルト……?」
ヒルトの様子が違うことに気づいたソフィーは、無防備にヒルトの顔を覗き込む。
そこにあったのは、無邪気な少年の様な表情をしたヒルトの顔だった。
「うぉぉおおおっ! ヤバい! セシリア! ソフィー!! ドボン太くんだぜドボン太くん!! うっひょー! ヤバいヤバい! テンション上がる!!」
「ひ、ヒルトさん……?」
「えっ? ど、どうしちゃったのヒルト?」
きょとんとしたセシリアに目が点になったソフィーを他所に、ヒルトはぐるぐる回るドボン太の輪に入り、一緒に踊り始めた。
そんな予想外な動きを見せたヒルトに、ドボン太達の中の人達は――。
(ど、どういうことなのだ!?)
(し、知らないわよ! 三人の妨害のつもりでドボン太くんシリーズ借りただけなのに!)
(この反応見る限りだと、ヒルトってドボン太くん好きなのかなぁ……?)
(嫁が愛好しているのであれば、私もドボン太くんを愛そう!)
(ドボン太くんに萌えるヒルト……。 ……良いかも……)
(あ、そういえばお兄ちゃんって着ぐるみ見たら何故かテンション上がってたっけ?)
(そうなんだ! なら美春、今度着ぐるみ着てヒルトに会う!!)
(君の趣向が可愛いもの好きだったなんて……。 わ、私もドボン太くん好きだ!)
中の人各々通信して会話する中、未来、セラの二人は着ぐるみを着ずに――。
「未来は何故ドボン太くんにならなかったの?」
「あ、あはは……。 ぼ、妨害って気分じゃないから」
「そう。 私も妨害するなら大人しく三人に合流する」
そう告げるセラに、未来はふわりと柔らかな笑みを浮かべた一方でエミリア・スカーレット。
彼女も本来ならテーマパークでヒルトのデートを妨害する予定だったが、急遽父親からの連絡によって参加できなくなっていた。
「パパ! 急に連絡なんて何なの!? エミリア、今日はとってもとーっても! 大事な用事があったんだけど!?」
ぷりぷりと電話越しに怒るエミリア・スカーレット、目尻を吊り上げ、頬も膨らませた上に仁王立ち。
彼女の怒りは頂点に達しかけていたのだ。
『ごめんごめん! エミリアちゃ~ん、パパはどうしてもエミリアちゃんに連絡したくなって――』
「何よ!? つまらない内容だったら一生パパと口訊かないからね!?」
『それに関しては大丈夫だよエミリア。 先ずは先に――』
場所はまたテーマパークに戻り、集結したドボン太くん達と踊るヒルト、状況が飲み込めないセシリアとソフィーに、何かのイベントかと集まるカップルや親子連れ、特に子供たちはドボン太くんにキラキラとした眼差しを送っていた。
「何か楽しそうなイベントだな!」
「わー! パパ! あたしもまざりたーい!」
「いつもこんなイベントは無いのに、新しい趣向なのかしら?」
喧騒は広がり、楽しそうな雰囲気が周囲を包む。
子供の一人がドボン太くんの輪に入ったのをきっかけに、周囲の客はドボン太くんダンスに参加を始めた。
事が大きくなり、焦りを見せたのはドボン太くんの中の人達――。
(ど、どうするのだ!?)
(し、知らないわよ!?)
(こ、こんなに事が大きくなるなんて、僕は考えもつかなかったよ……)
(我が嫁がきっかけだな)
(……てか、気づいたらお兄ちゃんいないんだけど)
(あれ!? 一緒に踊ってたのになんで!?)
(か、彼なら子供たちに譲ってもう――)
エレンの指差す先に、既にドッグパークへと向かう三人の姿があった。
追いかけ様にもイベントと勘違いした客がダンスに参加し、ドボン太くん達は見事に足止めされてしまった。
一方で三人は――。
「驚きましたわ。 ヒルトさんにあの様な一面があったなんて……」
「ふふっ、意外な一面っていいたいけど、ヒルトのそんな一面あたしは素敵だなぁって思うよぉ!」
セシリア、ソフィーの二人にそう言われて頬を掻くヒルトは。
「ま、まあ童心に帰りたくなったって事だな。 テーマパークのマスコット見たら昔からテンション上がるんだよ」
僅かに頬が赤いヒルトを見て、二人はクスクスと笑みを浮かべた。
その後方では未来とセラの二人が――。
「未来、皆を置いてきたけどよかったの?」
「よくはないけど、あれだけ騒ぎが大きくなっちゃったら……あはは」
助けようにも助けられない現状もあるのだ。
まだ楽しい休日は始まったばかり、だが――陽が断末魔をあげる夕刻に、悲劇が訪れるとはこの時のヒルト達には知るよしもなかった。
後書き
次はワンコパークなう
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