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妖怪退治忍 珊瑚

作者:織部
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妖魔襲撃

「おい、また退治忍が出たぞ」
「く~、たまんねぇな、この身体!」
「退治忍てエロい恰好してんなぁ」
「レディ・クレッセントのやつ、 ホント引き締まったいい尻してるよな。マジ、エロすぎる。ブチ込みたいぜ!」
「おれはこのデカ乳でパイズリして欲しい!」

 留羽美玖(るうみっく)学園、中等部。放課後の教室では数日前におきた妖怪退治の話題でもちきりだった。
 悪霊や妖怪が跋扈する現代、破邪退魔の業で魑魅魍魎を駆逐する妖怪退治屋は若者あこがれの花型職だ。
 陰陽師、修験者、密教僧、神官、巫女、道士、エクソシスト――。
 多くの妖怪退治屋が活躍し、タレントとしての顔も持つ者も少なくない。
 なかでも男子たちに人気なのはスタイル抜群の退治忍、レディ・クレッセントだった。
 巨大なブーメラン状の武器を得物にしていることからその名がついたのだが、女性の退治忍であることしか世に知られていない。
 そのボディペイントのように全身にフィットした漆黒の戦闘服に身をつつみ、たわわに実った双乳をゴム鞠のように揺らして戦うその姿から多くの男性ファンを持つ。

「見ろよこの動画、おっぱいぷるんぷるんだぜ」
「あー、やりてぇ……」
「やばっ、チンコ立ってきた」
「お、おれも……」

 性欲を持て余す少年たちからの色情の眼差しを向けられるこの女性退治忍こそ、誰あろう珊瑚その人であった。

「ハァハァ、たまんねぇ。おれ実は昨日レディ・クレッセントでシコッたんだ」
「おれも毎日ズリネタにしてるぜ!」
「おれなんて今朝抜いてきたばかりだよ」
「げぇーっ、どうりでイカ臭いわけだ」
「どんな妄想で抜いた?」
「おれは――」

(くっ、みんなが姉上のことをエロい目で見てる……)

 いたたまれなくなった琥珀がその場から離れようとしたとき、猥談に興じる男子のひとりが声をかけてきた。

「なぁ、琥珀もクレッセントでシコってんだろ?」
「お、おれはそんなことしないよ」
「おいおい嘘つくなよ、あんなエロい女見てシコらないやつなんていないだろ」
「そうだよ、正直に言えよ」
「あ、でも琥珀ならありえるよな。なんせ姉上ひと筋だから」

 珊瑚、琥珀姉弟のブラコン・シスコンぶりは学園内でも有名で、よくからかわれていた。

「いいよな~、珊瑚さん。あんな美人の姉ちゃんがいたらおれでもシスコンになるわ」
「……なぁ、そう言えばレディ・クレッセントと珊瑚さん。似てないか?」
「たしかに、ムッチリとした身体つきがそっくりだな」
「珊瑚さんに退治忍のコスしてもらいてぇ」
「すげー似合うぜ」
「おれは競泳水着を着て欲しいな」
「おれはレオタード!」
「レオタードもいいけど、おれも競泳水着かな」
「それならおれは――」

 レディ・クレッセントから一転、こんどは珊瑚をネタに猥談をしはじめたエロ男子たちであった。もっとも両者は同一人物なのだが、知るよしもない。

「……っ」

 実の姉を欲情の目で見られ、さんざんに卑猥な言葉を聞かされた琥珀はいよいよいたたまれなくなり、その場から去った。





「あいつら、姉上のことさんざんオカズになんかして……」

 クラスメイトたちに悪気がないのはわかっている。だが股間をふくらませて妄想を語る彼らの姿に大切な姉を汚されたような気がして気分が悪かった。だがそう思う琥珀自身の身体にも発情の(しるし)が現れていた。

「姉上、みんなからエロい目で見られてる。ズリネタにされちゃってるんだ……」

 琥珀の脳裏にクラスメイトたちに輪姦される姉の姿が浮かび、興奮してしまったのだ。
 股間が大きくふくらみ、前かがみにならないとはしたない姿を見せてしまう。
 がまんできない。
 エレクトしたペニスをリフレッシュさせるため、利用者の少ない体育館のトイレに駆けこんだ。

(はぁはぁ……ハァハァ……、ハァハァハァハァ……。あ、姉上。姉上っ姉上っ)

 琥珀の脳内では競泳水着を着た珊瑚がクラスメイトたちに凌辱されていた。
 欲情しきった男子生徒たちに前後左右から揉みくちゃにされ、いきり立ったペニスが美貌に押しつけられる。ギトギトのカウパー液を顔中に塗りたくられ、まるで霧でも吹いたかのような妖しい光沢を放つ。
 カウパー液に汚されているのは顔だけではない。ひとりの生徒が執拗に頭髪を攻め、ペニスで綺麗な黒髪を梳る。

「あ~、珊瑚さんの髪の毛むっちゃサラサラ。出してもいい? ここに、サラサラのロングヘアーにぶっかけてもいい?」
「射精するよ、珊瑚さんのムチムチプリプリの競泳水着の上にかけちゃうよ?」
「顔射するよ! 珊瑚さん、おれのザーメン受け止めてっ」

(ああ、あいつら姉上のことをあんなにめちゃくちゃにして……。くっ、姉上! 姉上っ、姉上っ、姉上ッッッ!)

 ドピュ~ッ、ビュルルルルルルッ――

 最愛の美姉が知り合いに凌辱されるという、生々しい実姉ネトラレ妄想でオナニーはすこぶるはかどり、すぐに絶頂に達してしまった。
 便器の水溜り部分に吐き出された白濁液を見つめるうちに罪悪感が込み上げてくる。

(また姉上をオカズにしちゃった……。それにみんなまで使って、最低だ、おれ……)

 罪の意識にさいなまれつつトイレから出ると、体育館から騒々しい声が聞こえてきた。なんとはなしに顔を出すと、バスケ部が活動をしていた。
 上は白の体操着で男子は紺の短パン。女子は濃紺のブルマを穿いている。これが留羽美玖学園指定の体操服だ。

「琥珀」
「あ、姉上っ!?」

 ボールの弾む音と一緒に最愛の人から声をかけられ、思わず動揺してしまう。なにせついさっきまで本人をオカズに自慰に耽っていたばかりなのだ。

「めずらしいね、おまえが授業でもないのに体育館に顔を出すなんて」
「え、あ、うん、その――」

 運動神経抜群の珊瑚は各運動部から声をかけられ、よく助っ人に駆り出されていた。今日はバスケ部の活動に貢献しているらしい。
 珊瑚は準備体操がてらに長い両手両脚を使って軽くドリブルチェンジしている。他の女子より頭ひとつは高い長身を動かすたびに、ツンと上を向いた乳球がブルンッと揺れた。
 濃紺のブルマから伸びる健康的かつ艶めかしい太腿にはうっすらと汗が浮かび、一〇代後半の少女が持つ溌剌とした魅力に満ちている。
たった今射精したばかりだというのに、その姿を見てまたも股間が反応してしまった。

「姉上、おれ先に帰る!」
「え?」

 返事も待たずに脱兎のいきおいでその場を立ち去る琥珀。

「もう、変なの」

 去っていく弟の姿を見送り、なにげなく身体をよじる珊瑚。若く張りのある尻谷にキュッとブルマが食い込み、ボリューム満点の尻肉が紺の布地に搾り出されてはみ出す。

「ん……、もうっ、この服小さいな」

 UよりはVに近いレッグホールに指をもぐらせ、ヒップラインを整える。その柔らかそうに盛り上がるブルマの股間を周囲の男子たちがチラチラと盗み見るが、珊瑚は気にも留めない。
 そのとき、身体の奥がズウンッと疼いた。

「ンンッ!?」

 とっさに腕を組んで双乳をかき抱く。さらに盛り上がった体操服にブラジャーの陰影が浮かび上がり、周囲の男子たちが息をのむ。

(これは……、毒気?)

 腰の奥が甘く疼き出す。思わず太腿をすり合わせ、ブルマをギュギュッと絞ってしまう。濃紺の布地がふたたび尻たぶに食い込んでくる。

(媚毒の類か、早くみんなを避難させないと)

 だがどうやって伝えよう。騒ぐ生徒たちを見まわして思案をし始めたとき。

 ガシャァァァンッ! 

 ガラスの割れる音が響く。見ればバルコニーのガラス窓が砕かれ、そこから赤黒い物体が飛び込んでくる。

「きゃぁぁぁっ!」
「な、なんだアレはっ!?」
 
 騒然とする生徒たちの間近、バスケットコースの真ん中に赤黒い塊がベチャリと落ちる。
 牛のような大きさで人間のような姿をしたそれからは丸太のように太い蛸足が多数生えていた。
 にゅるり、と蛸足が蠢くと、中からは筋骨隆々としたスキンヘッドの大男が現れた。下半身すべてが吸盤つきの触手で、赤黒い皮膚には体毛がいっさい生えていない。まさに蛸のような妖怪だ。
 むわり、とその蛸の全身から鼻をつく甘いような生臭いような毒気が放たれるとともに、触手がひとりの女生徒に伸びる。

「くっ! どうしてッ!?」

 瞬時に身をひるがえす。純白の体操着につつまれた豊かなマストが振り子のように左右に揺れる。ブルマから伸びる太腿に力を込め、身体の疼きも忘れて駆け出した。だが、蛸妖怪との距離は離れている。

(ダメっ、間に合わない!)

「あぶないっ、逃げて!」
「こ、琥珀!」

 女生徒に蛸足触手が巻きつく寸前、横合いから去ったはずの琥珀が飛び出してきた、琥珀もまた妖しい気配を察知し、引き返してきたのだ。体術こそ姉に劣るものの、霊感のようなものに秀でている。
 硬直していた女生徒を突き飛ばし、触手から逃す。だがそのせいで女生徒の身代わりに琥珀自身が醜悪な触手にからめ捕られてしまった。

「ああっ、琥珀!」
「う! くっ、放せ!」

 野太い触手が琥珀の腰から首まで螺旋を描いてからみつき、またたく間に中空へと持ち上げられる。
 
 ベリベリベリッ!

 触手についている吸盤が白いブラウスを紙のように破る。

「ううっ、このタコっ、よせっ」

 暴れる琥珀の両手両脚にも次々と赤黒い触手がからみつき、細い腕が頭上でまとめて拘束され、ズボンの裾から侵入した触手が素足にグルグルと巻きつく。

「ひぁッ!? や、やぁっ……、や、やめろォッ……!」

 全身を触手に締められながら、琥珀がうわずった声をあげて腰をふる。足にからみつく触手の先端が男子最大の急所にふれているのだ。

「このっ、琥珀を放せタコ妖怪!」

 これでは自力での脱出は不可能だ。大至急助けなければ命があぶない。
 たとえ退治忍としての正体が衆目に知られてもかまわない。駆け寄りながら腕に仕込んだ刃を振るおうとする。
 だが妖怪は巨体に似合わない俊敏さで身をかわすと琥珀を盾のように突き出した。

「動くな娘、動けばこの小僧を殺すぞ!」

 切り裂こうとした手を急停止させる。妖怪に絞られている琥珀の身体がミシミシと音を立ててきしんでいた。

「うグゥゥゥッ!? く、苦しい……」

 吸盤でブラウスをビリビリに破いた赤黒い触手の剛力では琥珀の華奢な身体など一瞬でバラバラにできそうだ。

「あうっ、ぐぅぅぅッ! あ、姉上っ、おれのことはいいから早くこいつを……、かはっッ!?」

 琥珀の首に巻きつく触手がギュッと締まる。窒息し、真っ赤な顔はみるみる蒼白になっていく。

「黙れ小僧、おまえの他にも人質はいるんだぞ?」

 蛸妖怪がじろりと周囲を見回す。すくみ上る少年少女たち。恐怖で完全に委縮して逃げるどころではない。いや、下手に逃げようものなら俊敏な触手にからめ捕られてしまうことだろう。

(くっ、このままじゃ他のみんなも……)

 脅しではない。この妖怪は本気だ。
 琥珀を殺して他の生徒にも手を出す可能性は高い。いまは抵抗すべきではないと珊瑚は判断した。

「やめろっ! わ、わかった。おまえの言うとおりにする」

 手をあげて降参の意を示す。

「そうだ、それでいい。いい心がけだ、おとなしくしていれば命までは取ろうとはせぬぞ……」

 蛸妖怪の顔に好色な笑みが浮かんだ。 
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