君色に染まりて
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03・映す夢
8
「・・・・・・・・・・・・・っ、」
ひと時の幻から解放されたアズリは、ゆっくりと起き上がる。
頬に手をやると、真新しい涙が零れ落ちていった。
「どうして・・・・・、あんな夢を・・・・・・・・・。」
呟いた言葉は、目の前の黄昏に染まりゆく世界に溶けて消えていく。
零れそうになる涙を押し込めて、中庭へとつま先を目指した。
★☆★☆★☆★☆★☆★
中庭は、色彩豊かな花々が咲き乱れていて。
すべての花々が、その場所で花開いたことを誇るように・・・・・・・。
「綺麗・・・・・・・・・。」
遮るものなく呟くと、知らず声に載せる歌。
育ての親である祖母から教わった、古い恋を謳ったもので・・・・・・・・。
夕陽の向こうに、笑んだ祖母を見た・・・・・・・気がした。
(おばあちゃん・・・・・・・・・。)
胸が軋む心地がして、思わず口元を覆った。
そのままぽろぽろと感情が溢れるのを自覚して、おもてを俯けた。
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