IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第665話】
前書き
本編更新
場所はIS学園、寮近くの公園。
寒空の中、舌を出していぬきちは散歩をしていた。
「わんわんわわんっ(散歩楽しいわん、にゃん次郎も散歩に来たらよかったのにわわんっ)」
暢気に歩くいぬきち、曲がり角に差し掛かると以前知り合ったふぅくんが微動だにせずポーズをとっていた。
「わんっ?(何してるわんっ?)」
「ホーホー(ラブリーふぅくん人形フクロウよ)」
「わふっ?(ラブリーふぅくん人形わんっ?)」
よくわからないいぬきちは小さく頭を傾げる、ふぅくん的にはぬいぐるみに擬態してるつもりの様だった。
「わわんっ。 わふっ、わんわん(よくわからないわわんっ。 とりあえずラブリーふぅくんも一緒に散歩するわんわん)」
「ホー(仕方ないフクロウね、我がラブリーに散歩に付き合うフクロウよ)」
「わわんっ(嬉しいわわんっ)」
小さく跳ねるいぬきちとふぅくん、何気ない所で交わされる動物達の交流は平和の証といえるかもしれない。
一方でにゃん次郎ことシャイニィはヒルトの部屋で昼寝をしていた。
真っ白な毛並みは雪のように美しく、寝息をたてるその表情の愛らしさは見るものを虜にする事間違いなし。
ただ――彼女はツン気味の気分屋な所もあるので人の気配がしたら直ぐに目が覚めるかもしれないが。
「にゃふ……ふにゃぁ……(お魚……お魚が飛んで逃げていく……)」
話はテーマパークに戻り、ドッグパーク内。
ヒルト達三人が現れる前の事だった。
ポメラニアンやチワワ等の小型犬は女性達や子供達に可愛がられている一方、大型犬達は凛々しく座り、それを羨ましそうに眺めていた。
「ガウッ(奴等、小型犬には群がるのに何故我々には近寄らないのだ)」
「ワンッ(それは俺達がイケメン故の定めだろう。 イケメンには近付きがたいだろう、ジョニー?)」
「ガウガウッ(成る程、イケメン故に近付きがたいのか……。 かっこよさとは罪だな、マイケルもそう思うか?)」
「バフッ(その通りだ、私もそう思うぞ)」
ドーベルマンのジョニー、ゴールデンレトリバーのマイケル、そして名前は上がらなかったがシベリアンハスキーのアンソニーの三匹が互いに頷き、そう告げている。
これから彼等に待ち受けるのは……それは、一人の男によって名前が変えられてしまう運命だった。
ドッグパーク内へと入ったヒルト達一行、受付を済ませて早速セシリアは小型犬コーナーに足を踏み入れる。
「きゃんきゃんっ(遊んで遊んでー)」
「わうっ(ごはんごはんー)」
踏み入れたセシリアに群がる小型犬、すぐそばのダックスの頭をそっと撫でると――。
「ああ、可愛いですわ……♪」
「わふっ、わんっ(構って構ってー)」
遅れて小型犬コーナーに足を踏み入れたソフィーも、近くのポメラニアンを抱くと――。
「わあっ……♪ もふもふで可愛いよぉ……♪」
「わんっ(高い高い♪)」
もふもふのポメラニアンを抱くソフィーは幸せそうに表情を綻ばせていた。
「ガウッ(く……何故俺達には近付いてこないんだ)」
「バウッ(何か悔しいですよ)」
「ワンッ(おっ!? ジョニー、あの男に絡んで憂さ晴らししようぜ)」
セシリア、ソフィーに遅れて入ってきたのは白銀の髪の青年――ヒルトだった。
小型犬と戯れる二人の姿に小さく微笑むヒルトに狙いをつけた三匹の大型犬。
「「「グルルルル……(怖がらせてやるぜ……)」」」
「ん?」
足元で唸り声をあげる三匹に気づいたヒルト、目線を落とすため、屈むと三匹をまっすぐ見つめ始めた。
「ガウッ!(怖がれ怖がれ!)」
「バウッ!(男なんてこれで皆びびっちまうんだぜヒャッハー!)」
「ワンッ!(何ずっと見てるんだよ、吠えるぞ!)」
「…………」
吠える三匹を気にすることなく見つめたヒルトは、何の気なしに三匹の顎を擽り始めた。
突然の事に驚き、三匹は唸り声をあげる事すら忘れて目が点になってしまう。
「よしよし、いい子だ」
「がぅ……(くっ……何故心地好く感じてしまうのだ……)」
「わふん……(くぅ……男にされても……だけど、悔しいけど心地いい……)」
「ばぅ……(眠くなってくる……)」
唸り声をあげていた三匹、ヒルトに顎を擽られ心地好くなりそのまま床に寝そべる。
そしてごろんっとお腹を天井に向けると、すかさずヒルトはお腹もなで始めた。
三匹が屈服するのに要した時間は僅かであった。
大型犬ということもあり、子供も女性も怖がっていたのだがヒルトになついた三匹の姿を見て――。
「わあっ、あのワンちゃんおとなしくなった~♪」
「ぱぱー、わたしもあのワンちゃんなでなでしたい~」
「大型犬で時折吠えてたから怖かったけど、案外大人しそうじゃん♪」
小型犬コーナーが人気あるのもやはり小さいからだ、とはいえ大型犬も大人しい犬も多いのは事実だが、やはり体の大きさからか近付きがたいのだろう。
ヒルトが顎やお腹を撫でながら呟く。
「……ドーベンにシベリアンにゴル男だな、お前らの名前は」
「「「!?」」」
見たまんまの名前をつけるヒルトに、またも目が点になる三匹に、それを聞いていたセシリアやソフィーも思わず――。
「ひ、ヒルトさん、流石にそれはどうかと……」
「な、名前はわかりやすいけど、この子達も名前はあるとあたしは思うんだけどぉ……」
「まああるだろうけどさ、多分外国人みたいな名前だろ? てか、この三匹の顔を見てたら絶対ドーベンにシベリアンにゴル男で似合うと思うが」
そんな三人のやり取りとは別に三匹は……。
「ガゥゥ……(ドーベンか……)」
「ワン……ワワン(シベリアン……案外悪くねぇな)」
「ばうっ(ゴル男って名前は男らしく感じるぜ)」
顎を擽られ、お腹も擽られた三匹はチョロくもヒルトに落ち、名前も気に入ってしまう。
さっきまで怖がらせようとしていたのが嘘なぐらいの従順さ、顎をヒルトに擽られる度に三匹は嬉しそうに尻尾を振っている。
それはさておき、未来とセラの二人だが実はドッグパーク内に居た。
流石に帽子を目深に被ってはいるのだが、それよりも――。
「あぁ……癒される♪」
「いぬきちも可愛いけど、この子達も可愛い」
子供の犬に囲まれ、嬉しそうな未来と柔らかな笑みを浮かべたセラ。
ドッグパーク内は平和で、みんな笑顔が絶えなかった。
一方でドボン太くん組は、子供たちから開放されて息も絶え絶えに休んでいた。
「さ、流石に子供たちのパワーにはアタシも負けるわ……」
自分が着ていたドボン太くんは横に置かれ、飲料水で水分補給する鈴音。
「た、確かに子供たちのパワーは凄まじいものだな……」
箒も同様に水分補給を行う、額を汗に濡らしたその姿は何処か艶っぽく見える。
「着ぐるみは失敗だったかなぁ……。 でも、ヒルトにあんな一面があったのは……えへへ」
着ぐるみとはいえヒルトと手を繋いでダンスしたシャルは少しだけ気分が良く、着ていたドボン太くんの着ぐるみの頭を優しく撫でていた。
「ドボン太くんか……しかし、着ぐるみも悪くないものだな」
一時とはいえヒルトと楽しめたラウラ、着ぐるみも本気で悪くないと思い、取り寄せようか思案していた。
「何にしても、みぃちゃんやセラが参加しなかったのもわかるかも。 テーマパークって親子連れ多いし、こうなるって多分予測してたのかも」
美冬はそう告げ、着ぐるみを脱いで汗をウェットティッシュで拭った。
「でも、美春は楽しかった! またヒルトと踊りたい!」
ニコニコ笑顔の美春は何処か満足げだった。
「む、ぅ……」
エレンは少しはしゃいでいた自分が恥ずかしいらしく、頬がほんのり紅潮していた。
「……とにかく、次の作戦を……」
簪は投影ディスプレイを開き、立案した作戦プランを皆に見せた。
「こ、これって……」
美冬がそう呟くと、簪は――。
「お化け屋敷でホラーがほらぁ作戦……!」
自信満々に告げる簪だったが、ここで美春が一言。
「あ、ヒルトってホラー苦手だからお化け屋敷いかないかも」
「「え!?」」
ヒルトがホラー苦手なのを知らない面々は思わず美春を見、美冬も――。
「あー、そういえばお兄ちゃんおばけの類いって苦手だったよ。 美冬も嫌いだけどね。 ――そういや、セシリアもソフィーもおばけとか嫌いだって言ってたから多分失敗するかも?」
立案した簪もまさかヒルトがホラー苦手だとは思わず、目が点になってしまうのだった。
ドッグパークでは大型犬コーナーにも人が入り、満足そうに三匹は可愛がられていた。
「がう(俺達の時代が来たな)」
「わう(そうっすね、そういやさっきの――じゃなかった、ご主人、何処に行ったんすかねぇ)」
「ばぅ(ご飯食べに行くって)」
「がうぅ……(むぅ……また会えるだろうか)」
「ワフッ(会えますよ、だって我等三匹のご主人っすよ!)」
勝手にヒルトを主人扱いしている三匹、ドッグパーク内は昼とはいえ賑わいが絶えることはなかった。
成層圏の先、矛先が地上へと向けられた聖剣エクスカリバー。
「system boot……」
コアルーム内に響き渡る起動音と機械音声……。
「座標修正、0・4マイナス。 双方向通信シグナル、良好。 ゼロ・カウント地点へと移動開始」
静かに、輝きを放つ聖剣。
その切っ先が向けられた先は――日本だった。
後書き
遅れて申し訳ない
暑さがヤバいですな、地震に水害、此方は被害ないけど暑さでコンテナが地獄に
夏場だけは店内で仕事してたいのが本音かな
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