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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第405話】

 
前書き
遅れました

ではでは、どうぞ 

 
 アリーナ観客席のバリアーが割られ、中から飛び出すように現れた黒い機体。

 夏の臨海学校の時に見たその姿は変わらず、PPS第一号機【黒夜叉】の雄々しい勇姿が俺の視界に写り込む。


「ぎゃ? ……あの機体、エムの報告にあった機体と酷似してやがる……」


 突然の乱入者にも関わらず、男は特に慌てる素振りも見せずに現れた黒夜叉を注視するかの様に、フルフェイスのツインアイで見据えた。

 一旦アリーナに倒れた一夏と篠ノ之の二人を回収した俺は、手早くアリーナ内部へと通じるドアを開き、其処へと避難させるとドアを閉め、侵入されないように立ち塞がる。

 ……だが既に、男の興味は親父に移っていて、俺や一夏達は既に眼中に無いといった感じだった。


「あぎゃぎゃ、まさかアメリカの新型が日本に現れるとはな。 ……いや、実際目にして見たが、アメリカの新型じゃねぇな……。 俺様にはわかるぜ、コア・ネットワークにも該当する機体はねぇし、何よりもコア反応が全く示さない辺り……。 あぎゃっ♪」


 何を悟ったのか、余裕を見せて笑い声をあげる男――次の瞬間、既に粒子形成を終えたアサルトライフルによる三点バースト射撃が、黒夜叉の機体目掛けて真っ直ぐと突き進む。

 弾丸三発は、チュンッ!と黒い装甲に弾かれて、アリーナ地表に弾痕を残した。


「……あぎゃ、やっぱり分子結合殻――否、その改良型か。 ならば……これならどうだ?」


 アサルトライフルを捨て、さっき見たクロスボウ型のライフルが握られ、引き金を引かれた。

 扇状に拡がる五本の粒子ビームは、途中で複雑な軌道を描きながら黒夜叉目掛けて進んでいく。

 だが、これも親父は避けようとせず、両手を横に広げて手のひらを翳し、複雑な軌道を描いた包囲ビームを、機体周囲に展開したプラズマ粒子によるバリアーを張り、完全に防ぎきった。


「……成る程、分子結合殻の弱点をあのバリアーでカバーしてやがるのか……。 あぎゃ、相当厄介な機体だな……」

「………………」


 横に広げた手を戻すと、腕部装甲内部からナイフが飛び出し、それを握ると親父は構える。


「……あぎゃ、格闘戦って訳だな。 ……良いだろう。 …………」


 クロスボウ型ライフルを捨て、小型の【リッパー】と呼ばれる小さな回転ノコギリの刃がついたダガーを呼び出した。

 刃が高速回転をし始めると同時に、黒夜叉の手に握られたナイフも紅く発光し始める。

 息を飲む音が、まるでアリーナに響くぐらいいやに聞こえてくる……。

 親父の加勢をするのが普通だが、下手な加勢だと親父の足を引っ張り兼ねない……そう脳裏に過ったその時だった。

 先に動いたのは親父で、紅く発光したナイフの軌跡が残光として残り、男に強襲する――だが、男の方も速い反応を見せ、リッパーでその一撃を受け止めると高速回転するその刃から激しい火花が――。


「あぎゃぎゃッ! ……わかるぜ、この太刀筋――有坂陽人ォッ!!」


 嬉しそうな声を上げると、ナイフとダガーが何度も切り結び、アリーナを縦横無尽に駆け巡って戦いを繰り広げた。

 最初こそ格闘戦だったものの、距離が離れると射撃戦へと変わる――。


「………………」


 何も語らず、親父は背部フライヤーユニットの二門のガトリング砲と共に、粒子形成を終えたビームライフルを構えての掃射――青白い粒子ビームは、キラキラと粒子を撒き、アリーナの大気を焼き払う様に突き進む。


「あぎゃッ! そのエネルギー……頂くぜッ!!」


 粒子エネルギーを吸収する盾を呼び出すとそれが展開され、親父の放った一斉射撃が吸収されていく。


「残念だったなァッ! 俺様の機体も、粒子ビーム対策はバッチリなんだよッ!」

「………………」


 吸収し続ける男に対して、親父は攻撃の手を休めることはしない――それどころか、尾を引く粒子は更に数を増し、苛烈な攻撃は続いていく――そして、男の呼び出した盾に異変が起きた。

 ジジ……っと、小さな紫電を放ったかと思えば次の瞬間、その盾は大爆発を起こし、その爆煙に機体が飲み込まれた。

 ……多分だが、あの盾の粒子エネルギー吸収量を大幅に上回ったのだろう……。

 先に盾の方が悲鳴を上げて負けた……そう思う。

 もうもうと立ち込める黒煙、少しずつそれが晴れていくと男の機体、ユーバーファレン・フリューゲルが姿を現す。

 機体に損傷は無いものの、シールドエネルギーの消耗は激しいらしく――。


「……けっ。 粒子吸収量を大幅に上回ってのオーバーロードか……。 あぎゃ、かなりエネルギーは損失したがまだ動けるぜ、俺様は」

「…………」


 男の言葉に、親父は言葉すら介さない。

 また再度腕部装甲からナイフが飛び出すと右手でそれを構え、左手のライフルによる連射が襲い掛かる。

 右、左と大きく機体を揺さぶり、ライフルの粒子弾を避けつつ、背中の翼から自律型機動兵器を全基射出、それが一直線に黒夜叉へと向かう。

 その間も、男の攻撃は続く――再度呼び出したクロスボウ型ライフルから放たれた五本の粒子ビーム、自律機動兵器同様に多角的軌道を描きつつ、黒夜叉に迫る。


「あぎゃッ! 動けなくしてやるぜッ!!」


 その言葉に呼応するかの様に、周囲を包囲した自律機動兵器からはAICが発生、親父の機体を拘束させた。

 迫る粒子ビーム、動けない親父の姿に俺はいてもたってもいられず、空中へと躍り出る。

 だが、親父はこんな事態でも動揺する事なく、ここに来て初めてその口が開かれた。


「ヒルトッ! 安心しな、お前の親父である俺が、息子の前で簡単に倒れるかよッ!!」

「あぎゃッ! やはりその声……有坂陽人!」


 声を聞き、確信したのか声色が弾む男、親父に迫る粒子ビーム――明らかな劣勢にも関わらず、黒夜叉の装甲がスライドし、そこが開くと紅く発光――紅い粒子が放出されると同時に轟く親父の声。


「【MAXモード】、発動ッ!」


 その言葉と共に黒夜叉の機体周囲から衝撃が走り、大気を震わせ、紅いツインアイが更に煌々と輝きを放ち始める。

 それは紅い宝石、ルビーの様に美しく輝いていて、見る人の目を惹き付ける印象を与えた。

 刹那――周囲に展開していた自律機動兵器から発生していたAICの反応は無くなり、その自律機動兵器は地上へと墜ちていく。

 急に動かなくなった自律機動兵器だが、男はさして気にも止めずにどう対処するのかを眺めていた。

 黒夜叉の両手が前面に翳され、プラズマ粒子が手のひらから機体周囲全体へとプラズマ粒子バリアーを張る。

 五本の粒子ビーム全てが、プラズマバリアーに阻まれて四散、この結末がわかっていたかのように男は満足する様に頷いた。

 だが、そんな余裕のある行動を親父が見過ごす訳も無く、機体周囲に展開したプラズマバリアーが鋭角化され、両手を重ねるとまるでドリルの様にプラズマ粒子が高速回転――それと同時に一気に肉薄。


「何……ッ!?」


 鋭角化され、ドリルの様に回るプラズマ粒子が男の機体を捉え、激しくシールドバリアーと干渉――それを易々と突破すると更に装甲に当たり、プラズマ粒子の四散と共に激しく装甲から火花が舞う。

 徐々に装甲表面が紅く溶解していく――それすらもISにはダメージになり、否応なくシールドエネルギーが削られていく。


「ギィッ!? ちっ……! ワンオフ・アビリティーはもう使えねぇし……こりゃ少し不味いな……ッ!」


 先程まで弾んでいた男の声も、今は少し焦りの色が見え始める。

 溶解した装甲の一部が完全に溶け、絶対防御を発動させる。

 尚も貫く様に続ける一撃だが、突如黒夜叉の紅く輝いていてツインアイからは光が失われ、両手から発生していたプラズマ粒子のドリルが弾けるように飛ぶ。


「……あぎゃッ、成る程。 ……だが、おかげで俺様は助かったぜ。 足止めも十分だな……」


 何かを悟ったのか、親父から離れると翼から大量の推進エネルギーが放出され、爆発的加速でアリーナから上空へと飛び出す男の機体。

 その時に発生した衝撃に、防御して体勢を整えている間に男はもう上空にはいなかった。

 ゆっくり地上に降り、片膝をつく黒夜叉――開いた装甲から熱い熱の隠った空気が放出され、周囲の温度が上昇する。


「親父、大丈夫か?」

「あぁ。 MAXモードを使った後だからな。 ……軽いオーバーヒート状態なんだよ、こいつ。 まあ……今だと機体性能もがた落ちだから、正直アイツが退いてくれて助かったぜ。 なんてな、ワハハハハッ」


 いつもの様な高笑いがアリーナに響き渡る――それと同時に、ヘリのプロペラが空気を切り裂く音が聞こえてきた。


「……今頃自衛隊の到着か。 何にしても黒夜叉が見られるのは不味いからな。 ヒルト、悪いが俺はステルスで姿を消させてもらうぜ」


 言うや、ふっと黒夜叉が消える――それも、ISを上回るステルス性能だ、熱放出による探知も出来ない。

 だが、黒夜叉は【そこ】に存在している……機体に触れる事が出来たからだ。

 ヘリのプロペラの音と共に、アリーナ内部からも教師陣がISを纏ってアリーナへと入り、上空からも次々と打鉄を纏った自衛隊員が降りてきた。

 ……もう少し速く来ていたら取り逃がす事は無いのにと、俺の頭の中でそう思いつつ親父の事は伏せ、敵が撤退した事をやって来た教師や自衛隊員に説明を始めた……。 
 

 
後書き
ちょい短かったが、何とか書けたかと

非会員にも感想が書ける様にしてから、批判は少しあったものの昨日と今日二日で二件も( ´艸`)

まあ日本にも色んな人が居ますからな、最近俺の腹筋崩壊させた野々村議員とか( ´艸`)

因みに批判自体気にしてません、てか批判になってる内容じゃないですし( ´艸`)

さて、取り敢えずカーマイン戦決着、形は引き分け?いやいや、どうなのか…… 
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