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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第212話】

――整備室前――


 若干制服が雨に濡れたが、無事整備室に到着。

 傘をその場に残し、整備室のドアを開くと――。


「…………!? ……有坂くん……」

「ん? やあ更識さん、こんにちは」

「……こ……んにち……は」


 歯切れが悪いが挨拶を返してくれた更識さんに、笑顔で応えると俺は必要な道具を揃える。

 一方の更識さんは、俺がいるのに落ち着かないのか、コンソールを叩くのを止めていた。


「……作業があるならしてもいいぞ?」

「……ぅん」


 俺の一言に、小さく返事を返すとカタカタとコンソールパネルを叩く音が整備室に響いた。

 必要な道具を一式揃えると、俺は視線を更識さんに移す。

 前に見たときと同様、何かのデータを入れてはerrorがディスプレイに表示され、苦虫を潰したかのような表情になる更識さん。


「……それってさ、打鉄弐式か? ……だが数値を見る限りだと稼働値以下だな」

「…………ッ!?」


 データを見て言うと、キツい目付きで睨まれた。


「……参考データにラファール・リヴァイヴか……。 確かに汎用性の高いラファールを参考にするのはありだが打鉄弐式ってさ、ラファールみたいな汎用性は無いだろ?」

「……貴方に……関係……無いか……ら」


 小さく呟くその言葉に、頭をポリポリとかきながら――。


「……前にも言ったが、もう俺は君と関わってる。 それにさ、このまま機体が出来上がってないのは不味いんじゃないか?」

「………………」


 黙ったままディスプレイに表示されたデータを見る更識さん。

 そのデータの隣には、様々なISの運用データが羅列されていて、それを参考にして機体を独力で仕上げようとしているのが明白だった。

 ……彼女には、誰か力になってくれる人はいないのだろうか?


「……お節介だと思ってるかもしれないが、実際俺はお節介だ。 だから口に出して進言するが……機体の外装はほぼ仕上がってても今のままじゃ、多分夏休みが終わってもその機体は完成しないと思うぞ?」

「……そ、んなこと……わかってる……!」


 一瞬語気が強まる更識さんに驚きつつ、俺はそのまま彼女を見てると――。


「……この子を……未完成のこの子をせめて……! ――…………」


 言葉の途中で言い終わる更識さんの表情に影が落ちる。

 ……まるで、何か越えなければいけないとてつもない壁が眼前にあるみたいな……。


「……もしさ、力になれるなら俺か美冬に連絡くれよ。 美冬、あまり言わないが結構君の事気にしてるしさ。 俺も、同じ【弐式】に乗ってるからな……他人事じゃない気がしてな」

「…………わか……った」


 か細い声だが、返事をしたという事は少しは心を開いたのだろうか――。


「……じゃあ、俺はこのままアリーナに居るから何かあれば来てくれよな?」

「…………」


 返事はなかったが、静かに頷く更識さんを見て、俺は必要な道具一式を持って整備室を後にした。

 アリーナへと向かう道中――。


「はぁい、ヒルトくん♪」


 そんな俺の名前を呼ぶ声が聞こえ、振り向くとそこに居たのは――。


「楯無さん?」

「そうよ、楯無お姉さんの登場♪」


 そう言ってウインクし、勢いよく扇子が開く音が聞こえた。

「久しぶりですね、楯無さん。 ……二学期まで忙しいって言ってた気がしますが――」

「うふふ、今日の雨で予定がダメになっちゃったのよ。 だ・か・ら♪ 今日一日、お姉さん暇なんだぁ……」


 そんな甘えたような声で俺に告げる楯無さんは、口には出さないが遊び相手になってほしいという雰囲気を醸し出していた。


「……暇でしたら、久しぶりにIS操縦教えてくれませんか?」

「ん? ん~……。 ……せっかくだったら、お姉さんと模擬戦しない?」


 一瞬何かを考えてから、思い付いたように閃いて悪戯を考え付いた子供の様な表情で模擬戦を提案してきた楯無さん。


「模擬戦? ……自分としては願ったり叶ったり何ですけど……良いのですか?」

「うん。 忙しくてこの子の運用データ、あまり取れてないのよ。 それに――」

「……?」


 ゆっくりと近付き、耳打ちしてくる楯無さん。

 甘い香りが鼻孔を擽ると、何だか気持ちが少し落ち着かなかった。


「……君の実力……そろそろお姉さんも体験したいかなぁ……ってね? ……ふぅ……♪」


 言い終わると同時に耳に息を吹き掛ける楯無の行動に、びっくりして跳び跳ねてしまった。


「どわあっ!? な、何するんですか!? びっくりするじゃないですか!!」

「うふふ。 お姉さんの悪戯よ、ヒルトくん♪」


 茶目っ気たっぷりの笑顔で答える楯無さんに、下手に怒る事も出来ずに俺は――。


「か、勘弁してくださいよ。 思春期の男子を弄っても仕方ないでしょ?」

「あら? そんなことないわよ♪ ヒルトくんって何処か弄りたくなるのよね、お姉さん的に……♪」


 蠱惑的な笑みを浮かべる楯無さんは、開いた扇子で扇ぎ始める。


「……まあいいですが……。 じゃあ模擬戦、お願いします。 雨が降ってますがここのアリーナは開閉式ですから特に気にする事はないと思いますが――」

「うふふ、大丈夫よ。 お姉さん的には【雨の方がいいから】ね♪」


 そう言って反対側のピットへと向かう楯無さん。

 言葉に疑問を抱きつつも、持ってきた道具一式を持ちながら俺は模擬戦の準備の為、ピットへ向かった――。 
 

 
後書き
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