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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第214話】

 
前書き
遅れました

楯無さんとの決着編です 

 
 突如五人増えた楯無さんに、流石の俺も動揺を隠せなかった。

 あまりの出来事に、冷静に考えることが出来ず、驚きの声をあげる。


「なっ、なんだッ!? 何で――」

「うふふ♪ ヒルトくんの驚く顔が見られるなんて、これは貴重ね♪」


 五人一斉に笑顔になるとそれは圧巻で、混乱した頭では冷静に考えることが出来ず……。


「くっ……単一仕様か……ッ」


 そんな呟きも、直ぐに楯無さんには否定された。


「……残念だけどヒルトくん? お姉さんはまだ【単一仕様】は使えないの。 ……でもだからって、説明するのもあれなんで――行くわよッ!」


 その言葉を合図に、五人に増えた内の四人がランスを構えて俺の四方を取り囲む様に移動した。


「……ッ!? これはまずいな…。 …五対一は……!!」


 ハイパーセンサーでいつ、誰が動いても対応出来るように気を配る――と、不意に違和感を感じた。

 左にいる五人居る楯無さんの内の一人の装甲から、水がポタポタと滴り落ちていた。

 ……アリーナは閉まってるのに、濡れる要素何か――。

 ――と、よくよく考えてみると、楯無さんの機体は水のヴェールで覆われてたからもしかすると――。

 そう思い、直ぐ様電光石火の速さで左に居た楯無さんに、天狼による突きの一撃を喰らわせると案の定パァンッと、楯無さんの身体が崩れ、水が弾けとんだ。


「……そっか、やっぱり水で出来てたんだな……」

「ご明察! ……因みに、当たりを引くともれなく爆発しちゃうわよ♪」

「は? 爆発って――」

「うふふ、こういう事よ……♪」


 指を鳴らすと、残った楯無さんのうちの一人が膨張し――爆ぜて、爆発の衝撃が此方を襲った。

 爆ぜた衝撃波と風圧に、一瞬体勢を崩すとそれを好機と見たのか楯無さんが残った二人(?)の楯無さんが突撃をかけ、ランスの切っ先が装甲に当たると同時に二人とも爆ぜ、爆発の直撃を浴びる。


「グゥッ!? ……この衝撃はキツいな……ッ」

「うふふ♪ 規模は小さな水蒸気爆発だけど、結構効くでしょ? 種明かしすると……お姉さんの機体は水を自在に操る事が出来るのよ。 ……難しい話だけど、簡潔な言えばエネルギー伝達可能なナノマシンのお陰だけどね♪ ……だから、こんな真似も出来るのよ?」


 そう言ったと思えば、アリーナの天井がけたたましい音と共に開いていき、どんよりと曇った空と共に大粒の雨がアリーナ地表を徐々に濡らしていった。

 そんな楯無さんは、ふわりと一回転と舞いながら空中に躍り出ると――。


「それっ♪ なんちゃってオールレンジ♪」


 ピタリと楯無さん周囲に降り注いでいた雨は空中で静止――刹那、一斉に静止した雫が礫の様に襲いかかってきた。


「……ッ!」


 小さく舌打ちすると、俺は後方へとバックステップと同時にランドホイールを起動――回避行動に移る。

 先程まで俺が居た地点目掛けて飛んできた無数の水の弾丸。

 その圧倒的な水の弾雨がアリーナの土を抉りとっていた。

 そのまま俺は疾風を呼び出し、ランドホイールでパワースライドしながらアリーナコーナーを曲がり、疾風を構えると――。


「動かないのなら……一撃、入れさせてもらうッ!!」


 粒子形成されたエネルギー矢を放つと、閃光を放ちながら突き進む――だが。


「あはっ♪ 残念でしたー♪」


 降り注ぐ雨が、エネルギーの矢を阻む壁となって四散――辺りに水蒸気が立ち込める。


「うふふ、連鎖爆発――なんてね♪」


 パチンと指を鳴らすと、進行方向を防ぐように目の前が爆発――咄嗟に急上昇するも、その地点を狙いすましたかのように村雲周囲の空間が一気に爆ぜた。


「グゥッ……!? ……耳鳴りが……ッ……」


 保護されてるとはいえ、至近距離からの爆発音に耳鳴りが止まず、まるで鐘の音色がひたすら頭に響いてる感じだった。

 爆発の衝撃に、叩き付けられる様に地面へと墜落すると、追い撃ちをかけるように連鎖爆撃をかける。

 頭上や周囲を連続で爆破する楯無さんのその様は、Sっ気に目覚めた女王様の様な表情を浮かべていた。


「ガフッ……! ぐあ……ッ!」


 なすすべなく、削られていくシールドエネルギー――もう既に、残り百を切っていた――と。


「うふふ、データは結構取れたから――そろそろフィナーレといきましょうか?」


 爆撃を止め、水浸しになったアリーナ地表に着地する楯無さん。

 周囲には大きく肥大した水のバリアーが囲い、全く濡れた様子もない。


「……ヒルトくん、最後は無数のお姉さんに囲まれてやられたい? それとも、お姉さんのなんちゃってオールレンジ攻撃とか?」


 言って、パチンと再度指を鳴らすと周囲の水が形成され、楯無さんが総勢十人程形成され、俺の上空を包囲するように水の弾丸が空中に静止していた。


「……俺としては、どちらも遠慮したいですね」


 どちらを受けても、多分負けは確定だろうし、この数を避ける事は不可能だろう。

 ……だが、まだ一矢報いてないから諦めるつもりもないが。

 ……現に、まだかすり傷一つすら負わせていない。

 ……まあ、ただ俺が弱いだけかもしれないが。

 ゆっくりと立ち上がると、装甲表面についた泥が落ちていく。

 既に地表は雨で濡らし、抉りとられた地表には少しずつ水溜まりが出来上がっている。

 俺も既に髪は濡れ、何度も顔を拭いながらキッと目付き鋭く気合いを入れ直す。

 その俺の表情を見た楯無さんは、一瞬目を見開くが、直ぐに柔らかな笑みを溢す。


「……何か策があるのかしら? さっきよりも、気合いの入った表情ね」

「…………」


 俺は答えない。

 否、答えられない。

 策があるのか?

 残念ながら策なんか思い付かない。

 当たったと思っても、実は分身体だったって事になるだろうし。

 ……だからといって、やはり何もせずに負けるというのは俺自身が許せない。

 ……前までは戦うのも好きじゃなかったが、やはり慣れというやつなんだろう。

 疾風が粒子化し、四散して空に散ると新たに掌には天狼が形成され、腰だめに構える。

 その様子を見た楯無さんも、分身体を含めて全員がランスを構えた。

 この間に俺の周囲を包囲した水の弾丸で攻撃すれば普通に勝てただろう。

 仮に俺が八式を起動したとしても、蒸発した水の弾丸は水蒸気となり、また形成されて俺を襲う無限ループ方式が完成されるので、無駄なエネルギー消費をするぐらいなら起動せずに、俺の攻撃に合わせた方が良いだろう。

 腰だめに構えた天狼を持つ手に自然と力がこもる。

 ……ふと、雲の隙間から陽光が雨と一緒に差し込む――。

 それを合図に、俺は駆け出した。

 その瞬間、表情が変わる楯無さんは分身体である楯無さん二人に命令を送ったのか、左右に別れて展開後、一斉にランスによる突きで襲撃――それを前方に跳躍し、前方に一回転しながら二基の八式を起動――ランスの突きからの動作で動けなかった分身体の背部に八式の矛先が突き刺さった。

 それと同時に、型どっていた水は崩壊し、四散した。

 ……爆発しなかったのは、何故かは解らないが、もしかすると力量を計るためなのかもしれないし、データ収拾の為に簡単に決着をつけさせない為かもしれない。

 前方に着地した俺はそんな考えをしながら突き進む。

 だが次は先手を打ってか、既に分身体五人が待ち受けていて、一斉にランスに備わったガトリング砲からの射撃。

 ……とは言っても、水の弾丸だからか周囲にはガンスモークが立ち込める事は無いのだが、威力自体は変わらないと見ていいかもしれない。

 昔教わったマルチステップを駆使し、一気に肉薄するや腰だめに構えた天狼を振り抜き、周囲にいた四人の分身体を切り裂くと同時に勢いそのまま跳躍と同時に天狼で切り上げた。

 分身体と解っているとはいえ、胴が分断され崩れ落ちる分身体に、真っ二つに切り裂かれた分身体を見るとやるせない気持ちに駈られる。

 直ぐ様分身体を形成していた液状は周りへと四散し、周囲を濡らす。
 水だと解っていたとしても、手に伝わる人を切り裂くその感触は嫌なものだった。


「あらら……お姉さん真っ二つ。 ……うふふ、やるわねヒルトくん」


 まだ愉しげな表情を浮かべるのは余裕があるからだろう。

 残り本体を含めて四人の楯無さん。

 そのまま背部ブースターを点火すると、一気に加速――。

 雨の中、空気を切り裂く音と背部ブースターから点火された轟音がアリーナに響き渡る。

 残った分身体三体が一斉に阻む様に立ち塞がり、ランスを前面に構えた。

 こうすれば、相手が勝手に突き刺さる――歩兵が騎馬相手に勝利する為に生み出された戦法だった……筈。



 既に加速のついた俺だが――ランスを構えた三体の分身体前面に八式全八基を展開――距離が詰まり、一斉に全基が突きによる一撃を放つと、構えたランスの切っ先からぐにゃりと形成崩壊し、四散する――だが、その瞬間――。


「……残念だったわね、ヒルトくん」


 勝利を確信したのか、口元が笑みで歪む楯無さんを見た次の瞬間には、爆発に飲み込まれていた。

 最後の三体の内の一体に、爆発する分身体が混ざっていたのだ。

 気付いた時には既に遅く、視界一面に覆う真っ白の閃光が眼前を支配していた――。


「うふふ、流石にお姉さんも少しだけ焦ったわ。 ……でも、データは取れたしこれで――……ッ!?」


 楯無さんの表情が変わり、目を見開いていた。

 シールドエネルギーがゼロになった筈の俺が、その爆発から抜け出ていて既に肉薄していたからだ。

 ……まだ、シールドエネルギーはゼロになっていないのだが、ほぼ枯渇状態と言っても良いだろう。

 残りシールドエネルギーは2だからだ。

 ……爆発の規模自体は確実に俺のシールドエネルギーをゼロにさせる程だったのだが、前面に展開していた八式・天乃御柱全基が障壁となったからか、爆発の衝撃を和らげていた。

 ……四月のセシリアとのクラス代表決定戦でも、デコイみたいに攻撃の肩代わりになったりもしたが……。

 そんな考えを払拭する様に一気に天狼を横に振り抜くと、水のヴェールを切り裂く。

 その確かな手応えを感じ、そのまま振り抜く――だが。


「うふふ、ちょっと焦っちゃったけど……まだ、お姉さんにはその一撃は届かないかな?」


 切っ先が楯無さんに触れると、本体と思われていた楯無さんが液状へと形成変化し、形が崩れる。

 そして、いつの間にか背後に回っていた楯無さんからの強烈なランスによる突きの一撃を受け、シールドエネルギーがゼロに――。

 この瞬間、一矢も報いる事が出来ずに俺の敗北が確定した。


「あーーーッ!! 悔しーいッ!!」


 そんな俺の雄叫びがアリーナに木霊すると、IS解除した楯無さんが――。


「うふふ、ヒルトくん、お疲れ様。 ……悔しいかもしれないけど、まだお姉さんの方が一枚上手だったって事ね♪」

「くっ、悔しい……! 一矢も報いる事が出来ずに完封されるなんて……!!」


 誰もいなければ、俺は地団駄踏んでいただろう――模擬戦とはいえ、やはり負けると悔しい。


「……ともかく、ありがとうヒルトくん。 実践データ、なかなかとれなかったらから助かったわ」

「……くっ……! 役に立ったのは嬉しいけど、負けたのが悔しい……。 次はせめて一矢報いますよ」


 そう言うだけ言って、俺はピットへと戻った。

 ……多分、今鏡を見たら物凄く悔しそうな顔をしてるんだろうな……。

 一人ごちりながら、更衣室へと向かった。

 一方――。


「一矢報いる……かぁ。 もう一矢報いてるわよ、ヒルトくん」


 そんな呟きと共に部分展開されたアクア・クリスタルの内の一基が真っ二つになり、アリーナ地表に落ちる。


「……もう少し判断が遅れていたら……ヒルトくんが生徒会長になってたわよ。 ……はぁ……油断しすぎちゃったわね、私も……」


 そうごちると、既に雨はあがり、夏の日差しがアリーナ地表を照らしていた――。 
 

 
後書き
うーん

多分期待した話じゃなかったかもですが読んでくれてありがとうございます(b^ー゜) 
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