IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第213話】
前書き
バトル
――第三アリーナ中央――
準備を終え、ピットから出撃すると既に楯無さんがISを纏っていた。
機体名称は【ミステリアス・レイディ】――パッと見だとアーマー面積の少なさが目立ち、防御に不安が残りそうな見た目だがそこをカバーするかのように液状のフィールドが展開されていた。
……例えるなら、淑女のドレスだろう。
そして、左右に浮いたクリスタル状のパーツ――これが何かしらの第三世代兵装だと思うが――。
「うふふ。 来たわね、ヒルトくん」
待ちわびたかの様に手に持つ大型のランスを肩に担ぐ楯無さん。
瞼を閉じたまま、肩に担いだランスの矛先から徐々に表面を覆うように水が纏い、そこから徐々に螺旋状に回転し始めた。
「……では楯無さん、模擬戦……よろしくお願いします」
「あん、そんなに堅くならないの♪ 気軽に刃を交えましょ?」
閉じた瞼を開くと、柔らかな笑みを浮かべる楯無さん――。
天狼を呼び出すと、その場で空気を切り裂くように斜めに振り抜く。
それが合図になったのか、ハイパーセンサーに表示されたシグナルが一つ点灯した。
「うふふ、まさかヒルトくんと模擬戦する日が来るなんて……お姉さん、思わなかったわよ♪」
楽しそうに告げる楯無さんを他所に、天狼の柄を握る力が自然とこもる。
二つ目のシグナルが点灯――否応なしに緊張感が高まる。
楯無さんは気軽に刃を交えようとは言ったが、やはり久しぶりのこの感触に、俺自身緊張の色を隠せないのが事実だ。
――そして、シグナル三つ目が点灯するや、真っ先に動いたのは楯無さんだ。
大型ランスを構え、突撃体勢に移るや直ぐ様背部ブースターを点火し、間合いを詰めると同時に此方の装甲を貫こうと矛先を向け――突きの一撃。
真っ先に動いてからの速攻による一撃は、身構える前に装甲に当たるや激しく火花を巻き散らかせ、表面に傷をつける――だが。
「……!? 修復した? ……うふふ」
村雲の装甲表面に付いた傷が直ぐ様ナノマシンにより修復されると、驚きの表情を浮かべた。
だが、次の瞬間には楽しそうに笑う楯無さん。
――だが、この間の速攻に移る速さは、未来やシャル、ラウラ以上だった。
この一連の動きに、俺は驚きつつもこれが上級生の実力というのに納得した。
直ぐ様バックステップで距離を取る楯無さんに、再度気合いを入れ直した俺。
バックステップした楯無さんに、追撃による一撃を浴びせようと、体勢を低くしたまま前方にステップ――脚部に向けて天狼を一気に振り抜く!
……だが。
「……何ッ!?」
「うふふ、残念でしたヒルトくん♪」
覆われた水のヴェールが天狼の刃を防ぐ――その切っ先はシールドバリアーに触れる事はなかった。
「うふふ、お姉さんの柔肌に傷はつけられないわよ♪」
「いや、別に傷付けるつもりは――」
「うふっ♪ 隙ありっ♪」
楽しそうに言う楯無さんのランス、その矛にある四門の砲口が開く。
「……チィッ! 八式ィィッ!!」
俺の叫びに呼応するように、八式・天乃御柱のレーザー砲口が一斉にスライドして開くと――同時にランスから放たれた四門からなるガトリングによる一斉射撃。
――同時に高周波音と共にレーザー光が一斉に放たれると、ガトリングガンの弾丸を迎撃――ガンスモークが辺り一帯を包み込む。
「……やっぱり、ヒルトくんの第三世代兵装は驚異ね。 実弾を完全無効化だもん」
そんな呟きと共に上空へと逃れる楯無さんは、牽制射撃も兼ねてそのまま斉射を続ける――。
その牽制射撃も、此方に当たる弾丸のみをレーザー迎撃していく。
「……そらッ!!」
ぐぐっと腰だめに構えるや、一気に振り抜くと同時に手離す天狼。
大きく縦に円を描き、突き進むそれを容易くランスで切り払う。
「……流石にこれはそうそう通じないか」
一人ごちる俺は、切り払われた天狼を呼び戻すと、空を舞った天狼は粒子化された。
そして、手のひらで粒子が集束するとまたそれは天狼へと形成されていた。
「……うーん、噂に聞いた通りね。 ……お姉さんにも真似出来ない技を持ってるなんて……ねッ!!」
「……!?」
楯無さんの左手に粒子形成された剣が現れると、それを縦に振るう。
何と刃部分が伸びて、まるで鞭の様にしなる刃が強襲してきた。
「……ちぃッ!」
脚部ランドホイールを直ぐ様起動して後方へスラローム回避をすると、さっきまでいたアリーナの地表の土が抉れる様に削られた。
更に、そのまま地を這うように刃が俺に目掛けて突き進み、その間もランスから放たれた四門の射撃による追撃も受けた。
エネルギー節約の為、八式の迎撃モードをオフラインにしながら苛烈極まる火線、及び伸びた刃による一撃を何とか回避しつつ、後方へと跳躍――。
「残念、ヒルトくん? 後ろはアリーナのバリアーよ? やっとヒルトくんを捉える事が出来るわね」
少し楽しげに呟きつつも、後方へ跳躍した俺をそのままバリアーへ押し込もうとガトリングガンによる追撃は止まない。
――だが、俺もただ後方へ跳躍した訳じゃない。
旋回用スラスターを右に一気に噴かせ、バリア―発生器を利用して三角跳びを行った――地表へ向けて。
その動作に、一瞬目を見開く楯無さんは、射撃を止めてランスを三回転程回した。
一方の俺は、着地と同時に再度ランドホイールを起動――地上を滑走すると共に疾風を呼び出し、連射――。
「うふっ、さっきの反応の速さに驚いちゃったけど――これは避けるまでもないわね」
余裕があるのか、放たれた矢をやはり水のヴェールで防ぐ――だが、そこを狙っての射撃だ。
滑走しながら瞬時加速を行うと、アリーナ設定以上で加速――跳躍するや直ぐ様上を取る。
流石にその加速力に驚きの色を隠せない楯無さんに対して、左手に呼び寄せた天狼を、俺は空中で捻り回転しながらシールドバリアーを切り裂く。
……いや、【切り裂いた筈】なのだが――刃の切っ先が楯無さんに触れると、水が弾け跳ぶように散った。
確かに捉えた筈なのに、そこに楯無さんの姿は無く、地表へ着地すると同時に背後から声をかけられた。
「……うふふ、残念でした。 ……まだお姉さんを捉えるのは早いかな?」
背筋がゾクッとする――さっきまで空にいた人が既に俺の背後を取って耳打ちしてきたからだ。
振り向くと、そこには無邪気な笑顔の楯無さんが――五人に増えて待ち構えていた……。
後書き
まだまだ続きますが、今年最後の更新になるかも?
ならなかったら、多分途中更新します
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