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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第473話】

 
前書き
話は飛んでアメリカ方面

バトルっす、バトルになってるかわからないけど 

 
 アメリカ大陸沿岸沖約一五〇キロ地点、沿岸警備隊に発見された一機の黒いIS。


「……なかなか優秀だな、アメリカの沿岸警備隊は……いや、装備が充実してるのか」


 一人ごちる男、ハイパーセンサーでズームして確認すると最先端の対IS用レーダーが備わっていた。

 直にアメリカに配備されいるISが複数やってくるだろう――来たところで返り討ちだが。

 狙撃ライフルを粒子化――奇しくもそのライフルはセシリアの持つスターライトmkⅢの改良型だった。

 ハイパーセンサーとスコープをリンクさせ、最先端のレーダーに照準を合わせる――ロック完了の音が鳴るや直ぐ様トリガーを引いた。

 目映い閃光が大気を焼き払い、レーダーを貫通すると鉄屑へと変えた。


「これで大丈夫――と言いたかったが、どうやらお出座しの様だな」


 沿岸警備隊の船が去り、アメリカ大陸方面からは高速で接近する機影が複数。

 ズームして確認する――アメリカの戦闘機であるF-22ラプターだ、先ずは此方のエネルギーを削ってから本隊を送って機体を滷獲だろう。

 対IS戦術の一つだ、そう思った男は急上昇する――警告音が鳴り響く、機体がロックされたのは明白だ。

 複数の戦闘機から発射されるミサイル郡、ビーッビーッと警告音がけたたましく鳴り響く。

 粒子化したグレネードを両手に構え、前方に投擲――空中で弾け飛ぶや、キラキラとした燐光が空を舞った――そして、ミサイル郡は目標である機体の横をすり抜けていく。

 投擲したグレネードはチャフだ――それも、対IS用にも使える最新型。

 ミサイル攻撃が失敗した戦闘機は、動かないISに対して機銃の一斉射撃を浴びせる。

 ISが居た周囲一帯はガンスモークに覆われた。


『やったかッ!?』

『ハッ! バカな機体だぜ、微動だにせずに機銃の一斉射撃を浴びるなんてな!』


 互いに通信し合い、健闘を称え合う戦闘機のパイロット達、ガンスモークが晴れた先にある機体は機銃による射撃で装甲がぼろぼろだろうと思っていたのかもしれない。

 ……だが、ガンスモークが晴れた先、漆黒のISは正面に手を翳したまま無傷の状態だった。


『なッ!? 無傷だと!?』

『構わんッ! 射撃を続けろーッ!! 例え無傷でも! エネルギーは削れる筈だーッ!!』


 再度機銃による一斉射撃が漆黒の機体に襲いかかる。


「……【イージス】……!!」


 そう呟くや、正面に不可視のバリアーを展開した機体。

 刹那、迫る機銃の雨は漆黒の機体の正面――約三〇メートル先で全てが塵となって消滅していった。


『クッ……後退する! 後はIS部隊に任せて我々は引き上げるぞ!!』


 全機に連絡を告げる隊長機、真っ直ぐと向かっていた機影は尻尾を翻す様に大陸方面へと逃げ帰る。


「……おいおい、せっかく出てきて逃げ帰るのか? ――まあいいだろう、次はIS部隊の投入って所かな、これが」


 戦略が分かってるのかそう呟く男、先ほどから今居る空域から動かず、まるでアメリカの出方を窺ってる様にも見える。

 戦闘機と入れ違いになるようにIS輸送用の航空機が近付いてくるのが確認出来た、サイズだけでも最低は三機は居るだろう。

 後部ハッチが開き、空を舞うIS――ラファール・リヴァイヴ二機とアラクネ一機だった。

 ISを運び終えた航空機は一目散にその場を後にする、現状なら三対一ならまず領空侵犯したISは敵わない筈だ、誰もがそう思っていた。


『そこの所属不明機、大人しくしろッ!』

「…………」


 不思議な事を言うなと男は思う、何故ならさっきから男は上昇した以外は全く動いていないからだ。


『これから貴様を拘束する、抵抗しても無駄だぞ! 此方は三機、そちらは一機、勝ち目があると思うな!』


 後方二機のラファール・リヴァイヴはアサルトライフルを漆黒の機体に向けて構える。

 アラクネが隊長機らしく、拘束しようとゆっくりと接近してきた――無傷で滷獲出来ると思っていたのだろう、その油断が命取りだった。

 八本のアームを瞬く間に切り裂く巨大な大剣、隊長の女性は驚きを隠せなかった。


『……ッ! 抵抗したな……撃墜するッ!!』


 隊長の女性がそう声を荒げるや、サブマシンガンを粒子展開しつつ漆黒の機体の真上をとろうと急上昇――それが合図となり、残り二機のラファール・リヴァイヴはアサルトライフルを発砲し、攻撃を行った。

 咄嗟に漆黒の機体は正面に大剣を構えて盾代わりにした――発砲したアサルトライフルの銃弾は大剣に遮られ、一発も当てることなく散っていく。

 二機が弾装を装填してる間に頭上を取ったアラクネが叫んだ。


『墜ちろーッ!!』


 引き金を引くアラクネ、本来なら八本のアームによる一斉射撃も行うのだが既に漆黒の機体によって切り落とされた為、仕方無くサブマシンガンのみでの射撃――だが、上手い形での十字砲火となり、確実にエネルギーは削っただろう、そう思った矢先、漆黒の機体はマシンガンの射撃を難なく避ける機動性と加速力を見せてアラクネの頭上を取った。


『なっ!?』


 隊長は目を見開く、其処には【装甲が開いて展開し、高機動モード】に切り替わった漆黒の機体が頭上に居たからだ。

 更に脚部の装甲が展開して開くや、【白亜の光刃】が形成された。


『ば、馬鹿な! それはまさか展開装甲――』


 隊長の言葉を掻き消す様に【白亜の光刃】で切り裂く漆黒の機体――その一撃により隊長機のアラクネのシールドエネルギーはゼロとなり、海面へとまっ逆さまに墜ちていった。

 だが、すんでの所でラファール・リヴァイヴ一機が救出――残ったもう一機は果敢にも攻めようと接近戦を仕掛けようと動く。


『よくも……よくも隊長をーーッ!!』


 叫びが空へと吸われていく、展開した近接ブレードを振るう――だがその一撃は容易く受け止められた、巨大な大剣によって。

 だがそれで怯む様な訓練は受けていなかった、例え量産機と言えどISを預かる程の腕があるという自信もあり、果敢に何度も相手と切り結ぶ。

 大剣の一撃は重く、そして相手の操縦者の技量も相まってか軽々振り回す――内心焦りを隠せなかった。

 任された自信はあれど、簡単に捌かれ、隙あれば大剣の一撃によって大幅にエネルギーは削られ、更に突破された一撃一撃によって全身の装甲が破壊されていく。

 隊長ともう一機が安全圏に離脱した頃には既にラファール・リヴァイヴはぼろぼろになっていて、肌の露出の方が多いぐらいだった。


『……ッ、こんな簡単に私が……!』


 エネルギーは枯渇寸前、なのに相手は無傷――否、幾らかはエネルギーは削っただろう、だが既にもう勝ち目が無いのは明白だった。

 漆黒の機体は相手の首筋に大剣の切っ先を当てる――目を見開き、背中に冷たい汗が流れるのを感じたその時、新たにやって来た機影が一機、ハイパーセンサーに表示された。

 機影はアメリカの第三世代型であるファング・クエイク――搭乗者は国家代表のイーリス・コーリング。

 空域へとやって来たイーリスの機体には長距離移動用の大型ブースターが装備されていて、使い終えたそれは機体からパージされるや海面へとバラバラに墜ちていった。


『おう、後は任せてお前は退避しな。 この不法侵入者は此方で面倒見るぜ』

『す、すみません……後は頼みます……』


 そう言い残し、ぼろぼろのラファール・リヴァイヴはふらふらと覚束ない飛行で空域を離脱していった。


『さぁて、一応世話になったお礼と、大国に喧嘩売った責任はとってもらわねぇとな』


 巨大な拳を重ねて打ち鳴らし、激しく火花を巻き散らかせたイーリスの闘志は燃え上がっていた。

 先手を取ったのはイーリス――瞬時加速で間合いを詰め、巨大な拳による二連撃――だが、その打撃は不可視の障壁によって阻まれる。


『なんだ? シールドバリアーじゃねぇな……変わった機体だぜ』


 イーリスはごちる、そして目の前の機体を睨み付けた。


『ニラミツケテモビビルコトハナイ』

『……機械音声だと? へっ、聞かれたくない声ってか!? 生意気……ッ!』


 そのまま拳を連打、激しく不可視の障壁を殴り付ける。

 だが全く突破出来る様子がなく、苛立ちを見せたイーリスは【取って置き】を見せることにした。


『少しはやるじゃねぇか! アタシにこれを出させるんだ、覚悟しな!』

「…………」


 言ってからリボルバーイグニッションブーストの体勢へ変わる――そして、激しい轟音と共に背後に回ろうとするのだが――。


『チィッ……! ミスった!』


 黒い機体の背後を取るつもりが、失敗して吹き飛ばされたイーリス。

 黒い機体はまるで結末が分かっていたかのように両手に粒子化させたアサルトライフルによる一斉射撃を行った。

 吹き飛ばされたイーリスは防御体勢を取る間もなく、ライフルの弾雨を浴びた。


『クソッ、直撃かよ……ッ! ――なッ!?』


 イーリスの目は見開かれる、黒い機体が自分の十八番である【リボルバーイグニッションブースト】を容易く成功させて背後に回っていたからだ。

 距離をとろうとスラスターを噴かせた次の瞬間、全方位から散弾の雨を浴びた――黒い機体がリボルバーイグニッションブーストで包囲射撃を行いながら、武装を【高速切替(ラピッド・スイッチ)】での切り替えで絶え間無く弾雨を浴びせ、頃合いを見計らってから大剣による一撃を腹部に叩き込む。

 国家代表がこうも簡単にやられることに、イーリス自身がショックを受けていた。

 あの時にリボルバーイグニッションブーストを失敗していなければ――そう思っても後の祭り、機体はぼろぼろになり、シールドエネルギーも一気に枯渇寸前にまで持っていかれた。

 だがここで攻撃の手が止む、何事かと思ったイーリスは荒い呼吸と苦悶の表情を浮かべながら見上げた。


『イマハマダ、アナタハタイジョウスルトキデハナイ』

『な、に……?』

『ソロソロワタシハシツレイスルトシヨウ』


 機械音声の為、どんな相手だったのかわからなかったイーリスはコアネットワーク経由で相手の機体だけでも調べることにした、搭乗者まで調べないのは検索をかけても何かしらの秘匿情報になってる可能性もあるからだ、機体なら最低でも機体名だけはわかる可能性が高い。

 その間に漆黒の機体は空域を離脱、太平洋の彼方へと飛んでいった。

 飛んでいった方角を眺めつつ、検索をかけたイーリスだったが、登録機体に【該当する】ものがなかった。


『ッ……完敗かよ、ちくしょう! 何が国家代表だ!』


 情報も得られず、戦いでも辛酸を舐めさせられたイーリスは悔しさのあまりに海上の上で叫んだ。

 一方、離脱した男は既に部分展開の応用でフルフェイスだけを粒子化、青みがかった銀髪が風で靡いていた。

 目元を隠す仮面は無く、ルビーの様に赤い両目が露になる。


「あの調子だと暫くアメリカにはいけないかもな……。 ……まあ、機体に関しても戦闘に関しても政府側に圧力掛ければどうとでもなるさ、これがな」


 誰に言うわけでもない独り言を呟く男の向かう先は――。


「やはりとりあえずの本拠は日本って所だな、下部組織の亡国機業も気になる。 ……まあ、あのスコールが此方に反旗を翻したとしても些末な問題だ……例え、この先あの『篠ノ之束』が『あの女』に【黒騎士】を渡そうとな……。 それに、抑止力としてカーマインも居るしな、これが」


 バイザー型のフェイスにチェンジすると、全身の装甲が開いて展開、そこから粒子の燐光が放出、それが推進力となり辺りに撒き散らせながら一路日本へと飛行していった。 
 

 
後書き
とりあえず仮面男のほんの実力の一部って感じかな

チートじゃねぇか(゚o゜)\(-_-)

それはさておき、簪フルボッコ……俺が簪嫌いだからって訳じゃないので悪しからず

感想は仕事が一段落ついてから返します 
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