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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第472話】

 
前書き
お待たせした

チートなモブキャラ 

 
 次の日の放課後、場所は第二整備室。

 既に第二整備室には簪の他、昨日頼んだセラと理央、後は理央から聞いた玲にのほほんさんが居た。


「悪い、少し遅れたか?」

「……ヒルト、少し……遅刻……」


 遅れたことに抗議の眼差しを送ってきた簪に、俺は頭を掻く。


「まあまあかんちゃん、ひーくんは一組クラス代表だからー。 ……んと、今日は確か―、織斑せんせーにプリント類の提出でー、ひーくんが持っていったんだよねー」

「あ、あぁ。 ……まあだからって遅れた言い訳にはならないがな、これが」


 遅刻したのは事実だし、頭を下げると簪は――。


「……それなら、仕方ない……かな……」


 とりあえず怒ってないようだ。

 周囲を見渡すと、ある程度必要な機材は近くに用意されていた、多分皆が運んだのだろう、こういう時こそ男子の出番だが……遅れたのだから何も言えない。


「ヒルト、更識さん、早く始めましょう。 ――大会まで後六日、機体を完成させないと」


 セラがそう告げる――時は金なりとも言うし、頷くと簪は打鉄・弐式を身に纏う――それを皮切りに、玲が。


「おー? 一丁やってやるぜー」


 腕をぐっとあげる玲、全員それがスタートの合図となり、整備を開始した。

 既に各々の持ち場を話し合っていたのか、スムーズにその箇所の整備と調整に取り掛かる彼女達、これなら俺がサポートする点は必要な機材を手渡すことだろう。

 そう思っていると早速お呼びの声が掛かる。


「ヒルトー、延長ケーブルお願いするぜー」

「あいよー」


 延長ケーブルを取り、理央に渡すと手早く機材に繋げて装甲の取り外しに掛かった。


「ヒルトー? 各種レンチセットとカッター取ってー? 机の上の工具箱にあるからー」


 玲がそう言うので複数ある工具箱の一つをあけると、各種レンチやインパクトドライバー、他だと最新の高周波カッターやソケット等が入っていた。

 蓋を閉じてそれを玲に手渡すと、高周波カッターとインパクトドライバーを取り出し、ビットの交換を行った。


「ヒルト、空中投影ディスプレイが足りない。 代換え品の液晶ディスプレイで良いから隣の整備室から取ってきて」

「了解ー」

「あー、ひーくん。 ついでにー、小型発電機二基もお願いなのだー」

「了解!」


 セラとのほほんのお願いを聞き、隣の機材置き場に移動、台車に小型発電機二基を乗せる。

 後は机に乱雑に並べられていた液晶ディスプレイを乗せ、台車を押して皆の所へと戻った。

 整備室内にはけたたましい音が鳴り響いている。

 各々が作業に取り掛かり、全身のスラスター及びブースターの不具合のチェックはのほほんさん、昨日の爆発ものほほんさんはコントロールルームで確認していたため知っている。

 全身の装甲は玲が担当、内蔵火器や武装は理央、セラはソフトウェア及びハードウェア、そして他の皆の作業の全体把握と簪の補助を行っていた。

 俺が出来ることはやはり少ないと改めて痛感させられ、俺はその他の事でのサポートを優先する。

 作業開始から一時間、簪は入力機器、使えるものは全てを使ってシミュレーションしていた、ボイス・コントロール、アイ・コントロール、身体を使ったボディ・ジェスチャー、更には両手両足全てを使った空間投影キーボードを上下に一枚ずつ、計八枚同時に操っていた。

 内面的な甘さはまだ拭えないが、こういう技術を見れば代表候補生に選ばれたのも納得ものだ。

 とはいえ表情は何処か早く完成させたい気持ちばかりが見える気がした。

 空を浮かび、光の球体に包まれているその姿は何処かファンタジー要素を感じさせる――勿論本格的な整備自体が俺も初見ってのもあるかもしれないが。


「ひーくん~、悪いんだけどぉ、データスキャナーとー、レーザーアーム借りてきて~」

「おー? 後々、超音波検査装置もお願い~」

「了解ー」


 機材等は一応分かりやすくするためか白いシールに機材名が書かれている。

 俺もこれを見れば何とかわかるため、非常に助かる。

 機材を再度台車に乗せる、レーザーアームはぐらぐらと安定しないため、支えながら俺は運んでいった。

 額の汗を拭いつつ、皆の作業が捗るように、可能な限り手早く求められた物は彼女達に渡していった。

 外は秋風で涼しいのだが、中は熱気が凄まじく、作業をする女性陣一同は皆汗に濡れている。

 脱水症状が起きる前に、俺は水分補給の為に飲料水を渡していく。


「ありがとう、ヒルト」


 そうお礼を言いながら受け取るセラ、僅かな微笑を溢したのが心に残る。

 理央も玲も、のほほんさんと戯れながら作業は順調に進んでいった。

 荷電粒子砲もシュミレーションでのデータではちゃんと上手くいっていた、親父がテストしたデータは役に立っている。

 マルチ・ロックオン・システムの構築に関しては難航している、簪が何度もプログラムを組んでも途中で不具合、errorの文字が出ては最初からやり直しを繰り返していた。

 他の作業と並行してる為だろう――焦る気持ちはわからなくもないが、多分このままだとマルチ・ロックオン・システムの完成は見込めないだろう。

 だが、それとは別に機体動作等の基本部分は着実に完成に近づいている、スラスター類も不具合等全く起こさなかった。


「うっし、とりあえずの所武装はOKだぜ。 更識さん、軽くテスト出来るか?」

「……う、ん」


 頷き、背部の荷電粒子砲二基が稼働、粒子が収束していく――勿論室内で放つ訳ではない、ちゃんとチャージが可能かどうかの動作の確認だ。

 問題点は見つからなかったらしく、収束していたエネルギーが収まっていった。

 次に薙刀を呼び出す、これもスムーズに展開できたので特に問題は無いだろう。


「だい、じょうぶ……」

「OK、とりあえずの所武装は完成って所だぜ、ヒルト」

「そっか、理央、サンキューな?」

「良いって事よ!」


 ニシシっと笑顔で応えた理央に、俺も笑顔で返す。

 それをセラがじぃーっと眺めてるのに気付き、振り向くとふぃっと顔を逸らされてしまった。

続いてのほほんさん、玲と仕上げていき、最後にセラが仕上げると簪は動作チェックを開始した。

 簡単な歩行にスラスターの稼働、反重力制御のテストやその他等を念入りに行う。

 その間はもう必要なさそうな機材を機材室へと直していく。

 その後もチェックを続け、時間は午後九時前――。


「どう、更識さん? 何処かおかしな箇所や不具合、違和感とかはない?」


 セラが代表してそう言うと、簪は小さく頷いた。


「だ、大丈夫……です」


 たった一日で完璧に終わらせた辺り、やはりセラや理央、玲の整備能力の高さが窺える。

 のほほんさんはわかっていたものの、改めて自分の目で確認すると驚きを隠せなかった。

 ……下手すれば前日完成って事もあり得たかもしれないのに……それでいて理央と玲の二人はIS操縦に関してもレベルが高い。

 ――本当に何で代表候補生じゃないのかが不思議だ、セラに関しては実力がわからないから言い様がないが。


「そういや火器管制システムはどうなった? マルチ・ロック・システムは何度もプログラミング失敗していた様だけど?」

「え、えと……。 つ、通常の、ロックオン・システムを……使います……」

「そっか、俺がマルチ・ロック・システムの構築できればなぁ……」


 そう呟く理央、武装類を担当していたこともあってか心残りなのだろう、勿論残り日数全てを投じれば完成するかもしれないが、完成しなければ意味がないだろう。

 簪の決断も一つの手だと思えば納得も出来る。

 ――打鉄・弐式は内蔵火器に高性能誘導ミサイルを搭載してる。

 計六基、各々が一度に八発の小型ミサイルを備えた武装ポッドらしい。

 最大稼働で同時に四八発の一斉射撃を行えるという代物。

 マルチ・ロックオン・システムが完成すれば最大稼働での高命中率、高火力が叩き出せるらしいが、完成してない以上そのスペックを引き出すことは難しいだろう。

 残り日数を訓練や大会用に機体調整を考えたら……これがベストかもしれない。

 そう思った俺は、皆を見ながら口を開く。


「何にしてもさ、一日で機体を仕上げられたのは協力してくれたのほほんさん、理央、玲、セラのお陰だな。 勿論、搭乗者の簪もだけどな」

「ぅ、ぅん……」


 ついでみたいな形で言ってしまったのは俺のミスだが、簪は特に気にした様子を見せなかった。

 というよりも、少しそわそわした感じが見受けられる。

 何か予定でもあるのかもと思った俺は――。


「んじゃ、皆はそろそろ上がっても良いぞ? 他の機材の片付けや整備室の鍵閉め何かは俺がやるし」

「おー? ヒルトー、いいのかー?」


 代表して玲が口を開いた、表情に疲労の色が見えるのがわかる。


「あぁ、今回俺は大して役に立ってないからな、これぐらいは俺がやらなきゃってな、これが」

「ん、ヒルト……わりぃな」


 タオルで汗を拭きながら理央は応える、セラの表情も疲労の色が見えるもいつもの様に真っ直ぐと俺を見ていた。


「じゃあお疲れ様、簪も上がって構わないからな?」

「……ぅ、ぅん。 え、えと……あのっ……」


 返事をし、簪は頭を下げてこう言った。


「あ、ありがとう……ございました……。 わ、私……上手く感謝の、言葉……伝えられないけ、ど……。 あ、ありがとう……本当に、ありが……ありがとう、ございました……」


 精一杯言ったのだろう……感謝の言葉を伝えた簪の瞳が僅かに潤んでいるのが見えた。


「気にしなくていい。 貴女にはヒルトのタッグパートナーとして頑張ってほしい。 ……それに、四組の子達も、今は貴女を応援してる」


 セラの濁りなき言葉、四組の子が応援してるのは本当だろう、前みたいな陰口は無くなっているのだから。


「おー? 気にするなー、二人が勝ち上がってくれたら私はそれで充分ー」


 玲も続いて応える、手伝ってもらって一回戦で負けたら顔向け出来ないしな。


「お礼は優勝してから言えよな? ……ま、強敵は多いけどさ、ヒルトと連携さえ取れれば難しくないしな、俺の見立てでは」


 そう言って理央は簪を見る、戸惑いを少し見せた簪だったが小さく頷いた。


「かんちゃーん、私が手伝うのは当たり前だよー? かんちゃんのメイドだけど―、私はー、かんちゃんの大事な幼なじみだもんー。 てひひ~」


 自分で言って恥ずかしかったのか照れ笑いを浮かべたのほほんさん。

 簪は改めて一礼すると皆は――。


「ん、じゃあ二人ともお疲れ様。 ……ヒルト、後片付け任せるわね」

「おー。 部屋に戻るのだー」

「だな、ヒルト……わりぃが片付け頼むな?」

「ひーくん、ごめんねー」


 各々がそう言いつつ、整備室を後にした。

 残ったのは俺と簪だけだが――。


「簪も上がっていいぞ? 何か用事あるんだろ?」

「ぅ、ぅん。 ……織斑くん、に、す、少し……」


 一夏に?

 何の用事かは気になるが、聞くのも野暮なので聞かないことにした。


「そっか。 ……とりあえず明日から放課後は訓練だが――」


 そう言いかける途中、簪が口を挟んだ。


「ご、ごめん、なさぃ……ヒル、ト。 く、訓練は……お、織斑くんと、したぃ……」

「……はぃ?」


 耳を疑う言葉、何故に一夏と訓練したいのかがわからなかった。


「ぱ、パートナーだ、けど……。 ……ひ、ヒル、トは……ヒーローじゃ、なぃ……から」

「……ヒーローじゃない?」


 言ってる意味がわからない、俺は特別ヒーローではないはずだが……ともかく、簪がこう言ってる以上は無理にどうこうするわけにはいかなかった。

 それと同時に俺は簪に厳しい言葉を伝える。


「……簪、さっき理央が言ってた通り連携取れなければ優勝すら難しいんだぞ? ヒーローが云々とかは俺からすればどうでもいい事だ、姉から一人立ちするつもり無いのか?」

「…………ッ」


 姉からの一人立ちという言葉を聞き、唇を真一文字に結ぶ簪、そして――。


「一人、立ちはしたぃ……で、も、ひ……ヒルトの言、葉……厳しい……から……。 ……パートナーなら、もっと……優しくして、ほしい……!」


 そう強く言い、簪は整備室を飛び出すように出ていく。

 整備室にはただ一人、俺だけが取り残される。


「……ヒーロー、ねぇ……。 ……簪、お前にとっての優しさって、甘言や耳障りの良い言葉を言う人達の事なのか?」


 誰も応えることのない問いは虚空の彼方へと消えていく。

 虚しさだけが残り、俺は整備室内の片付けを始めた。 
 

 
後書き
一日で機体を完成Σ(゜∀゜ノ)ノ

ってかまあ話の幅を広げる為に一日で完成にしたんだが

ってか幅が広がるのやら……次回は話が飛び、仮面ちゃんのお話を

ぶっちゃけ対戦だが 
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