IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第191話(鈴音ルート)】
前書き
鈴がじゃんけんに勝った場合のルートです
セシリアに引き続き見られた方、欲張りですな(ぇ
――ウォータースライダー前――
「へ……? ……勝っちゃった……」
臨時に開催されたじゃんけん大会を制したのは鈴音だった。
ポカンとしながら、鈴音も、他の皆も互いの手を見ていて、鈴音自身もまさか勝つとは思っていなかった様で――。
「そ、そんな……。 わ、わたくしが負けるなんて……」
負けた事に信じられず、セシリアは自分の出した手をまじまじと見つめていた。
「うぅ……。 何だか僕ってここ一番の勝負に弱い気がするよ……」
がっくり肩を落とすシャル、その沈み様はまさにタイタニックの如く――例えが悪いが。
一方のラウラは――。
「くっ……! 私が負けるとは……えぇい! 夢なら覚めてくれ……!」
……ラウラ、これが現実って奴だ。
美冬も、負けたのが信じられない様子だったのだが……。
「……鈴に負けちゃった。 ……でも、恨みっこ無しって言ったからね。 ほら皆、今回は鈴に譲って次の機会に……ね?」
皆の落ち込みように、美冬も気を使って声をかけながら来た道を四人で戻っていった――。
そんな四人を見ながら、鈴音は気まずそうに喋り始める。
「……わ、悪かったわね。 まさかアタシも勝つとは思わなかったから。 ……あんたも、他の子の方が良かったでしょ?」
「はい? ……何言ってるんだよ鈴音。 俺はお前と一緒で嫌だって言ったか?」
真っ直ぐと俺は鈴音を見つめると、頬を少し紅潮させながら視線を逸らす鈴音。
「い、言ってなぃけど……さ。 ……で、でも、あんただってセシリアやシャルロット、ラウラと滑りたいって思って――あたっ…!? な、何すんのよ、あんたは!」
「バカな事を言った鈴音に対してデコピンしただけ」
デコピンされたおでこを擦りながら、若干涙目で見上げてくる鈴音。
「……俺は鈴音と滑るの、嫌じゃないぞ? お前がそう思い込んでるだけだろ? てかお前こそ俺で良かったのか? 言付け頼んだとはいえ、やめることも出来たはずだぞ?」
「……あ、アタシは……あんたでも気にしないわよ……。 バカ、言わせないでよ……」
後ろへ向き、自分の表情を見せないようにする鈴音。
……最近、鈴音の俺に対する態度が何か少し変な気がする。
「……とにかく、並ぶぞ鈴音?」
「へ……? ちょ、ちょっと……手……手が……」
若干強引に鈴音の手を取ると、ウォータースライダーの列へと俺達は並んだ。
手を繋ぐのは強引だったかもしれないが……。
鈴音の方も、繋がれた手を気にしつつ、もじもじとしながら黙って俺と一緒に並んだ。
並んでから数十分、案外早く順番が回って来たことに驚きつつも、俺達は係員の指示に従う。
隣の列は曲線蛇行型のスライダーの列で、一定間隔でカップルが滑っていくのが確認出来た。
……しかし、列に並んでる間の鈴音が静か過ぎて逆にビックリした。
まるで借りてきた猫みたいに静かで、時折繋いだ手を見れば思い出したかの様に顔が赤くなり、俺の視線に気が付くと慌てて視線を逸らす。
……何か調子が狂う感じがするな、今の鈴音は。
「鈴音?」
「ふぁっ!? き、急に声をかけないでよ、バカ!」
「あ、悪い……。 えっと、スライダーだが……鈴音は前がいいのか? それとも俺の後ろか?」
「へ……? え、えっと……」
前にするか後ろにするか、悩む鈴音。
直線型のウォータースライダーだし、これはスピード出るから鈴音の性格からすると――。
「じ、じゃあ……あんたの後ろでいいわよ」
「ん? 後ろか? ……てっきり前かと思ったんだが……まあいいか。 じゃあ俺が前ね」
そう言って前に座ると、少ししてから鈴音が後ろに座り、遠慮がちに俺の腰に腕を回した。
……密着してわかるのだが、鈴音は確かに小さい胸だがそれでもやはり【ある】のだ。
「ね、ねぇヒルト?」
「ん? どうした? やっぱり前がいいか?」
「ち、違うわよバカ。 ……その、今日はありがと……ね?」
「……ん?」
聞き間違いだろうか?
鈴音からありがとうという言葉が聞こえてきたのは。
俺の返事が聞き返したものだと思った鈴音は――。
「だ、だから……その、さ。 ――あり…がと……」
「……んと?」
決して難聴なのではなく、俺の耳に届いた言葉が鈴音の【ありがとう】という言葉の為、思わずもう一度聞き返した。
これまでもお礼は言われてるが、何だか今日の鈴音のありがとうはいつものとは違う感じがする――。
そして、またも聞き返した俺に対して鈴音が――。
「だから……。 ――ありがとうって言ってるのよ! バカヒルトッ!!」
突如、耳元で鈴音が叫んだ為、俺の耳は軽く耳鳴りがした……。
「うおっ!? ……耳がキーンってする……」
「じ、自業自得じゃない。 ……一夏じゃあるまいし、難聴のフリしちゃって……」
拗ねたのかどうかはわからないが、言葉に少し元気が無いような気がした――。
「いや、聞こえてたけどさ。 いつものありがとうとは違う感じがしてな」
「うっ……。 べ、別に普段通りじゃん……」
ギクッという効果音が聞こえそうなぐらい小さく身体が跳ねた鈴音。
「そろそろ良いですか? 行きますよ?」
「はーい、了解。 ……ちゃんと掴まってろよ?」
「わ、わかってるわよ! あんたに心配されなくても――キャアッ!? いきなり流さないでよバカァッ!!」
鈴音が喋ってる途中で音を立てて一気に滑り始める俺達二人。
一直線型なので直ぐ様トップスピードに乗り、流れる水の勢いもあって一気に下まで滑り落ちた。
ザバァッと激しい水音を立てると共に舞い散るように水飛沫をあげた。
あっという間の出来事で、俺も鈴音も『もう終わり?』といった表情を浮かべ、互いに顔を見合ってると不思議と笑いが込み上げてきた。
「ぷっ――くくっ……。 ……はははっ! 何だよ、加速が凄くて直ぐに終わったな!」
「あははッ! そ、そうねっ……♪ 一瞬だったから気付いたら終わってたって感じ♪」
角度が急なのもあったせいか、本当に一瞬の出来事の様に俺も鈴音も感じた様だった。
その場で立ち上がり、鈴音に手を差し伸べると少し迷う素振りを見せながらも俺の手を取り、俺は一気に引き上げた。
「わわっ!? ……あ、あんた……勢い良すぎ……――……あっ……」
鈴音を立ち上がらせると、勢いそのまま若干体勢を崩した鈴音は、ちょうど俺に抱かれる様な体勢になった。
それに気付いた鈴音は小さく声をあげたと思いきや、一気に耳まで真っ赤に染め上げ、さながら茹でた蛸みたいになっていた。
「……ははっ、何を赤くなってるんだよ? ……まあいいさ、皆も待ってるし、戻ろうぜ?」
「え? ……ぅ、ぅん……。 ……ヒルト……ありがと、ね」
「……お礼なんて良いさ、少しは楽しめてくれてるのなら俺はそれで良いんだよ」
しおらしくお礼を言う鈴音に、笑顔で応えると鈴音も合わせてはにかんだ。
そして、俺と鈴音は一緒に皆の元へと戻っていった――。
後書き
という訳で鈴ルート
期待に添えてるか微妙ですが、読んでくださりありがとうございました
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