IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第198話】
駅に到着すると、降りる乗客と一緒に俺達は下車した。
駅構内の改札口を出ると、俺達三人はそのままレゾナンス内入口付近の案内図前まで移動した――。
「さて、回る順番は決めてるのか?」
「ん……ちょっと待ってね? 今案内図とこの雑誌見て効率よく回る順番見るから」
そう言いながらシャルはバッグから雑誌を取り出し、目の前の案内図と交互に見て場所とルートの確認を行っていた。
ラウラの方は、やはり慣れてないのか不思議そうにシャルを眺めるだけだった。
「……うん、わかった。 ヒルト、この順番で回るのはどうかな?」
そう言ってシャルは雑誌を見せるために近付いてきた。
近い距離のせいか、何だか甘い良い香りがする――。
「……シャル、良い香りだな」
「ふぇっ!? い、いきなり何!?」
ビックリした様に跳び跳ねたシャルは、顔を赤くし、若干テンパってる様に見えた。
「いや、良い香りがしたからな。 ……まあ、いきなり言えばそうなるよな、普通」
「ぅ……び、ビックリしただけで……イヤじゃないから……。 ぇ、ぇと、続きからだけど、この順番で回るのはヒルトはどう思う?」
「……まずは服からって訳ね。 構わないぞ?」
「うん、その後途中でランチにして、後は生活雑貨関係やアクセサリー等の小物とか見ようかなって」
そんな風に俺とシャルが楽しそうに会話をしてるのを見たラウラは、突如俺に腕を絡ませてきて。
「むぅ……ヒルト、私にも構え。 ……シャルロットばかりズルいぞ……」
ムスッとした表情のまま見上げるラウラは、俺とシャル二人が楽しそうに会話してるのが面白くなかった様だ。
「ふふっ……夫はヤキモチ妬きだな」
「……むぅ」
更に頬を膨らませ、ギュッと腕に絡み付くように抱きつくラウラ――。
「んじゃ、ラウラ。 シャルがこの順番で回りたいって言ってるがどう思う?」
「服からと思ってヒルトと話してたから。 もしラウラの行きたい場所があるならルートに組み込むよ?」
シャルがラウラにも見える様に雑誌を見せ、ラウラはその記事に目を落とすが――。
「……よくわからん。 二人に任せる」
そのラウラの言葉に、ガンッと案内図に思わず頭をぶつける俺。
「わっ! だ、大丈夫、ヒルト!?」
「……大丈夫、ラウラの予想の斜め上の答えに頭を打っただけだから――……まあラウラ自身、わからないことだらけって言ってたからな……」
「……そうだね。 とりあえずヒルトが大丈夫なら僕は安心だよ。 ところでラウラ。 ラウラは私服にはスカートとズボンのどっちがいい?」
そうラウラに聞くのだが、考え事をしてるのか返事がなく――。
「ラウラ、聞いてる?」
「ん? ……ああ、すまない。 聞いていなかった」
そう告げるラウラに、シャルは腰に手を当て、人差し指を立てながら――。
「も~。 私服はスカートとズボン、どっちがいいのって聞いたの」
軽く目尻を吊り上げ、少しだけ怒った様な表情のシャル。
「ん、どっちでも――」
「どっちでもいいとか、言わないでね。 ……ていうかラウラ、そういう所、ヒルトにそっくりだよね」
そう言って腕組しながら俺を横目で見るシャル。
……確かに俺もどっちでもいいって言ったりするからな。
そんな中、ラウラは誇らしげな顔をしながら俺の腕を取り――。
「夫婦が似るのはよいことだ」
「……それはどうかと思うぞ。 ……まあシャル、スカートかズボンかはラウラが見て決めさせる事にして、とりあえず向かおうぜ?」
「はぁっ……。 もぅ……」
ため息をつくシャルを見た俺は――。
「ほら、ため息は良くないぞ? 幸せが逃げるって聞くしな」
「……そうだね。 うん、気を付けるよ。 ……じゃあ、これから七階フロアへ向かうよ。 それからその下、六階と五階もレディースだから、上から順に見てこ」
そうエレベーターを指差すシャル。
だがラウラは何か疑問に思ったのか首を傾げ、シャルに聞き返す。
「うん? なぜ上から見るんだ? 下から見たらいいではないか」
最もらしい疑問を投げ掛けるラウラ。
シャルに代わり、俺が説明する――。
「ラウラ、シャルの雑誌載ってる内容を見ると、上から回る方が女の子には良いんだよ。 季節ものとか」
「ふむ? ……すまないヒルト、わからないのだが……」
困ったように眉を下げるラウラを見て俺は。
「んと、七階は多分まだ夏物の服をセールで売り出してるんだよ。 逆に五階、六階は秋を先取りしてオータムフェアをやってるから現状、先に安くなった夏物を購入してから下の階でこれからの秋物を見るって訳さ」
「うん。 ヒルト、説明ありがとう。 ……何気に詳しいね?」
「美冬や未来の買い物に付き合ってたからな……」
主に荷物持ちでだが。
女の子は季節を先取りして服を用意するのは多分皆同じだろう。
……俺とかは、安い時に買うとかだが。
――と、ラウラは毅然とした態度で。
「待て、嫁の言った事も理解できるが秋の服はいらないぞ」
見事に言い切るその姿は、可愛らしい外見とは違って漢を感じさせる。
男ではなく漢だ――ギャップが果てしないが。
そんなラウラのいらない発言に、疑問を持ったのかシャルが――。
「え? いらないって……なんで?」
これも当たり前の疑問で、俺も思っていたが――ラウラは静かにその瞳を閉じると一言語る。
「今は夏だからだ」
簡素でわかりやすい一言に、思わずシャルも唖然とし、俺も苦笑を洩らす。
「秋の服は、秋になってから買えばいい。 そうだろ、ヒルト?」
「……ラウラ、女の子何だからそれはちょっとダメかな? 美冬もだけどさ、季節を先取りして予め用意するんだよ。 秋になってからだと少し遅いからさ」
「む? ……成る程。 ――戦争になってから装備や兵器、兵士を調達しても間に合わん。 つまりそういう事か、ヒルト、シャルロット?」
「……あぁ、その考えで間違いはないぞ?」
「そ、そうだね。 大体はあってるよ」
俺とシャルの言葉に、満足そうに頷くラウラ。
「ふむ。 備えあれば憂い無し――というやつだな」
「そうそう、戦場で銃の弾が無くなると困るだろ?」
「……うむ、弾薬が尽きてしまえば足手まといになりかねんからな」
……多分、この例えで理解したとは思うのだが――。
「と、とにかく、順番に見ていこうよ。 ラウラ、わからないことがあったら僕かヒルトに何でも聞いてね」
「……だな。 まあレディースショップは詳しくはないが、レゾナンスはそこそこわかるし」
「……そうだな。 二人が一緒なら私も心強い」
柔らかな笑みを浮かべたラウラを見て、俺もシャルも笑顔で返すと、エレベーターの前まで移動してボタンを押し、来るのをそのまま待った――。
後書き
そろそろ女尊男卑の皺寄せが来るかも
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