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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第192話】

――ウォーターワールド内喫茶店――


 ウォータースライダーを堪能し、現在喫茶店。

 合流した四人は暑い中で待っていた事もあり、喉が渇いたということで喫茶店に移動――店内に入るや飲み物をオーダーし、俺達は休憩に入った。

 流石に店内まで殆ど肌を晒した水着で入るのは躊躇するため、上に羽織る物を着て皆飲み物を美味しそうに飲んでいた。


「ふぅ……、やっぱり飲むと生き返るな」


 飲み物を飲みながら、一息つく様に呟くと――。


「そうですわね。 一息つけるこの場所の雰囲気も悪くはありませんし……」


 セシリアが同意する様に呟き、店内の雰囲気の良さもあってか気分が良さそうだった。


「まぁね。 ……でも、流石にあたしたち目立ってるわね」


 そう言ったのは鈴音で、確かに店内の人から注目を浴びていた――主に、男から。


「そ、そうだね。 ……どうしてだろう?」


 困惑するように呟くシャル。

 ……やっぱり、皆がハイスペックだからだろうか?


「む。 この程度の視線で私は屈せぬぞ」


 等とよくわからない発言するのはラウラだ。

 結ったアップテールがゆらゆらと揺れていた。


「ん~、色んな意味で目立つからね。 女の子五人の中にお兄ちゃんが一人居るところとか、多国籍の外人がこれだけ集まってるのとか」


 ストローで飲み物を飲みながら美冬がそう言うと、まあその二つ辺りの理由だろうなとは思った。

 ……マジで視線が銃弾だったら蜂の巣どころかミンチよりひでぇってなるな……主に俺が。

 そんな下らないことを考えていると突如、流れていたBGMが変わり、アナウンスによる園内放送がウォーターワールド全体に響き渡った。


『では! 本日のメインイベント! 水上ペアタッグ障害物レースは午後一時より開始いたします! 参加希望の方は十二時までにフロントへとお届け下さい!』


 テンション高めの女のスタッフの声が園内中に響き渡る。

 来たときにあったあのイベント会場の事だろうなと思い、飲み物に口をつけていると――。


『なお、優勝ペアにはなんとなんと! 豪華沖縄旅行五泊六日の旅をペアでご招待! 準優勝ペアには一ヶ月間ウォーターワールド入場のフリーパスを進呈します!』



 沖縄旅行にフリーパスとは……まあ目玉イベントの賞品としてはベターな所か。

 そう思ってると、何やら皆の瞳がキラリと光った気がした――。

 まず、先手を打ったのが咳払いをしたセシリア――。


「こほん。 ヒルトさん? せっかくですからイベントに参加なさるのはどうかしら?」

「ん? 今のイベントの事か?」

「えぇ、そうですわ。 も、もし参加なさるのであれば――」


 そうセシリアが言ってる途中で、鈴音、シャル、ラウラが慌てて――。


「さ、参加するなら仕方ないからあんたのパートナーになってあげても良いわよ! で、でも勘違いしないでよ!? アタシと組んだ方が優勝する確率もあがるから立候補してあげたんだからねっ!?」

「り、鈴! ズルいよ! ねぇヒルト? 僕と組んで優勝目指そうよ。 ほ、ほら、六月のタッグトーナメントで僕達相性良かったじゃない? だ、だから――」


 そう照れながら告げるシャルを遮る様に、ラウラが――。


「ヒルト、私と組め。 拒否することは許さん」

 威風堂々とした佇まい、まるで自分が選ばれるのが確定したかの言い方はカッコいいのだが――。


「み、皆さん! 最初に言いましたのはわたくしですわよ!? ……そういう訳ですので、ヒルトさん? わたくしと組みましょう♪」


 最後に言ったのはきっかけを作ったセシリアだ。

 ……てか、こういう障害物レース系で場所がプールとかだと男はご遠慮くださいな気がするが――。

 そう思っていると、美冬が申し訳なさそうに皆にいい始めた。


「あの……皆? 喫茶店の壁に今日のイベントの事が書いてある張り紙見たけど……男の方の参加はご遠慮くださいって書いてある……」

「「「「…………」」」」


 さっきまで騒がしかった店内に、急な静寂が訪れた……。

 暫しの沈黙後、皆が一斉に着席し、ストローで飲み物を飲み始める。


「……参加しないのか?」


 そう俺が告げると、全く同じタイミングで飲むのを止めた四人――。

 因みに美冬はこういうのにはあまり参加しない。

 特に見せ物になるイベントは俺が止めるように言ってる為、参加しない。

 ……まあ、参加したいなら構わないんだけどな。


「……ヒルトさんと参加が出来ないのであればどうでもいいですわ……」

「アタシも……別に賞品ほしい訳じゃないし」

「僕も遠慮するよ。 ヒルトも参加出来るなら考えなくもないけどね」

「嫁と出られぬのなら意味はない」


 ……と、各々が理由(?)を語った。

 うーん、ここで代表候補生の身体能力を見てみたいと思ったのだが――。


 そう思っていると、妙案というか、参加させる一計を思い付いた――姑息だが。


「そっか……残念だな。 せっかく皆の活躍する姿が見られると思ったのに……。 代表候補生の皆の身体能力で障害物レースを駆け抜ける姿――可愛いと思ったのに……」


 ……俺自身、これはかなり姑息だと思いはするのだが残念ながら陶芸家は手を汚さずに綺麗な器を作ることは出来ない。

 つまり、必要悪というやつだ。

 ……まあ、これで皆がやるかどうかは半分半分って所かな――。


「……し、仕方がありませんわね。 ここでイギリス代表候補生、セシリア・オルコットの優雅で華麗な身体能力……ヒルトさんに改めて再認識させるのも必要な事ですものね」


 真っ先に言ったのはセシリアだった。

 結ったポニーテールを揺らし、いつもの様にモデル立ちをすると相変わらず様になる姿だった。


「し、仕方がないわね。 中国雑技団にも入れる中国代表候補生の力、あんたに見せてあげるわよ!」


 意外や意外、まさかの鈴音の参戦――鈴音だけは断るかと思ったのだが。


「や、やっぱり僕も参加しようかな? そ、そんなに得意って訳じゃないけど……ひ、ヒルトが可愛いって言うなら……」


 鈴音に引き続き、シャルも参戦――もじもじしながら言うその姿に、店内から可愛いーって声が聞こえてきた。


「……本来、軍人である私がこのような素人が参加するイベントに参加するのもナンセンスなのだが。 ……時には、一般の人にも見せつけねばならないからな」


 ……等と、俺には参加理由がわからないがとりあえず参加表明したラウラ。


「……私はパスかな? ペアで参加って言ってるし、一人余っちゃうもんね?」

「そうだな、美冬は俺と一緒に皆の応援するか」

「うん。 だから皆、頑張ってね?」


 美冬がそう笑顔で伝えると、こくんっと頷く四人の代表候補生。


「では、エントリーしに行きましょうか? ……ペア決めは向こうに着いてから決めましょう」

「賛成~。 誰と組んでも、アタシと組めば優勝間違いなしだしね♪」

「ふふっ、僕もいるからわからないよ?」

「私もだ。 ……皆、ベストを尽くすぞ」


 そう言って四人は席を立ち、フロントにエントリーしに向かった。


「……お兄ちゃん、結構策士だね?」

「……ん、でも皆の活躍する姿を見たいのは本当だぞ? 普段の授業は皆セーブしてるからか、本気は見られないからな」

「ふふっ、それは私もだね~。 ……じゃあ、皆の分を精算していこっか?」

「だな。 ……精算は俺が行うから美冬は待ってろよ?」

「了解~」


 そう言って喫茶店を後にした美冬。

 俺は自分の分を含めた飲み物代の精算を終えると、喫茶店の外で待っていた美冬と合流し、イベント会場へと向かった……。 
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