IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

ラウラがじゃんけんに勝った場合のルートです

三人に引き続き、ラウラまで見てくださった方

四本似たような話ばかりですまぬ

初見の方はいらっしゃいませませ

 

――ウォータースライダー前――


「む？　……こ、これは――」


　そんな声を上げたのはラウラだった、結果を見るとラウラがチョキを出し、他が見事に綺麗にパーを出すという――。

　つまり、臨時開催されたじゃんけん大会を制したのはラウラだ。


「……と、当然の結果だな。　私達夫婦の絆を断ち切る事は、我が義妹の美冬とはいえ、出来ないという事だ。　……良かった……ヒルトと一緒に滑れる……！」


　当然といった態度で皆に言った後、くるりと此方に向き直すと表情が崩れ、嬉しさが勝っているのか、ラウラは満面の笑顔だった。


「くぅっ……！　く、悔しいですわ！　わたくしもチョキを出していればラウラさんと一騎討ちでしたのに……！」


　悔しさが勝り、呪詛の言葉を呟くセシリアは若干涙目になっていた。

　……後のフォローが大変そうだ。


「く、悔しい……！　ISでも負けて、まさかじゃんけんでも負けるなんて……！」


　悔しさを隠しきれずに呟く鈴音。

　因みに鈴音は対ラウラ戦全敗中――俺は一勝したが、その後は……。


「ぅぅ……、僕だってヒルトと一緒に滑りたいのに……はぁ……」


　同じ様に悔しそうに呟くシャル。

　同室で仲が良いとはいえ、譲れない勝負もあるということだろう……。


「むぅ……まだ私、お兄ちゃんあげるって言ってないもん……。　……でも、ウォータースライダーだけは許してあげる」


　やはり悔しそうな表情の美冬、でも負けたのは認めてるためウォータースライダーだけは許しを得た。


「む……美冬。　いつでも私の事は義姉と――」

「い、言わないってば！　ラウラはラウラだもん！　……悔しいけど、皆、下で待とう？」

「わ、わかりましたわ……」

「……そうね」

「……うん」


　力なく返事をする皆を連れて来た道を戻る美冬たち。


「……やっぱり負けたのが悔しいんだな、皆」

「その様だな。　……ひ、ヒルト？　その……だな……」

　皆が来た道を戻った後、ラウラはもじもじしながら何かを言いたそうにしていた。


「ん？　どうした？」

「その、だな……。　て、手を……だな……」

「手？」


　そう言ったラウラは、俺の手を見ながら言いにくそうにしていた。


「……繋ぐか？」

「う……。　……いぃ、のか……？」

「何遠慮してるんだよ。　普段は嫁だ嫁だって言ってるのに。　……俺の夫なら、遠慮なく繋げ、いいな？」

「ぅ……ぅむ」


　遠慮がちに手を出すラウラの手を、俺は繋ぐと一瞬ピクッと小さく反応したラウラ。

　いつものラウラとは違い、こういう初々しい反応するラウラは新鮮だと改めて思う。

　……あんな濃厚なキスをしてきたラウラと、今のラウラは別人ではないかと疑いたくなるぐらいだ。

　繋いだ手を見つめ、その頬を朱色に染めるその姿を見たカップルの女の子達が、皆あの子凄く可愛いという声が耳に届いてきた。

　ラウラは不思議と同姓に可愛いと思われる傾向にある。

　事実、クラスの子も、ラウラが丸くなってからは頭を撫でに来たりとまるで小動物を可愛がる様な態度なのだ。


「ほら、並ぶぞ？　せっかく勝ったんだ、ちゃんと滑らないとな？」

「そ、そぅだな。　……ヒルト。　その……こういう事は初めてだから……至らない所があるかもしれないが教えてほしい……」

「……当たり前だろ？　安心しな、ちゃんと教えるから」


　そう告げ、空いた手で撫でると気恥ずかしさからか視線を逸らした。

　そんなラウラを笑顔で見ながら、俺達はウォータースライダーの列へと並んだ――。


　並んでから数十分後、ウォータースライダーの回転率の高さからか、想像していたよりも早く順番が回ってきた。


「む？　もう順番が回ってきたのか。　……私としては、もう少しヒルトとこう手を繋いでいたかったのだが……」

「ん？　ラウラは手を繋ぐのが好きか？」


　その質問に、一瞬きょとんとした表情になるラウラ。

　だが、次の瞬間には頬を赤らめつつ――。


「ひ、ヒルトと手を繋ぐのが好きなだけだ……。　あ、あまり言わせないでくれ……。　――どういう表情をすれば良いのかがわからなくなる……」


　そう困りつつ、気恥ずかしいのか顔を赤らめつつも眉を八の字に下げて見上げるように見つめてきた。

　ラウラもだが皆はよく顔を赤らめる――理由はわかるのだが、そんなにしょっちゅう顔を赤くしていると体調崩さないのかが気になったりするのだが……まあ、体調崩せば言うだろう。


「……普段通りのラウラでいればいいさ。　それが難しいならいつも俺に対する態度でな」

「そ、そうか。　……うむ、流石は私の嫁だ」


　……謎にも褒められた(？)気がしないでもないが――。



「まあいいさ。　ラウラ、前がいいか？　それとも後ろか？」

「む？　……前と後ろとは？」

「簡単に言えばウォータースライダーで、俺の前を滑るか後ろで滑るかだな。　カップルでだからどちらもくっつくこと前提での話だが……」

「ぅ……む。　……どちらも捨てがたいな。　だが、今回は前にしよう」


　一瞬悩む表情を浮かべるが、直ぐ様決断し、ラウラは前へと座る。

　それを見た俺は、その後ろへと座るとラウラの腰に腕を回すのだが――。


「ふわぁっ！？　な、なっ！？」


　急に腰に腕を回されたのに驚いたラウラは、あわあわとした表情と共に耳まで真っ赤に染め上げていた。


「言っただろ？　くっついて滑らないといけないって。　嫌なら肩にするか？」


　少し意地悪く言うと、首を全力で横に振ったラウラ。


「だ、大丈夫だ！　……き、急だったからびっくりしただけで……。　――ヒルトに抱かれるのは……心地よくて私は……大……好き……だ」


　首を振った後、此方に顔を向けたラウラの瞳は熱を帯び、憂いを秘めた眼差しで見つめてきた。

　……なんていうか、こういうラウラは意地悪して困らせてみたくなる。

　……ここで意地悪しても仕方ないので、機会があればラウラに意地悪してみるのも悪くないという悪魔の声が聞こえた。


「ははっ。　んじゃ、このままでな？」

「ぅ、ぅむ。　……ヒルト……暖かいな」

「ん？　暑くないか？　暖かいのか？」

「ぅむ。　……人の体温――というよりは嫁の体温が私には心地いい……。　このままずっと――」


　ラウラが喋ってる途中で、係員から俺達二人に声をかけてくる。


「二人とも、そろそろ準備はいいですかー？　後ろの方たちも待ってますのでそろそろお願いしますー」

「あっ、いつでも良いですよ。　ラウラも問題無いな？」


　横から覗き込む様に見ると、一瞬驚くのだが――。


「わ、私としては……このままヒルトとずっとこうして――ぅわあぁああっ！？」

「はい、その意見は却下されましたー」


　ラウラが言ってる途中で無情にもガコッという音と係員の却下という言葉と共に、俺達はウォータースライダーから滑り落ちた。

　いきなりだったためか、流石のラウラも驚きが隠せずに声をあげた。

　因みに、並んだ列は一直線型のウォータースライダー――ラウラが軽いとはいえ、やはり二人分の体重がのってるせいか直ぐにトップスピードに達し、一気に下まで滑り落ちると共に激しく水飛沫を立てた。


「……むぅ、もう終わりか」

「まあトップスピードにのるのが早かったからな。　どうだった？　初スライダー？」

「……一瞬だったから覚えてない。　だ、だが……ヒルトの温もりを感じたのが一番よかった……」


　水飛沫でびしょ濡れになったラウラは、不思議な艶っぽさを醸し出していて、俺も少しドキッとしてしまった。


「そ、そうか。　……ラウラ、立てるか？」

「む。　……せ、せっかくだ、今日は嫁の手を借りたいのだが……」


　立ち上がった俺を見上げるように見つめるラウラ。

　何となく、甘えるのが下手くそな猫の様にも思えた。

　手を差し出すと、ラウラはその手を掴み、勢いよく引っ張るとラウラは立ち上がった。


「ん……こ、こういうのも悪くはないな。　ヒルト、また機会があれば私をいろんな場所に連れていってほしいのだが――ダメか……？」


　毅然とした態度だが、何処か雰囲気は不安そうな印象を俺に与える。


「……ははっ、遠慮する事はないぞ？　ラウラには色々教えることがあるからな」

「そ、そうか……♪　――こほん。　嫁なら当然だな」


　一瞬声に喜色が満ちたが、咳払いすると共に普段のラウラに戻った。


「んじゃ、そろそろ戻るか？」

「……そうだな、流石に皆を待たせるわけにはいかない。　……本音を言えば、まだ二人で居たいのだが、そういう訳にはいかないからな」


　少し寂しそうな表情を浮かべ、言葉を呟くラウラ。

　そんなラウラの頭を撫でると、瞳を閉じ、その手の感触を楽しんでいる様に見えた――。


「ん……一緒に皆の元へ戻ろうぜ？」

「うむ」


　満足したのか、力強く頷くラウラと一緒に皆の元へと俺達は戻っていった――。 

四本見てくださった方

皆好き？

オリ主×ヒロインはNTRに近い気もするのですが……

……書くのはやめませんが(ぇ

書くことが好きだから書きます