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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第155話】

――砂浜――


『大好き』

 聞き違いじゃなければ、未来は確かに俺にこう言った。

 一瞬何を言われたのかが理解できなかったが、未来の真っ直ぐと見つめてくる潤んだ瞳と紅潮させた頬、そして言葉に載せた【大好き】というシンプルな告白に――。


「え?……えと?」

「……バカ。……女の子に二回も告白させる気……?」

「う……ち、違うって!……だ、だってさ。急だぞ?」



 そう、俺にとっては急な事だ。

 まさか……未来から好意を抱かれていたとは思ってもいなかった。

 現に彼女からは――。


『お、幼なじみとして面倒見てるだけなんだから勘違いしないでよ!?』

『わ、わかってるって。……ったく。別にいちいち勘違いしないから』

『…………』


――とか、バレンタインの時なんかは……。


『ほ、ほら。幼なじみとしてのよしみで今年もチョコ、あげるわよ。――今年も、美冬ちゃんとお母さんからしか貰わないんでしょ?』

『ん?おぅ、サンキューな。毎年三個が限界だもんな。うち二つは家族で一つは幼なじみから――ん?これってハート――』

『ち、違うわよ!ハート型何て贈るわけ無いでしょ!?桃よ桃!桃型チョコ!』

『……桃型か。まあ義理でも有り難いな。ありがとう、未来』

『……うぅ…。……私のバカ……』

『……?』


――とか、明らかに否定ばかりしてたからな……。


 そんな幼なじみからの告白に、心臓の鼓動が加速していく。

 夏の夜風がまた吹き抜けていく――まるで、帯びた熱を冷まそうとするように……。


「……未来、もしかして先月の大会で言いたかった事って――」

「…………」


 黙って頷く未来。

 直視出来ないのか、視線を逸らし、指を重ねてもて余していた。

 だから俺との関係が壊れるかもしれないって言ったのか……。

 告白の返事……か……。


「未来、あの――」


 返事をしようと口を開くが、それを遮るように未来が先に言葉を紡ぐ。


「ヒルト、返事は今すぐじゃなくていいよ?……ただ、気持ちを伝えたかっただけだから。えへへ……」


 眉を下げ、笑顔で言った未来。

 その表情ははにかみながらも、やっと想いを伝えられた女子の顔だった。

 そして、また視線を合わせると未来は口を開いた。


「……その代わり、一つだけお願い事してもいい……?」

「う?……何だ?」


 お願い事と言われ、一体何を言われるのか多少身構えてしまった。

 だが、未来はそんな態度の俺には怒らず、喋り始める。


「……明日、私達の誕生日でしょ?……皆、多分お祝いするとは思うけど。それとは別で二人だけでお祝いしない?」


 そう前屈みになり、見上げる様に未来は見つめてきた。



「ん……構わないぞ?……てか、断る理由ないしな」

「えへへ、じゃあ約束ね?」


 そう言って手を取り小指を絡ませ、指切りする。

 その仕草全てにドキドキするのは、やはり告白されたからだろうか。

 ……俺も、未来の事は嫌いじゃない。

 ……だが、俺自身……ちゃんと全員と向き合いたいとも思う。

 ……こういうのが、傷付けてるんだろぅな……皆を。

 罪悪感が心の中を満たしていく――と。


「……ヒルト。……迷惑……だった?」

「ち、違うって!告白されて嬉しくない奴なんかいないし――まぁ、俺自身の態度が未来とかを傷付けてると思うと……な」

「――ふふっ。ヒルト?このぐらいでヒルトの事、嫌いになる子は居ないよ?もしも居るなら――本当にヒルトの事、好きじゃなかっただけ。――優しい所はヒルトの長所で短所だけど、人を好きになるってそういったプラス面もマイナス面も好きにならないとダメじゃない?」

「……まぁ、それは俺も思うが、あくまでも俺や未来の価値観で……だからな」

「うん。――でも、結構重要だと思う。容姿が好みでもいざ付き合うと性格の不一致から喧嘩とか、結構訊くし」


 絶え間無く聴こえる波の音。

 俺は砂浜に座り込むと未来は海の方へと歩いていく。


「……何にしてもさ。ヒルトも私もまだ15――明日で16じゃない。……そりゃ、ヒルトが女の子をとっかえひっかえする様な性格なら嫌だけど――付き合い、長いからヒルトがそんな性格じゃないのは知ってるよ?」

「……さすがに彼女のとっかえひっかえはあり得ないな。どんだけ節操ないんだよ、俺」


 思わず苦笑し、それを見た未来も笑顔になって。


「……何にしても、私は返事待つよ?……だから、最終的にヒルトが誰と付き合いたいと思うかはヒルトが決めることだもん。……泣く子もいるけど、ヒルトが傷付く事じゃないからね?」

「……あぁ。――だが……」


 それでも現状、三人は泣くことになるんだよな……。

 皆、俺なんかの何処が良いのだろうか……。

 ……まぁ、セシリア、シャル、ラウラから本当に告白された訳じゃないから確証持って考えるのは無理だが。


「ん……そろそろ、戻ろうかな」

「ん?……そうだな、脱け出して来てるもんな」

「ふふ、そう――わわっ!?」


 そんな声をあげる未来は、流れ着いた小さな流木に足をとられ、体勢を崩しかけていた――。


「……っ!未来!」

「わわっ!――……ぁっ……」

「……ったく、相変わらずおっちょこちょいだな」


 前のめりで倒れそうになった未来を抱き止め、四月にあった時の事を何となく思い出していた。


 あの時もこんな感じに転けそうだったしな。

 そんな風に思っていると、未来の顔が徐々に真っ赤に染まり、視線がさ迷う。


「……どうした?」

「……か、顔が近ぃ……」

「……悪い、抱き止めたからな――」

「ぁっ……ま、待って!」


 そう言うや、首に腕を回して密着する様に抱き締め、見上げてくる未来。

 制服越しに伝わってくる豊満な乳房が当たり、顔が徐々に熱を帯びるのを感じた。


「ど、どうした……?」

「……明日まで待とうって思ったけど……ごめん、ヒルト」

「へ?何で謝っ――ん……ッ!?」


 そっと、自然な流れで未来は俺の口を塞ぐように自身の唇を重ねてきた――。

 未来がその様な行為――キスをするとは思わなかったため、驚きつつも唇から伝わる柔らかな感触に、俺は酔いしれそうになっていた。

 これで四度目のキス――そっと背中に腕を回し、抱き締めると一瞬ピクッと反応する未来。

 だが、それに応える様に未来は首に腕を回す力を込め、長く口付けを交わす。

 永遠ともとれるその一瞬が、俺の心の何処かでずっと続けばいいと思ったその時――。


「……少し、長すぎるのではないでしょうか、未来さん?」

「「……!?」」


 その声を聞き、慌てて俺と未来は唇を離す。

 そして、何故か冷や汗がだらだらと流れるのを感じ、ゆっくりと振り返るとそこにいたのは――。


「うふふ、こんばんはヒルトさん」

「ヒルト、ここで未来と【ナニ】してたのかな……?」

「…………」

「……や、やぁセシリア、シャル、ラウラ――後、美冬も」

「……ついで扱い?お兄ちゃん?」


 振り向いた先に居たのは欧州連合三人娘&我が妹の美冬だった。

 ……と、未来が口を開く。


「……良いじゃない。皆も【ヒルトともうキスした】でしょ?私だけしてないって不公平だもん」


 ……ん?

 何で未来がそんな事を言い出すんだ?

 そんな風に疑問に思っていると美冬が――。


「あのねお兄ちゃん。――もう、お兄ちゃんがここに居る皆とキスをしたってもう知ってるんだよ?」

「……なんですと?」


 そんな一言を口にし、皆を見ると一様に頷く。

 ……ラウラはわかるが、シャルとセシリアの事は誰にも言ってないぞ。

 てかシャルのは事故(事故とは思えないが)だったし……。


「んと。昨日の今頃ね?私たちヒルトのお母さんに何処まで進んだのって訊かれてそれで皆喋っちゃったの」

「…………」


 だから昨日、俺は部屋を追い出されたのか――頭が痛くなってきたぞ。

 ……てか自業自得か、俺も一夏の事、言えなくなるな。


「……とにかく、これで私も対等よね?……皆とは友達だけど、ライバルには変わりないもん」

「……ですわね」

「僕も、諦めるつもりはないよ?」

「無論私もだ。――ヒルト、そういう事だ。今すぐに選べとは言わない。……というか、今すぐ選ばれても私達に勝ち目がなぃ……だから、私も待つ」


 そう告げるラウラの言葉と表情は、不安なのか何だか今にも泣き出しそうにも思えた。


「……わかった。……多分、その間に俺の事好きじゃなくなるかもしれないがな」

「……そんな事ありませんわよ?少なくとも、わたくしは軽い気持ちで貴方をお慕いしている訳ではありませんので」

「……!?」


 ……確定だな、セシリアの気持ち。

 本人は何気ないかもしれないが、お慕いしているって言ってるのだから――。


「そうだよ。……僕も、まだヒルトとの付き合いは短いけど想いなら……未来にも皆にも負けない」

「…………」


 そう言ったシャルの目が潤む。

 負けたくないという想いが伝わってくる気がした。


「それに関しては私もだ。……いつか、本当にヒルトを私の嫁にしてやる。覚悟しろ」

「……ははっ、夫じゃないんだな」


 ビシッと指を指すラウラだが、その顔は月明かりに照らされ、赤くなった表情が丸わかりだった。


「……お兄ちゃんがモテてる。妹としては複雑かな……。……血、繋がってなかったら誰にも渡さないのに……」

「美冬……?」


 最後の方の言葉は、波の音と遠くから聴こえる衝撃砲の音がかき消した。

 てかまだ鈴音撃ってるのかよ……一夏は何をしたんだ?


 そんな考えを他所に、いつの間にか笑顔で皆が見ていた。


「……じゃあヒルト?四月に約束したデート、今度行こうね?」

「え?えと?」

「いいえ。先ずはわたくしに料理を教えてくださるという約束が先ですわ」

「う?……そ、そうだ――」

「そういえばヒルトに選んでもらった水着、まだ御披露目してないよね僕?今度、見せるね?」

「にょっ?み、皆一辺に言――」

「ズルいぞヒルト。私もデートに誘え」

「ぅぉっ――な、泣きそうになるなラウラ――」

「お兄ちゃん?私とも出掛ける約束、忘れてないよね?」

「…………忘れてません」


 そんな感じに何故か皆が詰め寄ってくる。

 ……嫌な気持ちではないが、何だかこれからが物凄く大変な気がする――。

 夏の夜風が頬を撫でるように吹き抜けると、一気に帯びた熱が冷めていく――。

 月明かりと星の光が砂浜や俺達を包み、その優しい光が海を照らすと応える様に波を打つ。

 何だか、本当に長い一日だったなと、俺は感じた――。 
 

 
後書き
うーん(-_-;)

駄文

そして曖昧

ラウラが今すぐに選べとは言わないと言ったのは潜在的に今選べと言えばヒルトが未来を選ぶと直感して言った台詞

何だかんだで時間の長さが比例すると……

次回リベンジマッチ 
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