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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第147話】

 
前書き
また遅れました 

 
 交差する度、激しい火花を撒き散らせ、互いの機影が距離をとる度に片方からの光弾の弾雨が海面へと降り注ぎ、爆ぜていく――。


「当たれぇッ!」

『――――』


 出力を絞り、両掌からビームの連射――だがそのビームは残光だけを残し、虚空の彼方へと消えていく。

 避けた福音による光弾の雨が、クサナギへと降り注いできた。

 衝撃に体勢を崩しそうになるが、何とか持ちこたえて福音を再度視界に捉える。

 第二形態移行した福音の機動力が、第一形態時よりも上がっている事に、俺は舌打ちした。


「チッ…!だがまだ、クサナギがやられた訳じゃないッ!」


 再度接近戦を試みる。

 全スラスターを点火し、光弾を左右高速に機体を揺らし、光弾の密度が薄い箇所を強行突破――光弾の爆発に機体が揺れるがそれすら気にせず肉薄するや直ぐ様両腕を振り下ろす。


 福音はその動作に反応し、全力でその場から離脱しようとスラスターを開くが、一瞬の判断でクサナギの腕部スラスターを点火――。

 勢いのついた両腕によるハンマースローの一撃に、激しい金属音が鳴り響くと共に復元された装甲を再度破壊――威力の凄まじさからか、派手に装甲が吹き飛んだ。


「まだだ!」

『――――!?』


 体勢を崩した福音の翼をクサナギの右手で掴み、勢いをつけて海面へと叩き付ける。

 海面に叩き付けられ、福音周囲に高く水柱が立ち上がり、海面には波紋が広がる。

 飛び散った海水がクサナギの装甲を濡らす――だが、装甲表面温度が高く、その海水は一瞬で蒸発していった。

 そして次の瞬間、俺は両掌を福音へと翳した――。

 独特の高周波音が鳴り響くや、砲口が光り――そして、福音目掛けて高密度ビームを照射される。

 辺り一面を閃光が包む。

 海面が爆ぜ、一気に蒸発――。

 辺り一面を水蒸気が覆うのも構わずに掌からビームを照射し続けた。


「……まだ、この程度でやられる軍用機じゃないよな」


 照射を止め、海面を見つめる。

 ゆらゆらと穏やかに、波打つ海面――陽は徐々に傾き、更に赤々と海面を照らしている。

 その刹那――。


『キアアアアアアッ!!』

「……!!」


 海に沈んでいた福音が急上昇と共に、クサナギ周囲を包囲するかのように光弾を形成させる。

 その数は数えるのも億劫なぐらいで、大小様々な粒子形成を終えた光り輝く光弾が、クサナギの周囲30メートル範囲を取り囲む。


「くそッ、またこの包囲攻撃かよッ」


 昼に対峙した時よりも光弾の数が多く、まるで俺を中心とした台風みたいだと悪態をつく。

 流石に何度も何度も都合よく増援が現れる訳でもない為、対処法を思い付かなければ確実にクサナギは戦闘不能になるだろう――。

 汗が頬を伝う――今、ここでクサナギが使用不能になると状況が更に悪くなる。

 近場に遮蔽物になるものは何もない――。

 と、ふと海面を見、さっき行った様に周囲に高々と水の壁を発生させればと頭の中を過る。

 が、福音もいつまでも待つはずも無く、視界に捉えたのは光弾が徐々に迫る光景だった。


「えぇいッ!やるしか無いんだ!!」


 緊急チャージを行い、その場で高速横回転運動を行い、直ぐ様両掌から海面へとビームを照射――。

 激しく水柱を立ち上げ、クサナギの周囲に水の壁が取り囲み、迫る光弾の包囲攻撃を完全に防ぎきった。


――だが。


「……ッ!?」


 時間差による第二波攻撃――。

 光弾の数こそ少ないが、それでも確実にダメージを受けるだけの量が無情にもクサナギの装甲に突き刺さり、激しい爆発に飲み込まれていく。


「グゥッ…がはっ!?……あぅ……ぐ…」


 クサナギの装甲どころか、村雲の装甲をも突破し、受けた衝撃に激しく身体が揺らされ、破壊された前面装甲から投げ出された――。

 主を失ったクサナギは、運良く近くの岩礁へと落下――辺り一帯に落下音が響き渡る。

 海に沈む事は無かったが、クサナギからは黒煙が至るところから出ていた。

 まだ動くだろうか、動作保証は期待値よりかは低いだろう。


「……なっ!?」

『――――』


 クサナギに気を取られている間に福音は瞬時加速で肉薄するや、その白銀の翼を大きく広げ、村雲を抱くように包み込もうとする。

 零距離射撃――頭に過るや、天狼を呼び出すが既にかなり接近していた為、刀を振るう事すら許さず村雲を包み込む翼。

 何とか脱出しようと、天狼の柄での打撃攻撃を福音に何度も当てるが、少しダメージを与えるだけで全く怯むことすらなくその刹那――。


「……ッ!」


 開かれた無数の砲口一つ一つ、眩い閃光を放ち始め一瞬で視界が真っ白に染まった。


「……俺がやられても、まだ皆がいる。……やられるのは癪に触るが、俺が【弱かった】だけだ」


 負け惜しみに近い呪詛の言葉、だが呟かずにはいられなかった。

 結局、クサナギを使っても俺は【弱い】――嫌でもその事実が今の状況を作り出している。

――いや、俺が単独で戦闘しようと思ったのがそもそもの間違いかもな。

 福音の翼の中で、思わず苦笑――そして、これから来るであろう零距離射撃を防御するため、防御体勢に――。

 粒子形成を終えそうになったその時――。


「どうやら間に合った様ですわね!」


 直上からそんな声が響き渡る――。

 次の瞬間、福音の頭上に降り注ぐ高出力ビームによる連射。

 その直撃に、堪らず福音も零距離射撃を中止、上へと視線を移すが――。


「行って!【禍乃白矛】ッ!!」

『――――!!』


 声に反応する福音に迫る自立兵器――。

 それは俺の村雲・弐式に搭載されている【八式・天乃御柱】と同じ、ランス型の迎撃兵器が福音を捉え、オールレンジ攻撃を行った。

 その攻撃を受け、堪らず急降下する福音――だが。


「ごめんね?まだ僕の攻撃も残ってるんだよ、福音?」


 直下から聞こえてくるその声に反応し、翼から光弾を放つ福音。

 数発の光弾が直下にいた機体を捉え、激しく爆ぜるが――。


「――ふふっ。残念だけど僕の『ガーデン・カーテン』は簡単には抜かせないよ?」


 爆発から飛び出すように直下に急降下した福音に迫る――。

 それは、瞬時加速による加速だと一目でわかる速度だった。

 構えた二丁のショットガンによる乱れ撃ち。

 その衝撃を受け、体勢を崩した福音は海面へと落ちていくが――ピタリと止まる、まるでその場に固定されるように。


「――どうやら私の嫁が世話になったようだな。福音?これはそのお礼だ、『ブリッツ』の砲弾。遠慮無く受け取るがいい」

『――――――!?』


 肩に備わった二門のレールカノンの砲口が火を噴く。

 直撃を浴びた福音は、片翼が吹き飛ばされ、固定されたその場から海面に落ちた次の瞬間。


「まだよ!一夏のやられた分、あたしが倍返しよッ!!」


 海面が爆ぜ、一気に迫るや両肩の衝撃砲が開く。

 しかし、いつもの衝撃砲とは違い、新たに増設された二つの砲口――合計四門の衝撃砲が文字通り火を噴いた。


『!?』


 零距離射撃による衝撃砲四門による砲弾は、福音の装甲に当たると同時に炎が福音を包んだ。


「美冬!最後よ、あんたが決めなさい!!」

「――もちろん。【クサナギ】、私に力を貸して!!」


 黒煙上げるクサナギを身に纏い、最後の力を振り絞る様にクサナギのスラスターが点火、その場に固定された福音に接近すると共にクサナギの右腕で殴り付ける――そして。


「お兄ちゃんのやられた分よ!――オロチ!」


 殴り付けたと同時に連続射突される四基の【八式・天乃御柱】――一撃一撃が装甲を貫き、その攻撃によって岩礁へと叩き付けられると同時に、クサナギも小さく右腕が爆発、小破した。


「――クサナギ、ありがとうね?お兄ちゃんを守ってくれて……」


 最後の力を出しきったクサナギは、近くの福音とは違う岩礁へと墜落――静かにその機能を停止させた。


「……どうやら、皆に感謝しないといけないな、俺は」

「そうですわよ?もしわたくしたちが遅れていたら――あまり、心配させないでくださいな」


 直上から降りてきたセシリアが、心配そうな声で話しかけてきた。


「ヒルト、もう一人で勝手に行かないでよ?――織斑君が怪我をしたのは、ヒルトのせいでも、篠ノ之さんのせいでもないんだから」

「……いや、もっと俺に力があれば助かったかもしれないんだ、未来」


 セシリアの隣にやって来た未来に視線を移し、自分の力の無さを言うと――。


「ヒルト、一人で抱え込む事無いよ?僕たち、仲間でしょ?」

「シャル……」


 直下にいたシャルがゆっくりと同じ高度にやって来た。


「そうだぞヒルト。嫁が一人で悩みを抱えるな、少なくともここにいる皆はヒルトの味方だ」

「ラウラ……。そうだな、次からは皆に相談してからだな」


 同じように直下からやって来るラウラ。


「とにかくあんた、もう皆に心配かけないでよッ!あんたまで大怪我したら、あたしだって嫌なんだし……さ」

「鈴音……どうしたんだ?何か急にしおらしくなって、女になったのか?」

「――あたしは元から女よッ!バカヒルトッ!!」


 鈍い音が辺りに響き渡る――鈴音のチョップが頭部に炸裂した。


「いてて……。そういや篠ノ之は?」

「……篠ノ之さんは来ないって、だから私たちだけで来たんだよ」


 そう言ってやって来たのは美冬だ。


「……そうか、何にしてもこれでやっと終わっ――」


 俺の言葉が途中で止まる。

 視線の先にいる福音が紫電を纏い、ゆっくりと上昇していたからだ。

 その様子に気づいた皆が、一気にその表情を強張らせる。


「こ、これは――『第二形態移行』――」

「違うぞラウラ。――まさか、対応するために更なる進化をするとはな――福音はさっき、第二形態移行を終えたばかりだが。多分全員に対応するために強制的に行ったのだろう」


 俺の言葉を聞きつつ、皆はその光景から目が離せなくなっていた。

 福音から新たな翼が生え、合計四つの翼で自身を纏うように包み、翼を一気に開く。

 その装甲ダメージは完全に修復され、またダメージを与えたシールド・エネルギーも回復している様に思えた。

 そして、俺の言葉が静かに辺り一帯に響き渡る。


「あれは――【第三形態移行(サード・シフト)】だ」 
 

 
後書き
下手くそな駄文すみません

そろそろ村雲と天照をあげないと――φ(..)

早めのup 
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