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悪魔が下僕

作者:黒塚工房
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悪魔が下僕


 *劇場版・反逆の物語のネタを使った二次創作です。
  まだ映画を見ていない、ネタバレ嫌いな方はブラウザバック推薦







     ●







 魔女を超え、魔法少女を超え――。

 宇宙を書き換え世界の全てを作り変え、インキュベーターを使い走りにしてボロ雑巾になるまで働かせ、今この世界には美樹さやかや巴マミ、佐倉杏子が全員とも生存している。それどころか鹿目まどかも普通の少女として生活し、円環の理としての自分を忘れているのだ。
 といっても、力の断片をもぎとったにすぎない。円環の理自体は残っていて、魔法少女が魔女化する心配はないままだ。
 そして。
 超越的な力を手にした私は悪魔を自称したけれど、私という存在は実は前々からマゾだったのか。それとも、悪魔となったからといい、必ずしもサディストの女王のように振舞えるわけではないものなのか――あるいは鹿目まどかが本当はサドなのか。

「ほら、お散歩だよ? ほむらちゃん」
「え、ええ……」

 首輪を巻かれた私はチェーンを引かれ、ペットの犬のようにされている。夜中の公園を一糸まとわぬ姿で徘徊させられていた。
「わん。って、言ってみて?」
「……わん」
「駄目だよ? ほむらちゃん。そんな淡々とした棒読みじゃ。もっと犬らしく、それっぽい声で鳴かないと」
「わ、わん!」
 私は精一杯の演技で犬のように振舞った。インキュベーターの前ではそれこそ悪魔の微笑みをこぼしてみせた私だというのに、まどかの前ではこんな扱いを良しとして、何もかも受け入れてしまっている自分がいる。
 ただ首輪を巻かれるばかりか、全裸でしかも四つん這い。どこで購入したセットなのか。ご丁寧に犬耳を頭に乗せ、お尻の穴には尻尾を植え込まれてしまっている。今のまどかにとって、私は本当に犬に等しい存在なのかもしれなかった。
 私としても、まどかのためなら痛みさえも愛おしい。
 恥辱さえも愛おしい。
「もう一回」
「わん!」
 この屈辱的な扱いが私の体を熱くさせ、下腹部に甘い痺れをもたらしている。愛液が滲んでくるのも時間の問題だ。一体どちらが女神でどちらが悪魔か。自分の変態的性癖をほとほと自覚させられる。
「なんだかね。ずっとこういう日を待ち望んでいた気がするんだ」
 まどかは語る。
「初めて会った時のほむらちゃんには戸惑ったけど、なんだか初めてっていう気がしなくて。本当はずっと前から友達だった気がするんだよね。とっても不思議な感覚だけど」
 それはそうだろう。
 私にとっては昔から、ずっと親しい存在だったのだから。
「でね? ずっとこういう関係だった気がするの!」
 まどかはさも元気な笑顔を振り撒き、楽しそうな表情で私の首輪を強く引っ張る。
「わ、わん!」
 散歩中は飼い主の許可無く人間の言葉を使ってはいけないので、私は鳴き声で意思を伝えようとしてみせた。今の引っ張り方は少し苦しいと。
「あ、ごめんね? ちょっと休もうか」
 まどかはベンチに腰掛けて、私はその足元で体育座り――というよりは、犬座り。
「エサの時間にしよっか」
 差し出されるビーフジャーキーが人間用であるのが、お散歩プレイ中の私に対する唯一の人間扱いだ。あとは尿意があれば電柱への放尿を強要され、靴を舐めたり、投げたフリスビーを口に咥えて取って子させられたりする。
「あむっ……」
 まどかに食べさせてもらったせいか、それはとても美味しく感じた。
「はい、あーん」
「あ、あむぅっ」
 まどかの手で食べさせてもらう。私も私で、こういう瞬間を待ち望んでいた気がしなくもない。
「他にはどんなエサが欲しい?」
「わん!」
 私は乞うような上目遣いでまどかを見上げる。
「私が欲しい?」
「わん!」
 私は頷く。
「しょうがないなー。こっちにおいで? ついでに人間の言葉を使っていいよ?」
「まどかぁ!」
 許可を得た私はまどかに飛びつき、ベンチへ押し倒して口を貪る。強引なまでに唇に舌を押し込み、胸を揉み、肌を擦り付け全身でまどかの体温を味わった。
「えへへ、ほむらちゃんはエッチだなぁ」
「だって、まどかが可愛いんだもの。あなたは最高よ」
 首筋へ吸い付き、下腹部へ手を伸ばす。
「あっ……そこは……!」
 まどかの甘い鳴き声が私の耳をくすぐった。
「とても可愛いわ。まどか」
「もう、駄目ってば」
 私は本当に犬かもしれない。美味しいまどかにがっついて、まどかはじゃれる犬を受け止めるかのように私を抱き止め、愛撫に頬を染めている。私の指先でまどかのショーツは濡れ始め、どことなく吐息も色めいてきた。
 そんなこれからというところで、まどかは私の肩を掴んで制止する。
「はい、ここまで」
「そんな……!」
 おあずけを喰らった私は、ひどく絶望的な顔をしてしまう。
「ワン」
 その一言で、遠まわしに犬語に戻れと告げられる。
「……わんっ」
 私は再び人語を禁止された。
「続きはお家に帰ってからね? ほむらちゃん」
「わん!」
 私は安心して、喜んでまどかの顔に頭を擦り付けた。まさに懐いた犬の挙動だ。
「はい。それでは一旦帰りまーす」
 チェーンを引かれ、四つん這いで歩かされ……。
 自分の家では家族がいるからか、帰った先は私の家だ。合い鍵はまどかが預かって、まどかは自由気ままに私の家に出入りする。玄関から上がる前に私はタオルで手足を拭かされた。
「ではほむらちゃん? お体を綺麗にしましょうね?」
 私が最初にされたのは、風呂場で体を洗われることだった。石鹸を手で泡立て、背中に指を這わせてくる。
「ひっ、ひあぁっ」
 そのゾクっとくる感覚には声を出さずにはいられなかった。
「ほら、ほむらちゃん。何か喋って?」
「き、気持ちいいっ……!」
 背中からうなじにかけてを攻め込まれ、私の体はビクビクと反応してしまう。それが面白くてか、まどかは私を執拗に苛めてくるのだった。
「うへへっ、感度がいいね? ほむらちゃん」
「だ、だって! それはあなたが……」
 まどかに散々調教されてきたからなのだが。
「ほむらちゃんがエッチなんだよね」
 強い口調で言われ、ほむらは黙って頷いた。本当は自分がまどかを苛める想像だってしていたが、まどかに悪魔でいてもらうのも悪くない。
「ええ、興奮するわ。あなたに触れられると、とてもイきそうになってしまう」
「いい子だね。ほむらちゃん。全身綺麗にしてあげるからね」
 まどかは私の腕や脚を洗い出し、脇をくすぐる。お楽しみの部分は後に残して、指の隙間や腹周りを先に済ませて、そして乳房を揉みしだかれた。
「くはぁぁっ、まどかぁぁ……」
 まどかの手つきに私は官能的に目を細めた。
「気持ちいい?」
「……気持ちいいわ」
 すると、まどかは満面の笑みを浮かべる。
「ではでは、下の方も洗いましょうか」
 まどかは私の下半身を持ち上げて、全ての恥部が丸見えになる恥ずかしい体勢を私に取らせた。愛液にまみれた秘所に触れられ、お尻の穴さえねっとり嬲る。
「くぅぅ……」
 ただ体を洗われているだけでなく、こんな場所を見られ、触られている恥ずかしさに身体が震えてしまう。秘裂を指で押し開かれ、恥垢がないかまでもチェックされ、さしもの私も本当に真っ赤に染まっていた。
「はい、お終い」
 ようやく体を洗い終わると、解放されたというよりも、私は何か物足りないような気持ちに陥った。きっと、私はもっとされたいのだ。まどかの手で辱められ、まどかの手でどんな事でもされたいのだ。
「じゃあ、湯船で待っててね?」
 まどかは自身で体を洗う。犬は主人に洗ってもらわなくてはならないが、飼い主は自分で洗えるというわけだ。
 しばらくして、洗い終わり……。
「はい、お待たせ」
 ニコっとしながら、まどかは湯船に入ってくる。
「温かいわ。とっても」
 まどかと一緒にお風呂に入れる。こんな幸せがあるだろうか。私はまどかにしがみつき、まどかの匂いを尾行で味わう。
「ほむらちゃんも温かいよ?」
 まどかはそんな私を撫でてくれる。
「……まどか」
 その手の感触が愛おしくて、私はうっとりと目を細めた。
「ほむらちゃん」
 まどかもまた、愛おしそうに私を抱く。
「今夜は一緒に……」
「うん。一緒に寝よ? ほむらちゃん」
 風呂上りになると、私達はパジャマに着替えた。
 同じベッドに潜り込み、一緒の布団で体を寄せ合う。
「まどか」
 私は名を呼ぶ。
「なーに?」
「愛しているわ」
 同じ時間を繰り返し、やっとの果てに同じ布団で過ごしている。この幸せを思うと、こんな言葉を口に出さずにはいられなかった。
「私もだよ? ほむらちゃん」
 まどかが、私に唇を重ねる。
「……んっ、まどか」
 私も、まどかの唇を頬張り返した。

 いつかは敵になるかもね、なんて台詞を口にしたけど。
 少なくとも、今のまどかに円環の理としての記憶はない。
 今はまだ、こうしていられる。




 
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