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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第165話】

――サービスエリア内――


 バス内カラオケ大会は、サービスエリアに着いた所で一旦一区切り。

 駐車エリアに停まり、全員下車すると、先生方の誘導で食事をとれる場所まで移動した。

 そして現在――。


「かぁーっ! カレーうめぇなぁっ!!」


 そんな歓喜の声をあげる俺に、周りからクスクスと笑い声が聞こえてきた。

 だがそんなことは気にせず、タバスコをたっぷりぶっかけた辛いカツカレーを一口一口、頬張って咀嚼する。


「ふふっ、ヒルトっていつも美味しそうに食べるよね? 作った人も作り概があると僕は思うよ」

「んむ? んぐんぐ……。 そりゃ、食に感謝は当たり前だからな。 美味しいものは美味しい、俺はそれだけだよ。 ……一夏みたいにいつもその料理にうんちく言ってたらご飯も不味くなるってもんさ、俺はな」


 向かい側に座るシャルは、和食の定食を食べている。

 一旦箸を置いて、俺の食べる姿をニコニコと笑顔で見ていた。


「ふむ。 ……ならいつか、ヒルトには私の手料理振る舞おう。 嫌いな食べ物とか、ヒルトはあるか?」

「ん? 納豆と梅干し、野菜はピーマンだが基本的に細かく刻まれてたら大丈夫。 他だとキムチ嫌いだな。 まあ韓国料理全般が苦手なんだが」


 そんなラウラの問いに答えると、何やらシャル、ラウラ、セシリアと急いでメモを取り始めた。

 気にはなるが、それよりも腹が減っているのでバクバクと食べていく。


「お兄ちゃんって、案外何でも食べそうだけど韓国料理は好きじゃないんだよねぇ。 まあ私も好きじゃないけど」

「ん。 まあ食べて美味いと思えなかったからな」



 水の入ったコップを手に取り、それを一口飲む。

 タバスコの辛さは大丈夫だが、やはり少し汗をかくのが問題だな。

 平日とはいえ、サービスエリア内には人が溢れていた。

 家族連れや友達同士、トラックの運転手や何やらテレビカメラまでも見えた。

 報道規制されてるから、俺達を撮ると放送局には厳しい処罰が与えられる為、カメラを向けることは無いのだが――。

 流石にIS学園の制服は目立つため、チラチラと横目で見られていた。


「……しかし」


 俺が一言呟くと、皆が頭に疑問符を浮かべる。

 そして俺が視線をそこに移すと――。



「篠ノ之さんっ。 一緒に食べない?」

「え、えと……。 わ、私は一夏と――」

「良いじゃん、たまには私たちと食べるのも♪ 篠ノ之さんの事、もっと知りたいし♪」

「そうそう♪ 織斑くんとならいつでも一緒に食べれるでしょ?」

「それは、そう……だが……」

「決まり♪ じゃああっちで食べよっ♪」

「わ、わあっ!? せ、背中を押さないでくれないか?」


 ……と、バス内でも見た光景だが【何故か】急に篠ノ之に友達が増えた気がした。

 そんな篠ノ之を見た一夏は、頼んだ料理を手に持ちながらやって来た。


「……あいつにもやっと、他に話す相手が出来たんだな。 いつも俺以外とはあまり話さなかったからな」


 そんな事を言いながら空いていたラウラの隣へと座る一夏。

 ラウラは怪訝そうな表情を見せ、軽く一夏から椅子を離す――と。


「……? なんだよラウラ。 もう少し仲良くしようぜ、同じクラスなんだしさ」

「……悪いが断る。 人の気持ちはそうそう変わるものではない。 故に私はお前が嫌いだ、例え教官の弟だとしてもだ」



 そう告げ、ラウラは頼んだスパゲティを食べていく。

 これ以上語ることは無いという雰囲気を醸し出すラウラだが、一夏は――。


「そう言うなよラウラ。 せっかく同じクラスなんだ、つれない事言わずに、な?」

「……一夏、あんまりしつこいとラウラに軍隊式格闘術を食らう結果になるからそろそろやめろよ」


 そう俺が言うと、ラウラは安堵したかのように一息吐く。


「うっ。 ……そ、そいつは嫌だな。 でも、いつまでも仲良くなれないのは俺は嫌だし」

「……ラウラだってわかってるさ。 でもお前の良いところ、正直皆わからないんだよ」

「そうだね。 織斑先生は織斑くんは色々役に立つし妙に女心擽るって言ってたけど……。 私は正直、わからないかな。 家事とか出来ても人間性がわからないもん」


 隣の美冬がそう言いながら水を飲む。

 そう言えば前に織斑先生が一夏の事をそう言ってたらしいが――生憎と男子は居なかった為、わからなかったが。



「そうですわね。 ……飯使いとしてはお役に立てそうですが、織斑さんは」


 言って食事を終えたセシリアは口許をハンカチで拭う。

 そして、席を立つとセシリアは――。


「少し席を外しても良いかしら?」

「ん? あぁ、構わないぞ」

「で、では……直ぐに戻りますので……」


 そう言い、セシリアはゆっくりとした足取りでその場を後にした。

 ――と、一夏が。


「セシリア、トイレか?」


 そんな言葉を訊いた女性陣達は――。


「……一夏、デリカシー無いよ?」

「織斑くんサイテー」

「貴様はもっと女心を理解しないといけない」


 当たり前だが非難の言葉しか出なかった。


「……てか、普通に考えても失礼だろ。 セシリアが居たなら睨まれて頬を叩かれても文句言えないぞ?」

「……ひでぇ。 そんなにデリカシー無いか、俺?」

「「「「うん」」」」


 場にいた俺、美冬、シャル、ラウラと一様に息があったように頷く。

 それを聞いてがっくりと肩を落とす一夏――。


「お、お待たせしました。 ……織斑さん、どうかなさいましたの?」

「ん。 大丈夫だぞ? 一夏ならバカな発言した結果だから気にせずに」

「……そうですわね」


 戻ってきたセシリアは、直ぐに俺の隣へと座る。

 唇がキラキラと輝いて見える……多分リップグロスを塗り直したのだろう。

 良いリップグロスを使ってるせいか、余計キラキラと見えた。

 そんな俺の視線に気付き、セシリアは頬を染めながら――。


「ひ、ヒルトさん? どうかなさいましたの? そ、その……わたくしの顔に何かついてますの……?」


「ん? 何も付いてないぞ?」

「そ、そうですか。 で、ではあまりじっくり見ないでくださいな……。 は、恥ずかしいので……」


 もじもじしながら視線を逸らすセシリアを、可愛いなと思っていると向かい側からジトーっとした視線を感じ、見ると明らかに不機嫌なシャルorラウラの視線が――。


「ヒルト、セシリアの顔ジーっと見すぎ。 そんなに見つめるのはマナー違反だよ?」

「ヒルト、見るなら私だけを見ろ。 わ、私だってリップグロスぐらい……。 ……もってなかった……」


 シャルからはマナー違反と言われ、ラウラには私だけを見ろと言われた。

 そんなラウラは、自分の鞄をがさがさと漁るが何も出ず、しょんぼりとし始めた。


「化粧品ならナチュラルメイクまでにした方が良いぞ? ラウラは元が良いんだし、下手に化粧し過ぎるよりは軽くする方が似合うと思うが……。 美冬はどう思う?」

「お兄ちゃんと同意見かな? 背伸びして化粧したがる子も増えたけどあまり濃くすると肌年齢下げちゃうからね。 皆モチモチ白肌何だし」

「何言ってるんだよ、美冬もモチモチじゃねぇか」


 言うと、美冬は顔を赤く染め上げた――この場で触らないが、たまに頬を触ったりするので。



「まあ何にしてもさ、何か服を買うとか化粧品を選ぶなら美冬や未来、セシリアにシャルと相談してみなよ。 男の俺には化粧品は解らんが、服ぐらいなら一応見立てられるし」

「う、うむ。 ……その時は、よろしく頼む……」


 そう言ってラウラも恥ずかしいのか顔を赤く染めた。


「……そういや、未来見掛けないな」

「みぃちゃんなら確か布仏さんや鷹月さん達と食べるって――ほら、あそこに」


 そう指差す先には談笑する未来達の姿が見えた。

 たまに顔を赤くするのは何か言われたからだろうか?


「……まあ何にしても居るなら安心だな。 IS学園の子ってだけで結構ナンパとかされるし――この辺りは女尊男卑になっても変わらないがな、これが。 皆も気を付けろよな?」

「大丈夫ですわよ。 わたくしがその辺りの殿方に靡く女ではありませんわよ。 セシリア・オルコットですから」


 そう言いながら髪を手でかきあげ、ふわりとセシリアの金髪が靡く。


「僕も大丈夫だよ。 でも、危ないときはヒルトが助けてね?」

「ん? それは言われなくても助けるさ。 まあ普通は連れが居たらナンパ男も諦めるんだがな」


 言って直ぐに笑顔で俺を見るシャル。

 頼られるのは嫌いじゃないが、助けなくても代表候補生なら撃退出来そうな気がする……主に言葉だけで。


「私なら心配はいらないぞ。 そんな輩は直ぐに排除するからな」

「そっか。 だがあまり暴力で解決するなよ? 相手が触れようとした時に今朝みたいに腕を捻れば良いんだしさ」

「そ、そうだな。 今朝はすまなかった、ヒルト……」


「気にするな。 ……まぁガチでやりあうと負けるってのがわかったがな」


 申し訳なさそうに言うラウラに、笑顔で応えると今度は――。


「……お兄ちゃん、私の事も守ってよね? 妹の貞操も守ってくれないと」

「……てか美冬は俺より強いじゃねぇか。 ……まあ、美冬を強姦しようとする輩は皆地獄を見せるつもりだがな」


 そう言い頭を撫でると気持ち良さそうに瞼を閉じる美冬。

 ご飯を食べ終えた俺達は、この後も談笑を続けた……。

 
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