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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第204話】

 一連の騒動からか、シャルとラウラの二人は一気に忙しくなり、共にどう反応していいか困っていたが、店長が間に入って上手く二人を滞りなくテーブルに向かうように声をかけ、調整をしていた。

 一方の俺は、現在絶賛カップや皿などを洗っていた――此方は此方で丁寧かつ素早く洗っていく。

 ――こっちの方が慣れてるのは、家でもやってることの延長線上だからだ。

 違うのは、割れば給料から天引きされるという事なので、それに気を使いつつ素早く綺麗に洗っていった――。


「あら、有坂君って結構手際が良いのね?」

「あ、店長。 ……家でもやってますからね、皿洗い。 ……今日は凄く忙しいのですがいつもこんな感じなのですか?」

「ううん、今日はあの子逹二人が居るからかな? ……でも、お陰様で繁盛してるけどね」


 そうウインクしながらまたホールへと戻っていく店長。

 ……多分、何かしらSNSとかで口コミで噂が広まってるのだろう。

 ……代表候補生ってバレたら色々面倒になりそうだが。

 ……因みに、俺はバレてない。

 理由は言わずもがな、一夏に焦点が当たってる為、俺は基本的にニュースに流れるのは希だ。

 情報統制が引かれてての希だから、ニュース時間にして多分一週間に三秒あればいい方だろう。

 ……まあだからって俺は俺なんだが、流石に美冬や未来、セシリア、シャル、ラウラ逹は日本のマスコミはもっと俺に焦点を当てるべきだと言ってるが……。

 ――とりあえず、今はそんな考えよりは次々に来る皿を洗わねば……。

 そんなこんなで時が過ぎ、混雑が二時間程続いた。

 少し休憩に入ったシャルとラウラだが、二人の表情には疲れの色が見え始めた。

 無理もない、慣れない接客業をいきなりメインで客の対応をやらされてるのだ。

 ……それも、他のホールスタッフの五倍ぐらいの働きで。

 事実、他のスタッフが注文を取りに行くと、必ずシャルかラウラのどちらかの指名が入る。

 ……これだけ頑張ってるんだ、少しは店長も色を付けてくれるだろう。

 ……と、突如ドアを蹴破る音が店内に鳴り響く。


「全員、動くんじゃねえ!」


 そんな怒声に、何事かと思いキッチンから覗き見ると、男が三人入り口から雪崩れ込んできた。

 一瞬、店内にいた全員が何事かと思っていたが、次の瞬間には男の持っていた拳銃の銃声が響き、天井に小さな弾痕がついた。

 それがきっかけになり、女性客一同が悲鳴を上げた。


「「「きゃあああっ!?」」」


 その悲鳴に苛立ちを感じたのか、男の一人――多分リーダーだろう――が更なる怒声を客に言い放つ。


「騒ぐんじゃねぇっ!! 静かにしろ!!」
「ひっ……!?」


 そう言って近くの客を脅すように銃口を向けると、小さく悲鳴を上げてガタガタ震えながら頷いた。

 男逹の服装はジャンパーにジーパン、顔に覆面をし、手には拳銃(マシンピストルかも)及びショットガン、サブマシンガン。

 三人が背中に背負ったバッグからは慌てて詰め込んだのか、紙幣が飛び出していて何枚かひらひらと床に落ちていく。

 ……まあ、友好的なお客様ではないだろう、見るからに強盗であり、どこかを襲撃した逃走犯――これも銀行だろう。

 ……てか、セキュリティの甘い銀行だな、最近だと直ぐに窓口がシャッターで閉まって入り口も閉まる銀行もあるというのに。

 ……ともかく、銃を最低三挺持った犯人達なので、言うことを聞かざるを得ないだろう。

 ……久しぶりにムラクモと話してみるか。


『ムラクモ、聞こえるか?』

『………………』


 問いかけるが返事はなく、もう一度声をかけてみる。


『ムラク――』

『おっそーーいッ!! ずっと話しかけてくれるの待ってたのに! バカバカバカバカバーカッ!!』


 そんなムラクモの怒声が、頭の中に響き渡り頭痛がした。


『ぅおっ……。 な、なんだよムラクモ、それならそっちから会話を――』

『しようにもヒルトっていつも誰かと一緒じゃないッ!! ……さ、寂しかったんだからね? バカ……』


 そんな寂しそうな声をあげるムラクモ。

 表情はわからないが、やはり声色だけ聞くと本当に待っていたように思えた。


『……悪かったよ。 だから機嫌直せよ、な? ほら、今度頭なでなでするから』

『むぅ……わかった。 ……所で、何か用?』


 納得したのか、ムラクモの声には喜色が満ちていた。

 ……もう少しムラクモとも話をしないといけないな。


『あぁ、衛星へのリンクを頼む。 その後はここの@クルーズ周辺の3Dマップを映してくれないか?』

『ん。 ……ちょっと待っててね? 一応他の回線経由じゃないとまずいから』


 そう言って十秒後に3Dモデリングされた@クルーズ周辺のマップが現れる。

 因みに、現在わからないように部分展開してハイパーセンサー機能を作動させてるから、キッチンには俺の目にだけ周辺マップが映っていた。

 周辺マップには、やって来たであろう警察や野次馬の様子も見える――と。


「あー、犯人一味に告ぐ。 君達は既に包囲されている。 大人しく投降しなさい。繰り返す――」


 そんな警告と共に、周辺マップに映し出された映像には裏口まで囲む警察の姿が――。

 周辺道路は封鎖され、各警官はライオットシールドを構えているのだが――確か、ライオットシールドって銃弾を完全には防げなかったような?

 銃弾を防ぐならベイカー・バットシールドだと思うのだがやはり犯人の抵抗に対抗するためにライオットシールドを選んだのだろうか……。

 ……てか装備に関して俺が考察しても仕方ないな。


「ど、どうしましょう兄貴! このままじゃ、俺達全員――」

「狼狽えるんじゃねぇっ! ……焦る事はねぇ。 此方には人質がいるんだ。 ……そうそう強引な真似は出来ねえさ」


 明らかにリーダーとおぼしき体格のいい男が逃げ腰だった二人に告げる。

 すると、さっきまでの逃げ腰は何処へやら、自信を取り戻し、一人は手に持つショットガンを構え――。


「へ、へへ、そうですよね。 俺達には高い金払って手にいれたコイツがありますし……!」


 覆面越しにも解るぐらい、笑みを浮かべる手下Aは構えたショットガンのポンプアクションを行うや直ぐ様天井に向けて威嚇射撃を行った。


「きゃあぁぁああっ!!」


 蛍光灯が破裂し、その恐怖のあまりパニックになった女性客が耳をつんざくような悲鳴を上げた。

 やはりそれにいち早く反応したのはリーダーの男であり、手に持つハンドガンを天井に向けて撃ち、黙らせる。


「大人しくしなッ!! あんまり煩い声で叫ぶなら……その口、永遠に喋れなくするぜ……わかったかッ!?」

「……ッ!?」


 そんなリーダーの脅しに、女性客は顔面蒼白になり、その目に涙を浮かべながら何度も頷くと必死に声が漏れない様に口をつぐむ。

 ……流石にこの三人組の暴挙に、俺は少なからず苛立ちを感じた。

 それまでは説得に応じてくれるなら……という甘い考えを抱いていたが、多分説得に応じないだろう。

 手下の二人がまずリーダーに忠実という事は、あの二人を仮に説得できたとしてもリーダーの一喝で考えを改める様な人間に思える。

 言い換えればリーダーを説得できれば問題ないが、そのリーダーは銀行強盗が成功したのと、現在多数の人質をとった状態という事で説得に応じる可能性は限り無く0に近いだろう。


『ムラクモ、あいつら三人どう思う?』

『……ヒルトが考えてた事はもう解ってるけど――私も同意見よ。 ……コアと対話を果たしたヒルトでも、今の彼らに言葉は届かないと思う。 ……同じ人間なのに、悲しいね……』

『……あぁ、だから世界は未だに紛争とか絶えないし、民族同士の争い、国家間での争いもあるのさ』

『……そっか。 ……ヒルト、彼らを懲らしめた方がいいよ。 このままじゃ、他の誰かが傷つく――ううん、もう……傷付いてる人、いるもん』


 ムラクモの指摘を受け、さっき脅されていた女性客を見ると、声を押し殺しながら目にいっぱい溜めた涙が溢れ出ていた。

 そして、その近くにいたリーダーが手下Bからサブマシンガンを受け取ると――。


「おい、聞こえるかポリ公ども!! 人質を安全に解放したかったら逃走用の車を用意しろ! ……もちろん、追跡車や逃走用の車に発信器なり下手な小細工なんか付けてたりしたら――人質の命は無いと思え!! ギャハハハッ!!」


 そんな高笑いしながら、警官隊に向かってサブマシンガンを発砲する。

 撃った弾丸は、パトカーに当たり、フロントガラスを割ってボンネットに穴を空けていた。

 そのリーダーの無差別発砲に、@クルーズ周辺にいた野次馬がパニックを起こし、辺り一帯が騒然となった。


「へへ、奴等……大騒ぎしてますよ兄貴」

「平和な国ほど、犯罪はしやすいって話、本当ッスね! へへっ」

「まったくだ。 ……さて、逃走用の車が来るまで、適当に女でも犯すか!」


 ……救いようのない人間だな。

 今の発言に、女性客及び@クルーズ女性スタッフが身を強張らせ、ガクガクと震え始めた。

 男性客も、男性スタッフも反抗しようにも相手が銃をもっているため、反抗が出来ず仕舞い。

 ……正義感何てものは、俺には無いが――【出来ることをするのが、人だろう】……。

 プライベート・チャネルを開き、まず最初にシャルに通信を送る。


『シャル、聞こえるか?』

『うん、問題なく聞こえるよ』

『……まだ多少犯人側に罪の意識があるなら俺も説得と思ったが――このままじゃ、誰かがPTSDになりかねない。 ……悪いが、あいつらにはお仕置きが必要だ』

『……うん。 ……相手は三人だし、僕達はいざとなったらIS展開出来るしね』

『……あぁ、でも使用は部分展開までだがな。 ……ラウラにも通信する。 シャル、一人は任せたぞ』

『うん。 ……ヒルト、無茶しないでね?』


 気遣うシャルの言葉に静かに頷き、シャルとの通信を切ると直ぐ様ラウラに繋げる。


『ラウラ?』

『む? ……どうした?』

『今シャルに通信したが――あいつらにお仕置きするぞ?』

『ふむ。 ……私が見る限りでも、説得は難しそうだからな。 嫁の事だ、最初はそう思ってたのだろ?』

『――流石だな、ラウラ? ……一人、任せていいか? でしゃばりじゃないが、リーダーは俺が仕留める』

『……無論だ。 では私が注意を引く。 ……シャルロットには随時通信を送るからリーダーは任せたぞ。 ……それと、無茶はするなよヒルト』

『……大丈夫だ。 ラウラも無理するなよ、いつでも俺やシャルが居るからな』

『……うむ。 では通信を切る』


 それだけを言うと、ラウラは通信を切ってからスッと立ち上がった――。


『……ヒルト、私がヒルトを死なせないから――安心してね?』

『ムラクモ? ……あぁ、まだ死ぬつもりは無いさ。 ムラクモはこのまま衛星へのリンクを続けてくれ』

『ん。 了解……』


 そう静かに答えたムラクモ。

 @クルーズ周辺の警官隊はパニックになった野次馬への対応やらで慌ただしく動いていた――。 
 

 
後書き
当初は説得する形に考えてたけど上手くいかず、フルボッコルートo(`へ')○☆パンチ!確定へΣ(゜□゜;)

そして俺の思惑で小悪党のリーダーがちょい悪くなったΣ(゜∀゜ノ)ノ

死傷者まで出してたらヒルトぶちギレモードだったかもヽ(・_・;)ノ 
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