| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

【第206話】

 あれから時間が過ぎ、二時間後――俺達は残っていた買い物をレゾナンスで済ませた。

 レゾナンス内のテレビでは、今日起きた銀行強盗及び@クルーズ立て籠り事件で持ちきりだった。

 ――何気に、執事二人とメイド一人が解決したと流れたが、顔写真まで流れなかったのは幸いだろう。

 ――流れてたら、色んな意味でまずいが。

 レゾナンスから外へ出ると、陽は黄昏、太陽が沈んでいくのが確認出来た。


「もう夕方だね」


 そう言ったのはシャルだ。

 夕陽を浴びたブロンドが、キラキラと輝き不思議な魅力を醸し出していた。


「買い物はもう全部か?」


 そう言ったのはラウラで、同じように夕陽を浴び、ラウラの銀髪は輝き、風が吹くと更に輝きを増しながら靡いた。


「……色々あったが無事に買い物が済んで良かったな。 ……まあ、ラウラの買い物が途中から任せるとか、好きにしろばかりなのはどうかと思ったがな」

「む……。 次は善処しよう……。 だがヒルト、あまり小言ばかり言うと老けるぞ」

「ん? ……老けた俺ねぇ……」


 うーんと悩む素振りを見せると、シャルが慌てて――。


「ひ、ヒルトは老けたとしてもカッコいいよ!? うん! 僕が保証する!」


 シャルは必死にそう言い、両手を胸の前でグッと握りこぶしを作って言うその姿に――。


「ははっ、そう言ってくれると有り難く老ける事が出来るな」


 ニシシッと歯を見せて笑うと、夕陽のせいか、いつもより顔が赤くなったシャル。

 そんなシャルが、慌てたように話題を変えた。


「そ、そうだ。 ねえ、ヒルト、ラウラ。 向こうの公園に行ってみようよ」


 そう言って指差す先にあるのは城址公園だ。

 何でも昔は城が建っていたとか……。


「公園? ……どんな公園なんだ、ヒルト、シャルロット?」

「ん? 元は確か城が建ってたらしいぞ? ……まあ堀もあるから多分そうだと思うが」


 そう俺が言うと、シャルも笑顔で頷き、ラウラは――。


「ほう。 ……それは興味深いな。 日本の城は守りにやすく、攻めに難いと聞く。 城跡とはいえ、一見の価値はありそうだ」


 着眼点がミリタリー一色だが、それもラウラの個性だろう。

 考え方は人それぞれで、楽しみかたも人それぞれだ。


「それにしても、結構買っちゃったね。 店長がこっそりお給料入れてくれたから、予定よりも色々買えて僕は助かったよ。 ヒルトは?」

「ん? ……俺はそこそこしか入ってなかったからな。 とりあえずこの金は食費に回すかね」


 給料に差が出るのも女尊男卑ならではだ。

 まあそれでも@クルーズは出しただけでもましだろう。

 即日の仕事で金が出ずに関連グッズを渡すブラックな会社もあるとか……。

 ……と、ラウラが突如――。


「む、金か? ……それならば口座に二千万ユーロ程あるはずだが――」

「……ラウラ、それは有りすぎだろ。 ……桁が凄まじくて実感がわかない金額だな」

「そ、そうだね。 ……僕もそれなりに貰ってるんだけどなぁ……」


 そんな呟きが風と共に吹き抜けていく――夏の暑さは変わらないが、風だけは心地よかった。


「……私は生まれた時から軍属でな。 ……ジュネーブ協定には違反してはいるが……。 そ、それはそれとして、ISの国家代表候補生になってからは、その分も上乗せされている」

「成る程……」


 そう短く言葉を告げると、ラウラは空に流れる雲を眺めながら――。


「しかし、引き出しかたを知らないのだ。 ……水着を買った時は、事前に渡されていた日本円を使ったのだが……。 ……ユーロは今まで一度も使った事がないからな……」


 そんなラウラの言葉に、シャルが覗き込む様に見ながら笑顔で。


「ふふっ、そっか。 ……ラウラ? 貯金するのはするで良いことだよ。 ……後はお金の使い方、覚えていこうよ」


 そんな笑顔のシャルに、柔らかな笑みを浮かべて応えたラウラ。


「うむ。 シャルロット、よろしく頼む。 ……ヒルトも、サポート、よろしく。 ……しかし、つい最近までは個人で金銭を持つ必要が無かったからな。 軍から受ける支給品で事が足りたし、潜入捜査の時も補佐エージェント以外からは物品を受け取らないようにしていたぞ。 でなければ容易に足がつく」


 ラウラの言葉に、若干苦笑しながらシャルは話題を変えた。


「あはは……。 と、とりあえず、公園に着いたからクレープ屋さん探さない? ヒルトは知ってる、クレープ屋さん?」

「……あぁ、あれの事か」


 そう小さく呟くと、ラウラが俺とシャルを見ながら――。


「クレープ屋? ……何故クレープなのだ?」

「えっと、もしかしたらヒルトは知ってるかもしれないけど。 ――休憩時間にお店の人に聞いたんだ。 ここ、城址公園のクレープ屋さんでミックスベリーを食べると幸せになれるって――そんなおまじないがあるらしいよ? そうでしょ、ヒルト?」

「……あぁ、てかここのミックスベリーの話は有名だからな」

「ふむ……。 所で二人とも、『オマジナイ』……というのは、日本のオカルトというやつか?」

「オカルト? ……どちらかと言えば、ジンクスか験担ぎって言った方がわかりやすいか?」

「成る程、流石は嫁だ。 わかりやすいぞ」


 うんうんと頷くラウラに、眉を下げて困った様な表情を浮かべたシャル。

 まあシャルの考えてることもわからなくはないがな……。

 もう少し女の子っぽい響きのおまじないでって事だろう。

 ……俺としては、これはこれでラウラらしいとは思うがな、これが。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧