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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第205話】

 店内でスッと立ち上がったラウラは、誰もがその目に止まったことだろう。

 流れる様な美しい銀髪に、左目を隠す眼帯、おまけに美少女とくれば犯人の三人組も、注目せざるを得ない。


「なんだ、お前? ……お前が代わりに犯されたいってか?」


 下品な笑みを浮かべつつ、リーダーはラウラへと接近――値踏みするようなねちっこい目でラウラの全身を見るリーダーのその姿に、正直今すぐ黙らせてやろうかとも思ったが……ここで出ては下手すると他の客に被害が出るため、我慢することに。


「……貧相な身体だが面は悪くねぇな……」

「へへっ、そうッスね兄貴! でもその前に兄貴、せっかくですからこの子にまず接客してもらってから御奉仕してもらいましょうよ!」

「あ? 何で先に接客なんだよ、お前?」

「だって、ホラ! せっかくですからご主人様って呼ばれたいじゃないッスか!!」

「お、俺も呼ばれたいっ。 そ、それに一度メイド喫茶に入って見たかったんですよ!」


 二人ともそう言い、ナゼか恥ずかしそうな表情を浮かべる手下AとB。

 そんな二人をリーダーは覆面越しにも解るぐらい眉間にしわを寄せ、仕方なく納得したのかソファに腰を下ろし――。


「ふん。 ……まあいい。 まずは腹ごしらえだ。 それに、喉も渇いたしな。 ……おい、まずはメニューを持ってこい。 その後にお前には俺様の特別なソーセージで御奉仕してやるぜ、ギャハハハッ!!」


 下品な笑い声が店内に響き渡る中、ラウラは頷くでもなく三人組を一瞥し、カウンターの中へとやって来た。


「……ヒルト、コップ一杯に氷を満載してくれ……」


 既にカウンター内に移動していた俺にそう促すラウラ。


「……あぁ、わかった。 ……ラウラ、大丈夫か?」


 犯人達から背を向け、コップに氷を入れながらラウラに聞くと――。


「……無論だ。 ……ヒルト、怒ってるのか?」

「……ハハッ、まぁな……。 ……いつでも援護するから無理するなよ」

「……あぁ、では行ってくる」


 トレーに氷を満載したコップを乗せて渡すと、ラウラは犯人の元へと向かった。


「……なんだ、これは?」


 トレーに乗せられた氷一杯に満載されたコップを怪訝そうな表情で見つめるリーダー。


「水だ」


 そう一言、ラウラは告げると手下Aが――。


「いや、あの、メニューが欲しいんスけど……」


 流石に持ってきたのが氷を満載されたコップ一つだけなのに戸惑いつつ、再度ラウラにメニューを頼むがラウラは――。


「黙れ。 飲め」


 短く二言告げるラウラに、更に戸惑いの色を浮かべるが次にラウラが言った言葉が――。



「――飲めるものならな」

「「「…………?」」」


 三人組が頭に疑問符を浮かべた瞬間、突然ラウラはトレーをひっくり返す。

 突然の事に、三人組は宙に舞う氷水に目を奪われる。

 その一瞬でラウラは素早く行動に移った――自身に注目が向かうようにふわりと空を舞い、回転しながら氷を掴むと指で弾く。


「ぐあぁぁあっ!? な、なっ、何しやがっ――」


 弾かれた氷はまるで弾丸の様に突き進み、人差し指に直撃し、痛みからかハンドガンを手放すリーダー――更に手下にも、瞼や眉間、喉にと氷の塊が直撃し、苦悶の表情を浮かべて悶絶した。

 そして、着地すると犯人の怒号より早く反応し、懐に潜り込むと残った手下のみぞおちに膝蹴りを叩き込んだ。

 その間に、俺はラウラの邪魔にならない位置に移動する。


「ッざけやがって! このガキがぁッ!!」


 痛みから復帰したリーダーが、足元に落としたハンドガンを手に取り、構えて発砲する。

 その発砲音に、店内は騒然となり、皆が頭を庇うように伏せた。

 ラウラの方は、素早い身のこなしで遮蔽物へと次々に移動して射撃を回避していく。

 細身ゆえの素早さか、はたまた訓練の賜物か――リーダーのハンドガンからカチッカチッと音がした――弾装が空になったようだ。


「あ、兄貴っ!? こ、こいつッ――」

「狼狽えるな!! 生憎向こうはガキ一人、此方は三人! 直ぐに片付けて――」


 そんなリーダーと手下Aとのやり取りに、介入者が現れる――。


「――残念だけど、彼女一人じゃないんだよねぇ……アハハッ」

「なっ――」


 マガジンを切り替えたリーダーの背後に迫ったのはシャルだ――その姿は執事服で一見華奢に見える少年の為、油断したのか――。


「バカなガキが! てめえ一人増えた所で――」


 注意がシャルに向いたその時、俺は一気に飛び出す――。


「……油断しすぎだッ!! ぶちのめすッ!!」

「何……ッ!? まだ居たかッ!!」


 リーダーが振り向き、その最中でハンドガンの照準を俺に向ける――その一瞬を見逃すシャルではなかった。


「ハアァァアッ!!」


 リーダーの腕を狙い、キレのある蹴りによる一撃――ミシミシと突き刺さるその一撃に、思わずハンドガンを落とした。


「ヒルト! 任せたよ!!」

「OK! ……その顎、粉砕してやるよッ!!」


 身を屈ませて懐に飛び込み、一気に距離を詰めると共に顎に掌打による一撃を叩き込み、擦りあげた。

 その一撃の重さに、一瞬ふわりと体格の良いリーダーが宙へと舞うと、零距離にまで接近――密着すると身体を低く沈め、体重移動させた。

 その瞬間、リーダーの男は勢いよく吹き飛び、壁へと叩き付けられる。


「グハァッ!? ……て、てめ……ぇ……ッ」

「あ、兄貴――」


 ショットガンを持った手下は、信じられないといった表情で壁に吹き飛ばされたリーダーを呼ぶその一瞬――。


「シャル!!」

「了解!!」


 シャルに声をかけると、手下の顔面に交差するように俺とシャルの蹴りが左右同時に炸裂した。

 キレのある一撃と重い一撃に、一発ノックアウトされた手下はそのままダウン――前のめりに倒れた。


「く、クソォォッ――」


 残った手下Bが、サブマシンガンを構えようと動く――。


「ヒルト! 一気に行くぞっ!」

「OK! 俺に任せなよ、これがなぁッ!!」


 互いに声を掛け合うと、まるでシンクロするかのように俺とラウラは同時に動き、残った手下に迫る――。

 照準をつけてる間にまず、先に懐に入ったラウラが屈んで足払いをし、手下が体勢を崩した所をサブマシンガンを持つ手に俺は蹴りを入れ込む。

 強烈な一撃に、手下の叫びにもならない呻き声をあげた。

 ――と共に、サブマシンガンを落とすと更に追撃の一撃に、その場からラウラは相手の顎にサマーソルトによる蹴りの一撃。

 残った手下は完全ノックアウト――ソファーに倒れこんだ。

 そして、ふわりと空を舞ったラウラは見事に俺の腕に収まるようにキャッチ――俗に言うお姫様抱っこ状態で俺に抱えられた。

 そんな状態のラウラは、目をぱちくりさせて俺を見上げると徐々に自分がされているお姫様抱っこの状況に気付いてか――。


「な、な、――ば、バカ、早く降ろせッ!」

「ん。 承りました、お嬢様」


 そう告げてそのまま降ろすと、ラウラが――。


「……し、しまった……。 せ、せっかく嫁がお姫様抱っこしてくれたというのに……はぅ……」


 そんな感じにめちゃくちゃ落ち込むラウラのその姿は、また可愛かったりする。


「……ラウラだけズルい……。 僕だってヒルトに抱き抱えられたいのに……」


 ぶすっと頬を膨らませながらそんなことを小声で告げるシャル。

 ……気にはなるが、とりあえず無力化した三人の様子を見ないと。


「二人とも、あの三人調べるぞ。 ……後は、縛れる物で縛って終わりだ」

「そ、そうだね」

「む。 了解した」


 二人は気絶した手下から武器を奪うと、サブマシンガンからマガジンを抜き取り、明後日の方向へ投げ捨て、ショットガンも奪うと店内奥に置いた。


「……とりあえず弾装等は没収したよ」

「こちらもだ。 サブアームに拳銃でもあるかと思ったのだが拍子抜けだな」

「そうか、なら後はあのリーダーの身体チェックのみだな」


 そう言って壁に叩き付けられたリーダーへと近付くと――。


「……っ。 グゥッ……!」


 そんな呻き声と共に頭を振り、意識の覚醒を促すリーダー。


「意識を取り戻した? こいつ……タフだな、まあ……おじいちゃん直伝とはいえ、まだまだ体重移動も技も完璧じゃなかったからな……」


 そんな静かな呟きも、店内に少し響く――まだ事態は解決してないため、スタッフも客も全員が震えている。


「クッ……こんなガキどもにっ。 ――ふざけるなぁッ!!」


 そんな怒りの声をあげ、予備のハンドガンを取り出す動作に入るが――。


「遅いッ!!」

「なっ――」


 テーブルに置かれた金属製のトレーを手に取り、リーダーの顔面へと投げると軽快な金属音と共にクリティカルヒットしたのか、頭をぐるぐる回しながら白目を向いて完全ダウンした。


「……ったく、大人しくしろよ。 だいたいそんなので人を撃てば更に罪が重くなるだけだってのにさ」


 言ってから握られた拳銃を奪い取ると、ラウラに手渡す。


「ヒルト、念入りに調べて警戒も怠らないでね?」


 そう俺の身を案じるシャルも、警戒を解かずに厳しい表情で気絶したリーダーを見つめていた。


「……武装は奪い取った。 ヒルト、危ないときはこれで黙らせる」

「……出来れば撃つのは最終手段でよろしく」


 渡した拳銃を構えるラウラにそう言うと、静かに頷く。

 リーダーの身体を触り、ポケットから弾装を奪い取って革ジャンを脱がすとそこにはまさかの腹マイトよろしく、プラスチック爆弾が腹巻きの様に巻かれていた。


「ぅおいっ! ……銀行強盗するのに何で腹に爆弾巻いてるんだよ……」

「む。 ……ヒルト、処理はわかるか?」

「……大丈夫、授業の爆弾処理に比べたら子供のおもちゃみたいな出来じゃねぇか――よっと」


 そういって導線、信管と無力化していき、革ジャンに入れていた起爆装置もシャルに渡す。

 ……本当、つい二月までは普通の中学生だったのに、まさか今爆弾解体してるとは夢にも思わなかったよ。

 腹に巻かれた爆弾も没収すると、俺は針金でリーダーの指をキツく縛り上げる。


「む? ……ヒルト、それは何処で教わったのだ?」

「ん? ……あぁ、親父だよ。 こうすればそうそうほどけないし、無理すれば指が切断されるからな」

「成る程、教官からか。 ……私は、教官からはサバイバル技術しか教わっていないからな……」

「……いや、自分の子供にこんなの教える親も大概だと思うがな」


 そんなやり取りを続けて、拘束するとやっと一息つけた。

 静寂が訪れた店内を、恐る恐る頭を上げて様子を確認する店内のスタッフ及び客達。


「お、終わった……?」

「助かったの、私達……」

「い、一体何が……」


 そんな風に口々に告げる人々に、俺は――。


「……シャル、ラウラ。 多分このままだと色々まずいから撤収するぞ。 特に俺がまずい」

「そうだね。 ……僕達の身分がバレちゃうと、色々まずいし、ヒルトなんか……」

「そうだな。 では撤収するとしよう」


 そう結論つけると、俺達は頷き、いち早くその場から撤収した。

 もちろん、スタッフルームに置いた荷物を持ち、執事服も返却してだが――。 
 

 
後書き
結末は一緒

でも犯人はのびてるだけで骨は折られてないという親切設計

でも、衝撃は凄まじかったかもだが(-_- )

批判もあるかもですが、見てくれてありがとうございました

 
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