『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
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隠伏-ひとをかくすなら-
前書き
どうもこんにちは、クソ作者です。
ここからは新章スタート的な感じです。
言うならばお届け編と言ったところでしょうか。
レジスタンス、『セイヴァーオブセイバー』は葛城財団の置鮎部隊によって事実上壊滅させられた。
しかし団長の復讐の炎は消えておらず、表ではレジスタンスは壊滅したことにして裏で英気を養い来るべき時に備えて準備を進めていくとのこと。
そうして俺と武蔵はレジスタンスから抜け、それと同時にあるものを届けるよう『リンドウ急便』として頼まれた。
届けるもの、というよりかは送り届ける人だ。
「ところで大和さん。今まではオロバスという足を使ってここまで来たわけですが、これからどうするおつもりで?」
心を読める男、柏原。
そして
「僕とブーディカ含めて全部で5人。馬一頭じゃそんな大人数運べないだろうし、馬車で引っ張ってもらおうにも一頭じゃ難しいよ。」
まだ子供でありながら謎の力を持ち、かなりの戦闘力を所持している堂本。
そして彼のサーヴァント、ブーディカ。
二人、もとい二人と一騎を連れて俺と武蔵は東京にあるらしい彼らの本拠地、『エインヘリアル』を目指す。
「でも大和さん、これくらいならブーディカさんの戦車で運べるのでは?」
「ああ、それは僕も思ったけど…。」
そういって柏原は俺に疑問をぶつけてくる。
オロバスは、クリスをいち早く病院へ向かわせる為にバーゲストにあげた。
足がない、と言えば嘘になる。
先程柏原が言ったように堂本のサーヴァント、ブーディカの戦車を用いれば5人程度難なく運べる。
しかし俺は断った。
「言わずとも心を読んでいるんだ。お前は分かっているだろう。」
「まぁそうですね。ですがそういって会話を疎かにするのもいいものではありませんよ。これから長い間苦楽を共にする仲。こうして会話を重ねて親睦を深めるのも良い事だと思いませんか?」
……。
まぁ、それもそうだろう。
せっかくだから話すことにする。
「先に言っておくと、ブーディカの戦車を用いて移動することは奴らに読まれている。おそらくルートを算出して罠は張っているだろう。」
「ほう。だから移動には使えないと?」
「ああ。だが"わざと"そう読ませた。」
そうして俺は説明を始める。
実は数日前、俺達は支部を潰している。
全滅はさせない。あえて少し生き残らせ、目撃者を作る。
彼らは見ており、報告するはずだ。
『こちらの支部で襲撃を受けた。
大和と武蔵。2人の人間と一騎のサーヴァントを連れている。
サーヴァントはブーディカ。大和に関してはいつもの馬は連れておらず、移動手段はライダークラスである彼女の持つ乗り物に任せている。』と。
支部を潰す際、俺はわざとブーディカを目立たせた。
背中は俺達に任せてガンガン前に出て欲しい。
そう指示し、奴らの印象に残すために暴れてもらった。
そして逃走時、そこでブーディカの戦車を使った。
だから奴らは考える。
戦車を使って迅速に移動し、次の支部を潰しに来るだろうと。
「私の戦車はあくまでフェイク。そういうことね。」
「ああ。」
しかし現在の俺達の目的は今まで通り支部を潰して回ることじゃなく、彼らを送り届けること。
優先順位がある。これが終わったら後で潰してやるから待っていろ。
「で、どうするんです?」
「そのためにここに来た。」
そうして俺達はある街に着く。
割と発展している、かつての姿を取り戻しつつある街。
その街がここまで発展しているのには、確かな理由がある。
「木を隠すなら森の中、という言葉があるだろう。なら人を隠すなら人の中だ。」
そうして着いたのは、駅。
ここに来た理由は、街の物流を支え、多くの人の足となってきた『列車』があるからだ。
「ほぉ。」
感心したように柏原がそう声を漏らし、何度も頷く。
「成程成程…財団から危険人物扱いされてるあなたがた2人が、まさか列車を使うわけが無いだろうと裏をかいたのですね。」
「それもあるな。」
「武蔵さんは言わずとも理解していたようですね。」
と、俺の後ろで腕組みし、満足気に頷いていた
「当然です。伊達に大和くんのサーヴァント務めてませんから!」
「ほぉ、さすがですね。」(分かってなかったっていうのは言わないことにしておきますか。)
そうして俺達はこの街のホテルに滞在するということは考えず、一番に列車に予約を入れる。
「良かったな。本日中に東京行きのが出る。」
目指すは東京。
エインヘリアルはそこにあるらしい。
「予約は空いてるんですか?」
「ああ、心配ない。」
この崩壊世界にて、列車の旅をする人というのはめっきり少なくなった。
そのため予約はけっこう空いている。
理由としてはサーヴァントの登場により目的地に迅速に行くことが出来る手段が圧倒的に増えた。またライダークラスのものは運行サービスを始めたりなどして列車の需要は崩壊前と比べてかなり少なくなった。
それでも列車を使うものがいるとするならば、それは旅の過程を楽しみたいものかもしくは列車などをこよなく愛する余程のもの好きだろう。
なので、人間サーヴァント含め合計五人くらい、予約当日にでも取れてしまう。
目論見通りというか思った通りというかまだ予約は締切っていない。
そうして受付へと向かおうとした時だ
「…?」
列車の予約チケットの受付の前にて、なにやら言い合っている男女が2人。
背丈の低い少女と見たところ普通の男性…。
おそらくサーヴァントとマスターだろうか。
「別に列車なんて乗らなくてもいいじゃない。僕がその気になれば行きたいところなんてすぐに行けるのに。」
「旅の過程を楽しむのも乙なもんだろ。それに、参考のためにこの列車の中じゃどんな食事が提供されるのかも見てみたいしな。」
「僕はマスターが作ってくれたものならなんだって大歓迎だよ?だからそんな遅い乗り物なんか乗らないでずっと速い僕に任せれば…」
「速いじゃない!速過ぎるんだよお前は!必死にしがみついてるこっちの身にもなってくれ!!振り落とされそうなスリルよりのんびりゆっくり楽しみたいんだよ俺は!」
「大丈夫。落っこちたらちゃんと受け止めるよ。」
「そういう問題じゃないっつってんの!!」
「…すまない、ちょっといいか。」
この言い合い、いつまでも続きそうなので予約が取れないこともあって仲裁に入る。
「なんだい。僕は今マスターと大事なお話をしてるんだ。邪魔しないでくれる?」
その小さい少女…サーヴァントであろう少女は俺を見上げて睨みつけた。
「ああ、悪い。ただここで痴話喧嘩されてはチケットが取れない。やるなら場所を移して欲しい。」
「ほら迷惑になるから行くぞ!あーもうほんとすいません!ウチの子が列車になんか乗りたくないってダダこね始めちゃってもう…。」
「何その言い方!まるで僕が子供みたいじゃないか!!」
「はいはい行きますよー。」
と、サーヴァントの少女はマスターにまるで猫のように抱き抱えられどこかへそそくさと去った。
「……。」
見たことの無いサーヴァントだったな。
早く行けるとかどうとか行っていたが、乗り物の類…おそらくライダークラスのサーヴァントだろうか?
「あの子がどういったサーヴァントか知っているか?」
「私も知らないわ…あんな小さい子…。」
武蔵に聞いても分からないままだった。
何はともあれ、
チケットを購入しよう。
●
俺達が乗り込んだのは寝台特急。
列車の中に宿泊施設や食事を摂れるレストランまで置いてあるというホテルがそのまま移動式になったような夢の列車だ。
過去、いつかそんなものに乗ってみたいなと夢見ていたことはあるが、まさかこういう形で叶うことになるとは思いもしなかった。
「頬が緩んでるけど。嬉しいことでもあった?」
「…現在進行形である。」
と、流れゆく景色を眺めていると武蔵が隣に座ってそう尋ねてくる。
「こういう寝泊まりできる列車に乗るのが子供の頃からの夢だった。それが叶った事だ。それと…」
「それと?」
「だいぶ距離が近くなったなということくらいだ。」
「距離って……っ!?」
武蔵がハッと気付く。
俺の隣に座った彼女。少し前までは隣合うことはあったものの間はあった。
しかし今はその間がない。言ってしまえばほぼ密着と言ってもいいかもしれない。
「は、はははーっ!?何してんのかしらねー私!!!」
「腕を組んでやってもいいぞ。」
「けけけ結構です!!」
そういって部屋を出ていってしまった。
「…。」
「…。」
「…邪魔でしたか?」
「いいや。」
俺と柏原を残して。
「堂本は?」
「堂本くんはブーディカさんと列車の中を歩いてくると行ってました。一応、財団の人間が潜んでいないかチェックしてくる。だそうです。」
「そうか。」
視線を再び窓に移す。
緑豊かな景色が流れ続け、世界崩壊によって生まれた壮大な自然がどこまでも続いている。
建物達は植物にびっしりと覆われ、かつて人々でありふれていた街は誰一人としていない。
生命が居るとすればそれは人間ではなく、モンスターの類。
そんな景色をずっと飽きることなく眺め、俺はまた話を始める。
「この調子だと明日の夕方にはつけるそうだ。」
「そのようですね。何事もなければ、の話ですが。」
「…柏原。フラグという言葉を知ってるか?」
「…ああ、失礼。」
俺の頭を読み取って言いたいことを理解した彼はそう言って口を閉じた。
「帰ったよ。」
「...!」
そうしていると武蔵と入れ替わるようにして堂本とブーディカが帰ってきた。
「様子はどうでした?」
「財団関係の人間はまずいないと思う。不審な動きをしている人はいなかったし、とりあえずは安心していいかも。」
「そうか。」
そう言って俺は立ち上がる。
「どこ行くんですか?」
「少し出る。俺も見て回りたいんだ。」
「ああ、そうでしたか。」
安全なのは分かったので客室から出ることを伝える。
「お前はどうする?」
「いえ、私のことは気にせずどうぞ。ついでに武蔵様のことも探したいのでしたら私などついて行かずあなた一人の方がいいかと。」
「まぁ…そうだな。」
柏原もついてくるかどうかと一応聞いてはみたが、ここで大人しくしているとの事。
安全なことは分かってはいるが一応、念には念の為立てかけてあった刀を手に取り、俺は客室から出て行った。
●
何事もなければいいが。
と柏原は言った。
しかしこの旅もまた万全とはいかないらしい。
簡潔に言おう。
その〝何事〟があった。
とはいっても財団絡みでは無いので心配は無いに等しいのだが…。
「…。」
「どうすんだよこれ…。」
レストランのある車両
何かガヤガヤしていて騒がしいので扉を開けてみると、そこには焦燥しきった表情のコック達がいた。
「…何があった?」
「わっ!ビックリしたぁ…乗客の方でしたか…。」
余程焦っているのだろう。
やってきた俺の事など全く気づかず、彼らはなにか悩んでいた。
「食材搬入の際キッチリ確認しろって言っただろう…!!」
「すいません…忙しくてそこまで気が回らなくって…。」
「あのなぁ…!」
悩んでる、というか揉めている。
ひたすら謝るいかにも新入りなコックに複数人で責めている。
こう言ったことに一般人の俺が首を突っ込むことでは無いと分かりつつも、やはり気になった。
「聞いていいだろうか?」
「ああいや…お客様にこのようなことを言うのは非常に申し訳ないというか…その…。」
目を合わそうとしない彼ら。
何があったのかは、まぁ話している内容から予想はつく。
「発注ミスか。」
「はい…今晩の食材は足りないし…なのに豆腐がバカみたいにあって…。」
届くはずのものが届かなかった。
列車はもう発射してしまったし、今更取りに戻ることは出来ない。
さらに届かないだけではなく余計なものが来てしまう始末。
「こんなに豆腐あってどうすんだ!!乗客の皆様に今晩は冷奴で我慢してくださいって言うつもりかよ!!」
「すいません…本っっ当にすいません…!!」
「すいませんで済むんなら困んねぇよ!!何度目だよお前よぉ!!」
ペコペコと頭を下げまくる新人。
そこで俺は止めに入る。
「待って欲しい。」
「な、なんですか…?」
「あまり責めるな。こうなってしまったものは仕方ない。」
同じミスを繰り返し、そのたびに必死に謝って許しを乞う。
そんな新人を見て過去の自分と重ねてしまいつい庇ってしまった。
「俺の連れに料理の得意なサーヴァントがいる。何か解決の一手になるかもしれない。」
「けど…豆腐ですよ?ディナーは洋風だってもう発表しちゃいましたし…。」
「…。」
豆腐で西洋料理を作れ、と言われても俺は全く分からない。
武蔵に相談したとしても「うどんにすればいいじゃない」と訳の分からんことを言うだろう。
ここは勝手だが、ブーディカを頼ろう。
そう、思った時だ。
「何か騒がしいけど、なんかありました?」
俺と同じように騒ぎを聞きつけ、乗客がレストランにやってきた。
「…!」
しかしやってきたその男の顔、そして連れているサーヴァントに俺は覚えがあった。
「お…そこの方は…。」
「あの時の。どうやら列車に乗ることは許して貰えたらしいな。」
受付前で痴話喧嘩をしていた、あの二人だ。
「ほらお前が騒ぐからお客さんどんどん来ちゃったじゃないか。」
「違いますよ先輩方が怒鳴るから…」
「まーたそういうこと言ってほんと生意気だなお前!!」
「まぁ落ち着け。」
また新人が責められそうになったのでとりあえず仲裁に入って落ち着けさせる。
「んで、見た感じちょっとやそっとの騒動じゃなさそうだけど…」
彼らの焦り具合を見て、この男もまぁ大変なことが起きたのだろうということは察したらしい。
「発注ミスだ。」
「発注ミス?」
「ほかの発注を忘れ、その上豆腐が腐るほどあるらしい。」
「なるほど…発注ミスか…。」
そうすると彼は腕を組んで少し考える。
すると、
「料理長さんは?」
「私ですが…。」
「じゃあ料理長さん。申し訳ないが少し厨房見させてくれ。」
「はい…?」
一応ここで一番偉い料理長に許可を取り厨房へと入っていく。
すかさず冷蔵庫の確認。食材のチェック。
「…そうか。こういう感じか…。」
冷蔵庫の中身を見ながら独り言を呟き、うんうんと頷く。
「乗ってる客数は?」
「まぁ少ないですね…20人ほどでしょうか…?」
「なるほど。」
そして立ち上がり、こういった。
「大丈夫だ。なんとかなる。」
調理師達からはえぇ?と疑問の声。
確かにそうだ。
豆腐でなんとかなるわけがない。
「な、なんとかなるって…どういう事ですか!? 」
「とりあえず解決はする。今晩乗客の皆様は冷奴で我慢してもらうっていう必要はない。」
そうして彼は冷蔵庫からすかさず豆腐を取り出す。
大量の豆腐を開け、大きめなボールに次々と投入していった。
「な、何をするんだ!?」
「まぁ任せなよ。僕のマスターはそこいらの料理人とは格が違うんだ。」
「!?」
凛とした声に一同が振り向く。
するとそこにはその男に同行していた少女、サーヴァントの姿があった。
「き、きみは?」
「マスターと生涯を共にすると誓い合った〝つがい〟ってところかな?」
と、ウインクして舌を出してお茶目な表情をする少女
そのすぐあと「番じゃねーよサーヴァントだよバカ!!」という声が厨房から聞こえてきた。
「ともかく、味は保証するよ。僕のマスターは種火さえ美味しく調理できちゃう最高峰の料理人だからね。」
なんにも知らない料理人たちは「種火…?」「点火用の?」「そんな名前の食材あるのか?」とざわざわ疑問を口にしていたが…
種火とは…まさか?いやまさかな。
「ランスロットー!!少し手伝ってくれー!!」
「はーい。今行くよー。」
そうしてランスロットと呼ばれた少女は厨房へと駆けていく。
そのあと料理人たちも呼ばれ、各々のポジションについて作業を始めた。
どうやら食材の問題は無事に解決したらしい。
「…。」
ところで待て。
今、あの男は少女の名前をなんと呼んだ?
「ランス…ロット?」
●
夕刻
夕食は洋風のものを出すと言っていたがそれは破られることは無かった。
「豊富なメニューは出せない。だから今日はこれで勘弁してくれ。」
席に着くと出されたのはハンバーグだ。
「あの豆腐から作ったのか?」
「まぁな。豆腐ハンバーグってあるだろ?カロリー控えて女性でも美味しく食べられるってヤツ。腐るほどあるって言うから惜しみなく使わせてもらった。」
そうか。
挽肉が足りなくとも大半を豆腐で補える豆腐ハンバーグならなんとかなる。
野菜はとりあえずあったので付け合せも完璧。
野菜の切りくずから出汁を取ったスープも付いていてさらには可愛らしい丸いパン、ブールもある
パッと見西洋料理店で出されるハンバーグのセットとそう変わらないものだろう。
さらに、ハンバーグにはもうひと工夫施してあった。
「歯応えがあるのね…もしかしてこれ…蓮根入ってるのかしら?」
「正解。」
中に固めの歯応えがあるものが入ってる。
ブーディカはそれを見事に当ててみせ、作った本人は嬉しそうだった。
「刻んだ蓮根を混ぜ込んだんだ。歯応えのあるものはよく噛む。よく噛めば満腹感が得られる。限られた食材で腹いっぱいになってもらう為、ちょっと細工をしたんだ。」
「すごいのね…あとはうどんとかあれば文句な…」
「武蔵。」
うどんがあればいいのにとねだるので止めさせる。
「うどんか…?小麦粉は無いが米粉はある…作れるかもしれない…。」
後で聞いたが小麦粉と米粉を間違えて発注したらしい。
そこでさらに彼はひと工夫。米粉を使ってパンを作ったのだ。
ところであの新人…また怒られてなければいいが…。
「少してんやわんやしたが、まぁこうやってたくさんの人が笑って食べてくれる。これ以上嬉しいもんはないさ。」
そう言い、厨房の窮地を救った彼は周りのテーブルを見やる。
家族や旅の者、俺たちのようにサーヴァントを連れているマスター。
彼らは皆文句を言うことなく、それどころか美味しいと言って喜んで口に運んでいた。
「誰も皆、不満に思ってなどいませんね。」
「お前がそう言うのなら、本当にそうなのだろうな。」
柏原がそう言っているんだ。皆心の底から美味しいと感じてくれている証拠だ。
「っしゃ!じゃあ明日はお客様のリクエストに答えてうどんにでもするか!!」
「ほんと!?ありがとう名も知らぬさすらいの料理人さん!!」
「どうも」と彼は武蔵に礼を言うと、俺に目を合わせ手を差し伸べる。
「…?」
「悠里。龍 悠里だ。マスター同士ここで会ったのも何かの縁だろ?自己紹介しておこうって思ってな。」
「そうか。」
出された手を握り、握手を交わす。
「竜胆 大和だ。武蔵のマスターでモノを問わず届ける仕事をしている。」
「運び屋さんか。俺はまぁ…そこの武蔵さんが言った通りさすらいの料理人…かな?」
と、自分で言ったのが照れ臭くなったのか恥ずかし紛れに後頭部をかいた。
「んで、コイツが俺のサーヴァント。ランスロットだ。」
「マスターのつがいのランスロットだ。よろしく。」
と、彼の後ろからひょっこり出てきた少女。
名前は…確かにランスロットと言った。
「だから、番じゃねーっての!」
「いたっ。」
軽くチョップで叩かれるも、満更でもなさそうだった。
「…妖精騎士?」
「お、正解。お連れのブーディカさん、結構勘が鋭いね。」
ランスロット。
その名前で俺と武蔵の表情が少し強ばったのを感じたのだろう。
ブーディカが話を変えた。
「にしても妖精騎士を知ってるってことは…?」
「昔居たところに妖精騎士がいたの。とても力持ちで、とてもお料理上手で、とても優しい大きな妖精さんがね。その人から妖精騎士って概念は聞いてたから。」
と、どこか懐かしむように話すブーディカ。
「大きくて強い、お料理上手…バーゲストの事だね。まぁいかにも、僕は妖精騎士だよ。しかもランスロットの名を賜った最強の妖精騎士さ。」
最強…か。
あいつが聞いたら黙っていないだろうなと考えてしまう。
それにランスロットの名を冠しているのなら尚更だ。
おそらく見つかれば、俺と武蔵の如くしつこく追い回されてしまうだろう…。
「どうしたんだい?2人して難しい顔して。もしかして〝ランスロット〟っていう名前にいい思い出なかったり?」
と考えていると、ランスロットが芯をついてきた。
2人とは無論、俺と武蔵だ。
「まぁ…そうね。ランスロットにはほんとにいい思い出ないって言うか…。」
「旅の途中、何度もぶつかった…いや、しつこく追いかけてきたな。」
「ははっ、なにそれ!最近のランスロットってストーカー気質なの?」
おかしく笑うランスロット。
そうしていると俺たちの話にマスターの悠里も興味を持ち始めたのだろう。
「なんか面白そうだな…運び屋ってことは色んな出会いとか経験とかあったんだろ?」
「まぁ、ある。」
「下準備を終わらせたらアンタ達の部屋に行って話を聞きたいんだが…いいか?」
ここは列車の中。
別に急ぐこともない。
そんな彼に対して俺は頷いた。
「ありがとう。後で部屋番教えてくれ。秒で終わらせてすぐ行くからさ。」
「俺のサーヴァントのワガママを聞いてくれたんだ。それくらいの礼で済むならいくらでも話そう。」
と、ワガママな献立をリクエストした武蔵を横目で見ながらそう答えた。
後書き
かいさつ(列車に乗った話なのでそれにちなんだ激うまギャグ)
●ランスロットのマスター
龍 悠里(りょう ゆうり)
さすらいの料理人。
料理に関しては天賦の才があり、少ない食材や限られたものでも絶品の料理を作り出せるまさに厨房の錬金術師。
たまたまこの列車に乗り込んでおり、乗客のディナーの危機を救った。
サーヴァントは妖精騎士ランスロット。
かなりマスターに惚れ込んでおり隙あらば周囲に番アピールをかましてくるドラゴン。
最強を自称しており、その強さは生半可なものでは無く、葛城財団やそんじょそこらのサーヴァント数騎程度簡単に蹴散らしてくれる。
ちなみに夜も最強種の名に恥じないくらい凄いらしい。知らんけど。
ちなみにこの後、彼は種火の島に行ったり探偵のいる町を訪れたりするらしい…。
お察しの方もいるかもしれないが実はこの二人、他の作者様のキャラクター。
二人の関係が絶妙すぎて好きになっちゃってどうしても出したかった。
ランスロットも好きになっちゃってこの前クソ作者ガチャ回しちゃった♡
出なかった…。
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