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『外伝:紫』崩壊した世界で紫式部が来てくれたけどなにか違う

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あるところに少年がいました。
まだ年端もいかない、小学校に元気よく通う少年。

兄がいて、両親がいて、祖父母がいて、

どこにでもあるような普通の家庭に生まれた普通の子。

少年はそんな普通の家族が大好きでしたし、こんな普通の日常も大好きでした。

朝起きて、学校に行き、勉強して、友達と遊んで、家に帰って、皆でごはんを食べて、兄に宿題を手伝ってもらい、最後にホットミルクを飲んで明日は何があるだろうとわくわくしながら眠りにつく。

こんな毎日が、ずっとずっと続くんだろうなぁと少年は思いました。

でも、そんな当たり前の日常は、来なかったのです。

世界が滅ぶ。
漫画やアニメでしか聞いたことがない言葉。
それが、今この現実で起きたのでした。

崩壊の始まり、
そのとき少年は学校にいました。


学校が崩れてしまうんじゃないかと思うくらいのとてつもない地震が起き、机の下で必死に怖さを耐え抜き、少年は他のクラスの子達と一緒に、先生の指示に従ってグラウンドへと集まります。

入学したての1年生達も、1番上の6年生達も皆、不安そうな顔をしていたり泣いたりしている人もいました。

自分も泣きたくなりそうなくらい怖かったけど、いつも兄からは強い子は泣かないぞと教わっているのでここはグッとこらえました。

学生達は皆綺麗に並んで座っている中、前の方では先生達が集まって難しい話をしています。

その時でした。

ガシャーンという大きな音がしたかと思うと、なにかの鳴き声が。

その正体は化け物。
見た目はたてがみがあってライオンのようだけど、身体の大きさは全然違います。
動物園で見たライオンよりもずっと大きい身体をしていました。

そいつらが校門を破壊し、学校内に入ってきたのです。

先生達がさすまたで戦います。
しかし、そのライオンのような化け物はとても早く、そしてとても強い化け物でした。

体育の先生がさすまたを構えるよりも早く、その前足を振るって先生の頭を飛ばしました。

頭がなくなり、力無く倒れる先生。

べしゃっ、という音と共に、離れた場所に先生の頭が落ちます。
怒っているような、びっくりしているような、
おそらく、何が起きたのかわかっていない顔をしていました。

そこからは生徒達は悲鳴をあげ、蜘蛛の子を散らすように逃げます。

ライオンの化け物は狩りを始めます。
逃げ回る生徒達を爪で引っ掻いたり、頭から豪快にかぶりついたり。

当然、ライオンの化け物は1匹ではありません。
後からやってきた仲間は生徒も、先生も、ここにいる人間達を全員狩り尽くします。

怖い先生も、優しい先生も、
お調子者なあの子や悪ガキのいじめっ子も、
みんなみんな平等にライオンの化け物のご飯になります。

少年も必死に逃げ回りました。
でも、あまり足は早くありません。
化け物がこちらに向かって走ってきます。

こわい。やられる。死んじゃう。
頭の中が真っ白になって、それから目の前が凄くゆっくりになります。

あんぐりと口を開け、迫る化け物。
できることはありません。
ただ頭を覆ってしゃがむことくらいです。

もうだめだ。死んじゃうんだ。

そう、思った時でした。

「!!」

手を掴まれ、横からすごい力で引っ張られます。
慌てて顔を上げると、そこにはとてもよく知る顔が。

「…お兄ちゃん!!」


それは兄でした。
なんと弟のピンチに駆けつけてきてくれたのです。

「お兄ちゃん…が、学校が…みんなが…!」
「もう大丈夫だ。後は鈴鹿が何とかしてくれる。」

お兄ちゃんが助けに来てくれて涙が出そうになりました。
すると、あの化け物が鳴き声を上げて倒れていきました。

お兄ちゃんがやっつけたのか?
そう思いましたが実際は違うようです。

「マスター!!」
「大丈夫だ!こっちの事は気にせずウガルを倒してくれ!!」
「はーい。かしこまり!!」

兄と仲良さそうに話すのは女の人。
見たことの無い女の人でした。
その人が刀で次々とウガルと呼ばれたライオンの化け物を簡単に斬ってやっつけていきます。

あとから聞きましたが、女の人の名前は『鈴鹿御前』と言いました。

お兄さんとはとても仲の良い、ぶっちゃけバカップルみたいなカンジと言われました。

他にもなんかよくわからないことを言っていて理解できませんでしたがとりあえず、兄とはとても仲が良いことが分かりました。


しかし世界が崩壊した今、起きるのはいいことばかりではありませんでした。


お仕事に出かけたお父さん、お母さんは電話が繋がりません。
そして家にいたおじいちゃん、おばあちゃんは

「おじいちゃん。おばあちゃん。おきて、おきてよ。」

血まみれになって動かなくなっていました。

おそらく化け物に襲われたのでしょう。


崩壊した世界は手始めに、祖父母を奪いました。

少年は泣きました。
それはもう、とても泣きました。
何かあるとそれは大変だったわねと優しかったおばあちゃん、気前が良くて、隙あらばお小遣いをくれたおじいちゃん

2人はもう、動きません。
前のようにお話をすることもできません。
兄は悔しそうにしていて、鈴鹿御前はもっと早く来れていればと言っていました。

それから兄は、両親の安否を知るために頑張ります。
母がパートで働いてる隣町のスーパーまで行きました。

ひどいものでした。
お店の中は荒れ放題。
食べ物と呼べるものは軒並みなくなっていて、たくさんの動かなくなった店員さんが転がっていました。

もちろんその中に、お母さんはいました。
弟を一人にさせる訳には行かないと、兄はここまで少年を連れてきてしまっていました。
連れてこなければよかったと、後悔しました。
だってそうしていれば、肉親の死を目の当たりにしなかったのですから。


次はお父さんです。
生きていて欲しいと願いながら、お兄さんと鈴鹿御前、少年は歩きました。

お父さんの仕事場は電車を使って行くところです。
しかし電車が使えない今、歩くしかありません。
とても、とても長い道のりでした。
足が痛くなるくらい、険しい道のりでした。
大丈夫?とかおぶろうか?とか兄と鈴鹿御前が心配してくれましたが辛いのはみんな一緒。
少年は気持ちだけ受け取っておくことにしました。

そうして半日くらいして、お父さんの会社に到着。
しかしビルはボロボロ、とても心配です。

これからさぁ、探すぞと兄は意気込みます。

しかし、少年はあるものに目が行きました。

ビルの少し離れたところに積まれているもの。
化け物のフンです。
時間も経って匂いは薄くなっていますが、ハエが集っています。
少年は何故かそんなものに、目がいってしまいました。

だって、あるものを見つけたから。

汚いからやめなと兄に怒られましたが、それでもフンの中にある〝あるもの〟に手を伸ばします。

それは、お父さんの写真。
お父さんの社員証でした。
ボロボロでかなり汚れていましたが、それは確かにお父さんのものでした。

お父さんの身につけていたものが、化け物のフンから見つかった。

どういうことかは、子供でも分かります。

「お父さん…たべられちゃったんだ…。」

泣きそうな声で、絞るように、確認するように少年はそう言いました。

そうです。
お父さんはとっくのとうに化け物に食べられていたのです。
祖父母や母のように死体はなく、ただ、社員証だけ。
兄も鈴鹿御前も、少年も感情がぐちゃぐちゃになりました。

空に向かって叫ぶ兄。
悪くないのに「ごめん、ごめん」と繰り返し呟く鈴鹿御前。

そうしてこの崩壊世界は、
少年から祖父母と両親を奪ったのでした。






世界は滅び、家族を失い、
唯一の肉親の兄だけは絶対にもういなくなって欲しくないと少年は心の底から望みました。

どこかへ行かないで。
一人ぼっちにしないで。

共に旅をする中で、仲良くなった鈴鹿お姉ちゃんも、いつのまにか大事な家族の一員です。

お姉ちゃんにも、お兄ちゃんにも、死んで欲しくありません。

それからは、
安全な場所を求めて、3人で色んな場所を旅しました。
兄は山登りが大好きです。
旅をしながら色んな山に登り、頂上の写真を撮ります。

写真係は鈴鹿お姉ちゃん。
みんなで身を寄せて携帯で撮ります。
山に登るのは決して楽では無いけど、登りきったあとの達成感は何にも変えられないとても素晴らしいものです。

辛いことも、苦しいことも、
お兄ちゃんとお姉ちゃんがいれば全然平気でした。

でも、
崩壊したこの世界は、少年に対して思っていたより意地悪でした。






次に取り上げられたのは、






兄でした。






唯一の肉親。お兄ちゃん。
彼は、弟と鈴鹿お姉ちゃんを守るために悪い人と一緒に死にました。

その時兄は、鈴鹿お姉ちゃんに託したのです。
立派になるまで、見守ってやって欲しいと。

最初は嘘をつき合って誤魔化していた2人だけど、沢山色々なことがあって、兄の死に向き直って、少年と鈴鹿お姉ちゃんはもっと仲良しになりました。

本当の家族ではないけど、鈴鹿お姉ちゃんは自分のかけがえのないお姉ちゃんです。
それから旅を続けていくうちに、少年にはある気持ちが芽生えます。

お姉ちゃんはもう、失いたくない。
失わないためにはどうすればいいか?

それは、守ればいい。

でも守るためにはどうすればいいか?
それは……強くならないといけない。


そう思いながら何とかしなければと四苦八苦悩みますが、今日明日でお姉ちゃんを守れるくらい強くはなれません。

頑張って筋トレもしてみましたが、やっぱり長続きしないし、お姉ちゃんにどうしたの?と心配な顔をされます。

強くなるためと返せば、私が守るから大丈夫だよと決まった答えが返ってきます。

違うんです。
自分を守るために強くなるんじゃないです。
お姉ちゃんを、唯一の家族であるお姉ちゃんを失いたくないから強くなりたいんです。

いなくならない、といつも言っているけどやっぱり胸の中の不安は晴れません。

そんな時に、転機が訪れます。




旅の途中でした。
お姉ちゃんが、レジスタンスという集まりに勧誘されました。

レジスタンスというのは悪い組織に立ち向かうカッコイイ正義の軍団のこと。

リーダーの人がそうわかりやすく説明してくれました。


2人で行動するよりもこうして拠点を持ち、安定した衣食住が得られる場所で暮らした方が少年にもいいだろうと考えた鈴鹿お姉ちゃんは即決断。

レジスタンスに入団したのでした。

鈴鹿お姉ちゃんはとってもよく働きました。
近くの化け物をやっつけたり、食料などの物資の運搬の護衛もやってみせたり、

マスターは子供だがサーヴァントはかなりデキると言われていましたがこれに対して少年はあまりいい顔をしませんでした。

そこから、少年は努力しました。
強くなるためにみんなと一緒に木刀を素振りしたり、筋トレに勤しんでみたり、身体を強くするためにいつもより多く食べてみたりと色々頑張りますがなかなか強くなれません。

でも、そんな少年をレジスタンスのみんなはとても優しい目で見ていました。

カッコイイことが大好きなリーダー。
言葉ひとつでみんなをまとめられる自称騎士団長

無免許だけどとっても優しいお医者さん。
沢山食べると遠慮せずにもっと食べなさいとおかわりをくれる大きなお姉さん。

ずっと無表情だけど自分に小さい木刀を渡してくれたり何かと気にかけてくれた優しい白髪のお兄さん
その白髪のお兄さんとお似合いな、とっても強い白髪のお姉さん

いつも一人だから一緒にご飯を食べる初めてここで出来たお友達。
そんな彼といつも一緒に居てくれてありがとねと言ってくれる赤い髪のお料理当番のお姉さん

心が読める変なおじさん

他にも、人間サーヴァント問わず優しくしてくれた人はたくさんいます。
みんな仲良くて、みんなが家族みたいでした。
少年にとってそこは第二の家。とても暖かくて安心出来るところでした。





でも、

やっぱり、

崩壊したこの世界は彼からまた大事なものを取り上げたのでした。





レジスタンスはある日、めちゃくちゃにされました。
リーダーいわくこの世で1番極悪でカッコ悪い集団、『葛城財団』によって。

家族はみんなやられました。
鉄砲で撃たれたり、変な女の人が叫びながら突っ込んで来て爆発したり、

大人も、子供も、
優しくしてくれた人も、一緒に遊んでくれた人も。

少年が家族を奪われたのは、
これで2回目でした。

このままではいけません。
だから少年と鈴鹿お姉ちゃんはこれ以上殺されない為に自ら人質になる事を選びました。

しかし、攻撃は止まりません。
さらにあろうことか、お姉ちゃんは乱暴されてしまいます。

自分は頭を押さえ付けられ、お姉ちゃんが服を破られ乱暴されるのを無理矢理見せつけられます。

鈴鹿お姉ちゃんはずっと叫んでいました。

「やめろ」「約束が違う」「絶対許さない」「この子には絶対に手を出すな」「もし指一本でも触れたらその粗末なものを噛みちぎってやる。」

そうして反抗する度に、お姉ちゃんは酷いことをされます。
頬だってたくさん叩かれましたし、グーで殴られたりもしました。

「やめて」と、少年も必死に叫びました。
でも、ダメでした。

それから少年は、殺されそうになりました。

外に出され、騎士団長とリーダーが見ているところで射殺される。

銃を向けられるのはとても怖いです。
でも、少年は勇気を振り絞りました。
心を奮い立たせ、すくむ足を無理矢理動かし

ここぞと言う時に隠し持っていたナイフをかまえ、彼はいちばん偉そうな白いスーツを着た悪い奴目掛けて真っ直ぐ走り出したのです。

慢心しきっていた悪者の腰に、ナイフがぞぶりと突き刺さりました。

振り返る悪者。
段々と赤く染まるスーツを見て、悪者は何が起きたのか理解し始めます。

痛みのあまり倒れ、じたばたともがき始める悪者。

やった。
やったんだ。
悪者を倒しました。
少年は鈴鹿お姉ちゃんを守ったのです。

これでおしまい。
かつての平穏を取り戻し、2人は今度こそ幸せに暮らせます。


そう、思ってました。

この崩壊世界はやはり、彼には優しくしてくれないようです。

「……?」

パン、という空気を裂く音。
後ろから少し押されたような感覚を覚え、何が起きたのだろうと思えば、突然倒れてしまいます。

身体が動きません。
胸がものすごく痛いです。
自分の周りが血で真っ赤になります。

少年は撃たれました。
後ろから一発。
それから頭を踏みつけられるけど、不思議と痛くありません。
鈴鹿お姉ちゃんが必死に何かを叫んでいるのに、よく聞こえません。
感覚が無くなっていく。それどころか寒くなってきました。
目の前もだんだん照明が薄くなっていくように真っ暗になっていきます。


最後に少年が見た光景は、
自分と同じように鉄砲で撃たれた鈴鹿お姉ちゃんの姿でした。


少年は幼いながらも悟りました。

ああ、これが〝死ぬ〟ってことなんだと。
天国に行けるかな?
天国には、おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも、お兄ちゃんだって待っているのかな?

きっと大丈夫だ。
みんないい人だったし、きっとレジスタンスのみんなも天国にいます。

それに、
鈴鹿お姉ちゃんだって、絶対一緒に来てくれるでしょう。

少年はそう思い、ゆっくりと目を閉じました。





しかし何度も言うように、

この崩壊世界は、

少年に優しくなんてしないのです。








「…!」

目が覚めたのは、知らない場所でした。

しかし身体は動きません。
よく見たら紐でぐるぐる巻きにされ、椅子に縛り付けられてしまっています。

辺りを見渡すと、こちらをにやにやしながら見ているあの悪者、葛城財団の人達がいました。

「お、目ェ覚ましたで。」
「きんもっ…。」

ヘラヘラと笑いながら自分を見ている彼ら。
それから少し離れた場所には

「まったくもうダーリンってばぁ♡テクヤバすぎ…私もう5回もイッてるし…♡」
「へへっ、感じやすいクソマンコだな。だけど具合は良い。最高の締まりだ。ガキがこんなマンコ連れるのは勿体ねぇな。」

鈴鹿お姉ちゃんと、すごく太ったすごく汚いおじさんがベッドの上でその身を重ねあっていました。

何をしているかは、少年でも分かります。
こういったことはとても仲のいい2人がやるものだよと教わりました。

でも、
お姉ちゃんはこんな汚いおじさんと仲良しだったでしょうか?
少年が知る限り、覚えはありません。

「おおおおおおイクッ!!俺様の特濃精子!てめぇのマンコにぶち込んでやっからなぁ!!ありがたく思えよ!!」

汚いおじさんが腰を小刻みに動かします。

パンパンパンという肉のぶつかり合う音。

聞きたくありません。
見たくもありません。

お姉ちゃんのこんな姿、一瞬も見たくありません。
しかし、


「逸らしちゃメー的な。冥土の土産なんだからちゃんと見ろよガキ、」

悪者に顔を抑えられ、瞼をグッと強引に開かれます。

「しっかし丹下はんもわっっるい事考えるで!!わざわざ生かして連れてこいって言うから何しはるんやろと思えば、マスターの目の前で犯させるとは恐れ入りますわなァ!!」
「つーかまじキモ。」

ゲラゲラ笑う悪者達。
うるさい汚いおじさん。

とても気持ちよさそうにしているお姉ちゃん。

そして、

「あぁっ!!イクっ!!」

腰をうちつけていた汚いおじさんの動きが止まります。
鈴鹿お姉ちゃんが痙攣し、犬みたいに舌を垂らしながら気持ちよさそうに身体を逸らし聞いたこともない声を上げています。

これでもう、

鈴鹿お姉ちゃんは少年のものではなくなりました。

今日から鈴鹿お姉ちゃんは

「おい。出されたらなんて言うんだ?」
「ありがたき幸せって言うの?マジ感謝だし。ダーリン♡」

汚いおじさんのモノです。

引き抜かれる汚物。
汚いおじさんはふぅ…と息をつきベッドの縁に腰掛けます。

「……。」
「…へっ、そうだったな。」

ここで初めて、汚いおじさんと目が合います。


「おいクソマンコ。」
「なぁに?ダーリン。」
「あいつ殺せ。」

こちらを指さす汚いおじさん。
鈴鹿お姉ちゃんは、鈴鹿御前という名前があります。
そんな名前じゃありません。

それにお姉ちゃんは、

「あぁ、あのクソガキ?」

自分の、唯一の、
兄から託された大切な…いえ、それ以上に大好きな


「ホントウザくてしょうがなかったんだよね〜。マスター鞍替えしてマジ大正解。」



家族。




「おねえ…ちゃん?」

裸のまま、こちらに歩いてくるお姉ちゃん。
その手には刀。
たくさんの化け物と悪者を倒してきた刀が握られてます。

「何その目…私に期待されても困るんだけど…ってかマジでウザいし。」

縄を切ってくれるのかな?
しかし、その目はとても冷たくて、何か嫌なものでも見るかのような目で。

「じゃあね。アンタとの毎日は死ぬほどつまんなかったよ。最低最悪、クソみたいな〝元〟マスター。」


刀を、少年目掛け振り下ろしました。








ぼくは、しんだ。

お姉ちゃんにきられて、しんだ。

おとうさん、
おかあさん、
おじいちゃん、
おばあちゃん、
おにいちゃん、

みんなしんで、ぼくもしんで、すずかお姉ちゃんはおかしくなった。

いやな言葉をたくさんぶつけてきた。
いつも人をきずつけることを言ったらだめだよ。っておしえてくれるのに。

ころされた。
ぼくは、お姉ちゃんに、ころされた。

よくわからない。
あたまがぐちゃぐちゃになる。

でも、
一こだけ分かる。

ゆるさない。

ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない、
ゆるさない、ゆるさない、

ぜったいにゆるさない。

お姉ちゃんをゆるさないわけじゃない。
そうじゃないけど、ちがう。

わるものは当ぜんゆるさない。
ばけものもゆるさない

いろいろゆるさない。
ぜんぶゆるさない。

このせかいを、ゆるさない。


しんだぼくは、ゴミとしてすてられた。
海にながれ、やがて身体をなくした僕はどこかへ流れていく

たくさんの子たちに会った。
ぼくと同い年くらいの子、年上の子、

みんな、みんないっていた。

〝おとうさん、おかあさんはどこ?〟
〝さみしい〟
〝さむい〟
〝あつい〟
〝いたい〟
〝たすけて〟
〝だれかきて〟

一人ぼっちはいやだ。
そういって、ぼくはみんなとひとつになっていく。

みんなとひとつになるたび、気持ちが大きくなる。

〝ゆるさない〟

〝このせかいを、ゆるさない〟

〝ゆるさない、だから…〟




〝なにもかも、ぜんぶ〟

〝こわしてしまえ〟

〝ぜんぶ、こわしてしまえ〟


























「……?」
「おや、どうしました真誉殿。」
「ん。見て道満」


お姉さんは、だれ?
ぼくが見えるの?

「うん。見えるよ。」

お姉さんが僕を覗き込む。
あとからやってきた大きなあやしそうな人もぼくを見てくる。

「これはこれは、怨恨の塊のようなものですな…。」
「れんこん?」
「怨恨ですぞ真誉殿。」

首をかしげるおねえさん。
あやしそうな人はにんまりと笑うと

「複数の子供の霊の集合体…霊脈を辿り同じ子供の魂をかき集めたか。…ンン。」
「道満?独り言?」
「これは、良いものかもしれませぬ。」

おなじようにしゃがむと、ぼくに手をのばしてきた

〝たすけてくれるの?〟

「ええ、助けましょう。拙僧の手を取ってくだされ。」

手をのばす。
大きな手に、自分の手をかさねる。

すると、ふしぎと力がわいてきた。

「世界を…壊したいのでしょう?」

そうだ。
ぼくはこわしたい。
このせかいを、

ぼくからなにもかもをうばった、
このせかいを…!!

「許さない。その気持ちは大事ですぞ。絆される事など有り得ぬ程の意思、消して許さぬという怨嗟の炎を常に抱き続ければいずれ願いはかないましょう。」

かなう。
ねがい、ゆるさない、こわしてしまえ、

きもちがおおきくなる。
〝みんな〟がさけぶ

ゆるさない、ぜったいにゆるさない。
おとうさん、おかあさんをかえせ

もっと生きたかった。
なのにそれをゆるさなかったのは、このせかいだ。

ゆるさない、
こわしてやる。
のろってやる。

「ンンンンンンン!!!そうですそうです!呪いましょう!!この世の全てを!!いや!この崩壊世界そのものを!!呪いを撒き散らしましょう!!」


ゆるさない、ゆるさない、ゆるさない、
ゆるしてなるものか
この思いが晴れるまで、
このせかいをこわすまで、
のろいはとまらない。


「わぁ、すごーい。」

拍手をするお姉さん。
あやしそうな人はずっと笑っている。

「優しいねぇ道満。」
「道端に倒れている幼き魂を救わずして何が陰陽師か。さて、まずはこの子を育てましょう。」


それから

「横須賀の孤児院から連れてきた子供達です。さぁ、威勢よく食べると良いでしょう。」

「よく食べよく育つ。その程度では世界は呪えぬ。さぁ、どんどん食べなされ!!」

「そなたと同じく、霊脈を伝って流れてきた魂の残滓、人だろうが英霊だろうがそれすらも喰らい尽くす!ンンンン!なんたる悪食!!」

ぼくのうらみはどんどん大きくなる。
新しい子をなかまにいれて、もっと大きくなる。

「新しい子来たよー。はいどーぞ。」
「さすがは真誉殿。拙僧が何も言わずとも集めてくるとは気が利きますなァ。」

しにたくない
たすけて

そんな声が聞こえてきた気もしたけど、そんなのしらない。

ぼくはこのせかいをゆるさないのだから。
こわすのだから。

ぼくは…ぼくは……




〝?〟


ぼくは……だれ?
ぼくって、なんだったっけ?

わかんないや。
わすれちゃったかもしれないし、そもそもぼくはなんでもないのかもしれない。

ぼくはのろいをまきちらすもの。

すべてのこどものうらみを、のろいにしてかえすもの。

このせかいを、こわすもの。


そうだ。
このせかいのなにもかも……



〝ぜんぶ、こわしてしまえ〟


 
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