IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第301話】
時間というものはあっという間に過ぎていき、気がつけば今日は学園祭当日。
基本、一般開放はしていないため来賓の人などは生徒が中の良い友達や親に配った招待券、他だと各国のVIP、IS関連企業の方々等がメインだ。
そんな来賓客でも構わず、IS学園女子生徒達の弾けっぷりは凄まじく、朝からハイテンション――その一部が此方。
「嘘!? 一組であの織斑くんの接待が受けられるの!?」
「しかも執事の燕尾服!」
「それだけじゃなくてゲームもあるらしいわよ?」
「しかも勝ったら写真を撮ってくれるんだって! ツーショットよ、ツーショット! これは行かない手はないわね!」
――とのこと。
因みにこれ等の会話は全部列に並んだ子(IS学園生徒)の話だ。
「有坂ー、これ運んどいて~」
そう言って中身の詰まった段ボール箱を押し付けられ、俺はそれを運んでいく。
悲しいかな、やはり女尊男卑な世界のため、雑用が回される俺――因みに一夏は、朝から引っ張りだこ状態で教室内のテーブルを行ったり来たり――。
とりあえず荷物を運び終えると――。
「ヒルト、お疲れ様。 ……ごめんね、僕も手伝えたら――あっ、いらっしゃいませ♪ 此方へどうぞ、お嬢様♪」
労いの言葉をかけてくれたシャルだが、直ぐに客が来るのであわただしく接客へと戻っていく。
今回のご奉仕喫茶接客担当は一夏、セシリア、シャル、ラウラ、篠ノ之、美冬、未来、鷹月さんに俺。
……篠ノ之が接客とか想像出来ないが、まあそれでもあの【篠ノ之束の妹】が接客するのだからそれを利用しない手はないと、雑務班(主に外でビラを配る班)が――。
『あの篠ノ之束の妹のご奉仕を受けられるのは今日だけ!』
――と、大々的にビラに書いたのを配布して回ってるから多分その辺り目当ての人も来るだろう。
ビラは来店前の雑務班が回収する為(ビラがゴミになると景観が悪化する為、基本回収)、本人には絶対ばれないという念の入れよう――まあバレたら楽しい学園祭が、あいつ一人の為に中止になりかねないから仕方ないが。
そんな篠ノ之だが、接客するには仏頂面だし、一夏の順番を訊かれる度にイライラを隠さないという――。
まあ、それをこみで、やはり篠ノ之束の妹の接客が受けられるからか、客層から不満は出てない――それでいいのか、IS学園生徒諸君。
……まあ、不満でないのも、やはり篠ノ之束の妹に取り入ればー的な下心があるのかも。
――と、まあ篠ノ之の事はその辺に捨て置き、他のクラスメイトは大きく分けると二班にわかれる。
一つは調理班――まあメイド喫茶で出すメニューを作る係りだが、これに関しては特別難しいメニューはない――それどころか、冷やしたポッキーを出すという手抜きさ――。
まあこれには理由があるので追々説明するとして次は雑務全般。
皆が皆、メイド服に袖を通して外でビラを配る班、切れた食材の補充班(これには俺も駆り出される)、そしてテーブル整理、最後に大変なのが廊下の列を整理しているスタッフだ。
「はーい、此方二時間待ちでーす」
「ええ、大丈夫です。 学園祭が終わるまでは開店してますから」
……この通り待ち時間に対する苦情に対応していて、一応一時間毎に交代する形をとってはいるが、精神的に参りそうなぐらい忙しそうに動いては謝罪をしている。
……まあ、その原因となった当の本人はというと――。
「じゃーんけーん……ホイッ!」
「あーん、負けたぁ……。 ツーショット写真がぁ……」
――と、ツーショット写真をかけたじゃんけんをしている。
一夏が勝ったため、勿論あの子はツーショット写真は撮れず仕舞い、哀れ……。
……まあ、また並べば良いんだけど、列の並びがあり得ない長さになってるから多分諦めた方が無難だな、うん。
「ヒルトさん、ネクタイが曲がってますわよ?」
「ん? ……あら、ちゃんと締めたんだけどなぁ……」
そう言ってネクタイをほどき、再度結び直そうとするのだが――。
「あ、お待ちくださいな。 ……わ、わたくしがネクタイを締め直しますわ」
「ん? ……そっか、悪いなセシリア」
「い、いいえ……。 うふふ……♪」
嬉しそうな笑顔でネクタイを締めてくれるセシリア――と。
「……セシリアズルい。 僕だって締め直してあげたいのに……」
「あら? 今回は早い者勝ちですわよ、シャルロットさん?」
軽く頬を膨らませたシャルは接客を終えて真っ直ぐに俺とセシリアの元に来た。
「……ヒルトさん、これで大丈夫ですわよ?」
「ん? シャル、どうだ? ちゃんと締まってるか?」
「……す、少しずれてるかも? だ、だからやり直さないといけないよね!?」
見た感じだとセシリアがちゃんと締め直してくれたと思うのだが……。
だが、下手に断るとシャルの機嫌も悪くなるし……。
「わ、わかったから。 ……じゃあ、頼むよシャル。 セシリア、せっかく締め直してくれたのにごめん」
「はぁっ……ヒルトさんは優しすぎますわ……。 き、嫌いではありませんけど……」
そう頬を赤く染めたセシリアだったが、客が来たため接客へと戻っていった。
そんな様子を眺めていると、シャルは再度ネクタイをほどくとまた締め直す……と。
「……こうしてると、何だか新婚さんみたい……」
客のざわつく声の中、何とか聞き取れたのが――。
「新婚さん?」
そう聞くと、真っ赤に顔を染めながら軽く頷くシャル。
「……はい。 これで大丈夫だよ。 ……大変だけど、頑張ろうね、ヒルト♪」
シャルはそう言うと、また接客へと戻っていった。
……てか、俺も接客しないとと思うのだが、任されるのは基本力仕事メイン。
……因みに、まだ俺は指名を受けてないという……。
一体何故、燕尾服に袖を通してるのかがよく分からない状況だった。
……と、今度は美冬がやって来た。
「お兄ちゃん、眼鏡がずれてるよ?」
「む? ……これでいいか?」
そう言ってかけ直すと、満足そうに頷き――。
「うん♪ ……えへへ、いつものお兄ちゃんとは違った一面だね?」
「……そういう美冬だって、メイド服だろ?。 違う一面ってやつだな、これが」
そう言ってヘッドドレス越しに頭を撫でると、軽く頬を染める美冬。
「へへッ♪ ……じゃあお兄ちゃん、接客に戻るね♪」
手を振ると、また接客に戻る美冬――客が長蛇の列のせいか、回転率をあげようとしてるのが分かるのだが……休憩所じゃなくなってきたな……。
そう思いつつ、一旦外を覗こうとするが不意に――。
「ちょっとそこの執事、テーブルに案内しなさいよ」
そんな聞き慣れた声のトーンの持ち主は、凰鈴音――だがその姿は、まさに俺が前に言ってたムーブメントであるチャイナドレス姿。
そんな出で立ちで腰に手を当て、笑う鈴音に少し見とれてしまった……。
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