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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第162話】

 
前書き
バス内での出来事

 

 
――バス内――


 専用装備等の撤収作業が終わって現在十時少し過ぎた辺り。

 一年生全員クラス別のバスに乗り込み、現在は談笑したり、記念撮影したりと行動していた。


「あ~……」


 そんなうめき声が隣から聞こえてくる。

 一夏だ――。

 原因は、最後の撤収作業を一人で行ったのと水分補給の不足だろう。

 そんな隣で俺は美冬に頼んでいた飲み物を一口飲むと、一夏の視線に気付き――。


「……やらないぞ?」


 そう一言告げると一夏は。


「ひでぇ……まだ何にも言ってないのに……」


 ぐったりしながら恨みがましく言う一夏を、俺はその横でもう一口飲む。

 自業自得だし、まあ苦しんでもっと反省させてやろう。

 そんな黒い考えをしながら、次々と入ってくる一組代表候補生達――。


「ヒルトさん、先程はお疲れ様でした」

「あぁ。 まあ疲れるほどはやってないんだがな」

「うふふ。 そうでしたわね。 また後程遊びに来てくださいな」

「了解。 まあ帰りのバスは多分カラオケ大会になるだろうしな」


 しかもこれだけ多国籍の女子が一同に介しているのだから様々な歌が聴けそうだ……。

 まあ、日本だから邦楽のが多いかもだが、現に音楽の授業も基本邦楽メインだし。

 ……と、次にやって来たのはシャルだ。


「ヒルト、お疲れ様。 サービスエリアに着いたらご飯、一緒に食べない?」

「おぅ、お疲れ。 構わないが多分皆も食べるって言いそうな気もするがな、これが」

「それもそうだね。 じゃあ今度、二人だけで何か食べに行こうよ?」

「そうだな。 俺は構わないぞ? 場所は……本とかに載ってるのはカップルばかりだからなぁ。 ……まあ探しとくよ」

「うん。 約束だからね?」


 そう言って笑顔で手を降り、自分の座席に向かうシャル――と。


「ヒルト、シャルとデートの約束か?」

「ん? ……まぁな」



 座席の背もたれに深く座り、バスの天井を見ながら俺は答えた。


「ふーん……。 何で皆と行かないんだ? 皆と一緒の方が楽しくないか?」

「……何でデートに誘われたのに皆と出掛ける話なんだよ? そんなことしてみろ、総すかんだぞ。 皆と出掛けるなら最初からそう言って計画建てるさ、俺はな」

「……でも、皆と一緒の方が楽しいだろ?」

「それはそれだ。 仮に他の子が来るのも言わずにラウラを誘ったとする。 そうすると前に誘ったシャルとラウラが待ち合わせ場所で鉢合わせ、その後俺が来る。 ……修羅場じゃねぇかよ……」


 想像するだけで恐ろしい……。

 ……まぁ、はっきりしない俺が一番悪いのが問題なんだがな。


 ……と、ラウラの名前を俺が言ったのを訊いたのかバス内に入って来たラウラが――。


「ヒルト、今私を呼んだか?」

「ん? 例え話でラウラの名前を出しただけだよ」

「そ、そうか……」


 呼ばれたと思い、嬉々としてやって来たラウラだったが俺の言葉を聞いてみるみるうちに表情を暗くしていく。


「……ったく、そんなに暗くなるなよ? ほら、頭なでなでしてやるから」


 そう言い、艶やかなラウラの銀髪を優しく撫でる。

 先程までの暗い表情は何処へやら、今はかぁーっと頬に熱を帯び、憂いのある瞳で俺を見ていた。


「ば、馬鹿者……。 み、皆が見てる……のに……」

「ん? なでなでしてるだけじゃないか。 ……まあこれで機嫌治っただろ?」

「…………ぁぅ」


 小さくそう呟いたラウラは、湯気が出そうなぐらい耳を真っ赤にしながら自分の座席へと戻っていった。

 道中、ラウラ可愛いだの何なのと後ろの座席から聞こえてきた。


 そして制服のポケットに入れた携帯が震え、何かと思うとメールが二通来ていた――セシリアとシャルからだ。

 ……内容は先程、俺がラウラになでなでしたことを咎める内容とセシリアやシャルも頭をなでなでしてとの事。

 ……なでなでが好きなのか、嫉妬か……不用意に出来ないな。

 軽く一息つくと、またメールが入って来た――今度は母さんからだった――それもこれは、母さんの持つ【もう一つの携帯】。


『ヒルトへ。 言い忘れてたけど……。 もし、もしもだけど。 ISのコアを手に入れる事があればアメリカの【ナイトインダストリー】宛に送ってねぇ。 因みに、このメールは読んで閉じると自動消去されるから気をつけてねぇ~』


 メール画面を閉じると、画面に写っていたメールが消失していく――。

 ……どんな原理で消えるのかがわからんが……。

 てか、ISコアを手に入れる事があれば送ってくれって……。

 ……何を考えてるんだ、母さんは……。


 ……まあ、母さんが悪いこと考えてる何て事は無いだろう。

 ……純粋にブラックボックス化した部分の研究だろうな。

 現にコアが十年たってまだ解明されてない要因はその数の少なさからくる為だろうし。

 ……解明されれば、何かしらの技術向上があるかもしれない。

 ……一応気にかけるか……バレたら退学じゃすまないだろうがな、これが。

  軽くため息をつくと、携帯をポケットに直す。

 ……と、そこへバスの車内に入ってくる女性が一人――。


「ねえ、有坂緋琉人くんっているかしら?」


 車内に入った女性の第一声が俺であることに、バス内がざわめく。


「……俺が有坂ですよ?」


 そう返事をし、俺は目の前の女性を見上げた。

 年齢は凡そ二十歳前後、髪は金髪でセシリアともシャルとも少し違う鮮やかな金色をしていた。

 服装に至ってはブルーのサマースーツ――それも、カジュアルタイプのだ。

 顔はサングラスに隠されていてわからない――そう思っていると、サングラスを外し、開いた胸元の谷間にサングラスを預けて――。


「君がそうなんだ。 へぇ」

「……あ、その顔……」


 微かに香る柑橘系のコロンが鼻腔を擽る。

 香りに敏感な俺も、この香りは嫌いではないと思ってしまう程だった。

 それよりも、サングラスを外した事によって露になったその素顔に見覚えがあって、微かに呟くように俺は言った……。



「……【銀の福音】の操縦者……」

「そうよ。 名前はナターシャ・ファイルス。 よろしくね」


 そう告げた女性は笑顔で答えた――そして。


「貴方に少し話があるの。 良いかしら?」

「大丈夫ですよ? 内密な話ですか?」

「そうね。 ここじゃ人目も少し多いし……」


 言って、バス内を見渡すナターシャさん。

 興味があるのか全員が俺とナターシャさんの行動に注視していた。

 隣の一夏も、ぐったりしながらも俺の方を見ていて――。


「じゃあ外で話をしましょうか? 一夏、これやるから全部飲んで良いぞ? いい加減可哀想になってきたし」


 言ってスポーツドリンクを手渡すと、一夏は余程喉が乾いてたのか一気飲みしていた。


「じゃあ行きましょうか?」

「了解」


 言って座席から立ち上がると、俺はナターシャさんに続くようにバスを下車した。

 照り付ける夏の陽射しが容赦なく降り注ぐ。


「……暑いですね」

「夏だからね。 日陰で話しましょうか」


 夏の陽射しにキラキラと髪を輝かせ、風が吹き抜けるとその艶やかな髪が靡いた。

 少し日陰になった場所まで移動すると、幾分ましな気がした――と、ナターシャさんが口を開く。


「まずはお礼からね。 ありがとう、黒いナイトさん」

「え? ……お礼を言われる程の事はしてないですよ」

「ふふっ。 謙遜しなくていいわよ? ……【あの子】も、貴方にお礼を言ってた」

「……ナターシャさん、もしかして福音と――」


 言葉を遮るように、ナターシャさんが語り始める。


「貴方程じゃないけど、あの子の声は時折聞こえていたの。 福音と話をして止めてくれた、それだけで私は貴方には感謝してもしきれないぐらいなのよ?」


 腕を組み、蒼天を見上げるナターシャさん。
 上空にあった雲は、ゆっくりと流れていく。

 時がゆっくりと流れていく――そんな感覚だった。


「……結局、その前までは殴ったり切りつけたりしてましたがね」


 苦笑し、鼻の頭を指で俺はかく。

 そんな様子を見たナターシャさんも、穏やかな笑顔で俺を見ながら――。


「それはあの子も納得してたわよ。 あの攻撃が無ければ、もしかすると貴方は福音との話どころか今もあの子は暴走していたかもしれないから……」


 そう言ったナターシャさんの瞳は、何処か寂しげそうに見えた。

 何だか、もう福音とは会えない――そんな印象を与える瞳。

 だがそれも一瞬の事で、直ぐ様目を細めて穏やかに微笑んだ。


「……ありがとう、有坂緋琉人くん。 これはそのお礼よ?」

「え?」


 お礼という言葉と共に、ナターシャさんは俺の目の前まで歩いてくると自然な流れで頬に口付けした。

 その一連の動作に、一瞬何が起きたのか理解が出来ず、ナターシャさんは再度言葉を口にする。


「うふふ、これは福音からのお礼で、私個人からは……此方にね?――んっ……」

「え?――……!?」


 言って指で唇に触れると、まるで挨拶を交わすかの様な触れるだけの口付け――。

 気づいた時には、ナターシャさんは笑顔で微笑んで――。


「ふふっ、リップグロスが付いちゃったわね。 バスに戻る前に拭き取りなさいね?」

「は、はぁ……」


 そんな曖昧な返事しか出来ず、俺はナターシャさんを見ていると、後ろから声が――。


「有坂、そろそろバスへ戻れ」

「にょっ!?――お、織斑先生……」


 声がし、振り向くと織斑先生がつかつかと歩いてやって来た。


「そろそろ出発する時間だ。 戻って座席に座ってろ」

「うっ……。 わ、わかりました。 では織斑先生。 な、ナターシャさん、お先に失礼します……」


 それだけを告げ、俺は脱兎の如くバスへと戻って行った――。

 唇に付いたリップグロスを落とすのも忘れるぐらいの衝撃的な出来事が立て続けに続いたせいもあったかもしれない……。 
 

 
後書き
暴走

いや、妄想?



とりあえず次はオリジナル?

または帰宅後の誕生日かサービスエリアかバス内カラオケ大会か 
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