IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
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【第489話】
前書き
超遅れた
後、話はちょっと場面が変わります
各アリーナで死闘が繰り広げられる中、一つの戦いが終わりを告げようとしていた。
IS学園遥か上空、宇宙と空の狭間である成層圏。
「あぎゃっ!!」
『――――!?』
無情に貫く黒き刃が物言わぬ襲撃者を深々と突き刺さる。
最後の足掻きと謂わんばかりに左手を翳し、その砲口をカーマインへと向けた。
エネルギーが収束していく中、カーマインは口元を歪める。
「無駄な足掻きは止めな! ――あぎゃっ」
『!?!?――――』
翳した左手を払うと、次の瞬間熱線は漆黒の宇宙の闇へと消えていき、機能が停止した。
「……けっ! 人が乗ってなけりゃ、所詮はこの様か。 数だけ多かっただけだな、あぎゃぎゃ」
コアが格納されている胸部を無理矢理抉じ開け、コアを抜き取る。
アイ・ラインから光が失われ、ぐらり……とコアを失った機体は地上へと落下を始めた。
――だが、その機体は地上に落下する事はなく、カーマインの機体のフリューゲルユニットによってバラバラに刻まれ、高濃度圧縮粒子砲によって灰塵へと帰した。
一方の仮面の男――無人機の頭部を持ち上げ、左手を無人機の腹部へと当てる。
何とか抜け出そうともがき、折れたブレードで仮面の男の機体【トゥルース】に攻撃するものの見えない障壁によってそれは阻まれた。
絶対防御が発動しないこの条件下で発動する防御壁に、コアに詰まれたAIは答えを導き出そうとするもそれが叶う事はなかった。
「……サヨナラだな、これが!!」
『――――!?!?!?』
翳した手のひらから無数の白い光弾が放たれる、その威力によって頭部を残し、首から下はコア事消し飛んでいた。
「……此方側のゴーレムは弱い。 ……数の暴力だけだったな。 ――とはいえ、あれだけの数が学園に降下していれば、少なくとも織斑一夏と篠ノ之箒以外の専用機持ちは良くて重症、悪くて戦死って所か……無論、そうなっては困るのだがな、これが」
握った頭部をかなぐり捨てた仮面の男、一体どれだけの機体を葬ったのか数えるのも面倒だった。
だが、男の機体の周囲に浮かぶコアの総数が激戦を物語っていた、優に五十はあるだろう、途中から抜くのも面倒になりコア事の破壊に切り替えたのだから総撃破数は八十以上は確実だった。
「……あぎゃぎゃ、これだけコアがあれば世界を手中に納めるのも簡単だな、ボス?」
「……ふっ、世界……か」
カーマインの言葉に、意味深に笑う仮面の男。
そんな仮面の男に懐疑的な視線を送ったカーマインだったが、仮面の男が口を開いた為考えるのを後回しにした。
「……少し降下を許したが、あの程度の数なら専用機持ちも苦戦はしないだろう」
「あぎゃぎゃ、織斑一夏と篠ノ之モッピーの二人は苦戦してそうだがな!」
可笑しそうに笑うカーマイン、抜き取ったコアをジャグリングして遊んでいた。
ふわふわと空を浮かぶコア――成層圏の狭間で、見る人が見れば何をやっているんだと憤るだろうと仮面の男は思った。
「……ふっ、あの二人は苦戦はしないさ」
「あぎゃ……?」
仮面の男の言葉に、カーマインは疑問符を浮かべた。
実際に対峙したカーマインは二人の実力が底辺というのを知っている、なのに仮面の男は否定したからだ。
「……カーマイン、あの二人は苦戦ではなく、まともに無人機が相手にしない。 あの【無人機を作った人】がそうプログラムしてあるんだからな」
「無人機を作った……? あぎゃっ、つまり……」
脳裏に浮かび上がる一人の人物、世界にあるISコアの総数は467とされているがカーマイン自身の調べでも確実にそれ以上ある事は知っていた。
それに合わせて今回の襲撃してきた無数の機体――コア総数は軽く見ても六百近くはあるかもしれない。
「……まあ犯人は言わなくてもわかるだろう」
「あぎゃ、ってか一人しか浮かばねぇぜボス?」
カーマインの言葉に苦笑を漏らす仮面の男――と、其処へ高速で接近する機影を二人は捉えた。
新たな敵――そう思いカーマインはハイパーセンサーのズーム機能を駆使して確認すると、【見知った顔】が映し出された、バイザーで隠されていても分かるカーマインが少し苦手意識を持つ女。
内心舌打ちをするカーマイン、横目で仮面の男に視線を移すと――。
「あぎゃっ……何で【アイツ】が来るんだよ、ボス。 アイツは今ヨーロッパ方面に行ってる筈じゃ――」
「ああ、そちらの問題は落ち着いてきたらしいから呼び戻したんだ。 後は向こうに居る人員でどうにかなるだろうしな」
二人が会話を続けるなか、高速で接近してきた機体は二人の目の前で急停止した。
燃え盛るような紅蓮の装甲を身に纏い、流れるような長い銀髪が小さく靡いていた。
起伏の良いスタイルを強調するような黒いISスーツを着ていて、バイザーを外すと装甲と同様の紅蓮の瞳が姿を現す。
「やあ! カーマイン、元気してた?」
屈託の無い笑顔を向け、挨拶する女にカーマインは――。
「けっ! 見たらわかるだろう?」
素っ気なく返事を返す、だが女の方は気にも止めず笑顔を向けたまま頷いた。
「それもそっか。 元気そうで良かった良かった」
言ってからにひひっと笑う女――見た目はまだ大学生位に思える女性が今度は仮面の男を見ると。
「にい――――こほん。 ボス、お久しぶりです」
言ってから軽く敬礼をする女に、仮面の男は頷くと――。
「あぁ、久しぶりだな【シルバー】」
「……やっぱりそのコードネーム可愛くない」
シルバーと呼ばれた女は頬を膨らませる。
仮面の男は頬を指で掻き、カーマインは呆れたように溜め息をついた。
「……可愛くなくても、それが今のお前のコードネームだ。 納得しろ、良いな」
「……はぁい」
シルバーの不服そうな表情が物語っていたが、仮面の男はそれを気にすることなく言葉を告げる。
「来てもらって早々に悪いが、カーマインと二人で回収したコアを新しい本拠地に運んでくれないか?」
言ってから周囲に浮かんだコアを二人の前へと移動させた、カーマインの物を合わせても相当数揃っていて幾らISを纏っているとはいえ大変なのは目に浮かんだ。
「コアを? ――凄い数だけど、カーマインと二人で?」
だがシルバーは運ぶ事よりもこの数を倒した事の方が気になった様だった、カーマインは二人の様子を見ながらコア運搬用のケースを粒子展開し、自身が集めたコアを収納していった。
「あぁ、何か問題でもあるのか?」
「ううん、貴方が戦うなんて……何時以来かなぁって思っただけだから」
「……わりと最近もアメリカ国家代表とも戦ったがな、これが」
「ふぅん。 ……わかった、じゃあ私とカーマインの二人で運ぶから。 ボスはこのあとどうするの?」
軽く首を傾げたシルバーに、仮面の男は答える。
「……傍観者として、学園の襲撃を観察するだけだ」
「……そう、わかった」
それだけを聞き、頷くとカーマイン同様にコア運搬用のケースを粒子展開、コアの回収を行い始めた。
「カーマイン、本拠地に戻ったら幹部会を開く。 連絡の着く者は本拠地に帰還するように連絡を入れてくれ、無理そうな幹部には投影ディスプレイによる参加を促してくれ」
「あぎゃっ、了解した。 幹部会の後はまた俺様は亡国機業に……だろ?」
「あぁ、幾ら傘下にあるとはいえ奴等がいつ此方に牙を向くとはわからないからな。 不穏な動きを感じたときは――」
「任せな、亡国機業全員この世からサヨナラさせてやるぜ、あぎゃぎゃぎゃぎゃっ!」
そんなカーマインの高笑いに、シルバーは困ったような表情を浮かべながら咎めた。
「こら! 無闇やたらに殺さないの!」
「けっ! うっせーよシルバー、俺様はヤりたい時にヤり、殺りたい時に殺るんだよ!」
「もう、殺りたいって何で二回も言うんだか!」
シルバーは言葉の持つ二つの意味が理解できず、人を殺したい気持ちを二回言ったのだろうと思った。
無論、カーマインの言った言葉の意味は二通りあるわけだが――。
「……言い争いは其処までにしろ」
流石に咎めの言葉を口にする仮面の男に、シルバーも反省して頭を下げた。
一方のカーマインも、シルバーに何かを言ったりする事はなく黙々とコア回収作業に謹んだ。
「……じゃあ悪いが俺は降下して襲撃の様子を傍観する」
「あぎゃ、わかったぜ」
カーマインの言葉を聞き、仮面の男の機体はステルスモードに移行――完全に姿を消失させると降下を始めていった。
「……何でわざわざ学園襲撃を傍観するのか、俺様にはわからねぇぜ」
カーマイン一人言葉をごちる、その問いにシルバーは――。
「……此方でも気になるのかも……、自分の想い人だった人の行く末が……」
「あぎゃ?」
「……ううん、何でもない何でもない。 さて、残りコアを回収しますか。 カーマインだけで」
言ってからまた笑うシルバーに、カーマインは――。
「てめえも少しは働きやがれ!」
「えー? ボスがいないから私は干物になりまーす、今流行りの干物妹でーす」
等と言いながら回収作業をカーマインに丸投げするシルバー。
心なしか三頭身にデフォルメされた様に見えるのが不思議でならなかったカーマインだったが、相手するのも疲れるので一人黙々とコア回収作業を続けるのだった。
後書き
さて、呟きにも書いたがちょっと職探しするのでまた更新遅れちゃうかもです
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