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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》

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【第492話】

 
前書き
新年明けましておめでとうございます(遅

新年最初のアップっす、去年はのほほんさんとのエロ話だったのに今回は……

って事で今年もよろしくお願いします( ´艸`) 

 
「……っ、こんのぉぉぉぉッ!!」


 襲撃者と何度もつばぜり合う凰鈴音、激しく金属音が鳴り響き、鈴音も角度を変えつつ何合も切り結ぶ。

 そして、一旦距離を取ると間髪無くセシリアの援護射撃の雨が降り注いだ。


「くっ……全然墜ちませんわね……!」


 シールドビットによって射撃が阻まれる中、鈴音も腕部衝撃砲による牽制射撃を行う。

 その間にセシリアは、ビットによるオールレンジ攻撃――全方位から間断無く射撃を浴びせた。


「はぁ、はぁっ……! す、少しはダメージを負わせられたかしら……?」

「……そうだと良いんだけど、そう上手くはいかなさそうね……」


 額の汗を拭うセシリアに、鈴音は冷静に判断した。

 シールドビットに阻まれ有効打を与えられず、じり貧になりつつある現状に苦虫を潰した表情になる。

 僅かに傷はあれど、機体に甚大な損傷は見られない、だが既にセシリアと鈴音は虎の子のビット数基、衝撃砲一基と失っていた。

 次世代を担う二人の代表候補生、それも専用機を与えられたのにたった一機の敵に有効打すら与えられなかったのは彼女達のプライドを傷付けていた。

 だが、それも仕方なかった、絶対防御に守られているという安心感があったからこそ普段の実力を出せたのだ。

 今の現状、身体が硬くなるのも仕方ないのかもしれない。

 黒い機体は間断無いビットによる射撃に、ダメージを受けているもののまだまだ稼働には問題なさそうに二人は見えた。


「……ちょっとアイツ、硬すぎじゃないの?」

「そ、そうですわね……。 ……鈴さん、バックアップは任せてくださいな」


 そう言ってセシリアはライフルを構える、それを見て鈴音も――。


「……しょうがないわね! じゃあアタシがフォワードやるから、セシリアは足止めよろしく!」

「えぇ! お任せくださいな!」


 そう二人は互いを鼓舞したその時――アリーナ上空からまるで隕石の様にアリーナシールドを突破してきた機体が現れた。

 新手――二人の脳裏に過る新たな敵の存在に、武器を持つ手に力がこもる。

 立ち込める砂煙、襲撃者とセシリア達の合間に割り込んだ機体が姿を現すと共に、二人に声を掛ける。


「セシリア、鈴音、無事か?」


 その声に、セシリアと鈴音の二人は敵では無く、自分達の想い人であるヒルトだと気付いた。


「ヒルトさん!」

「ヒルト……。 い、一応、援軍に来てくれた事、感謝するわよ!」


 鈴音の強がりな言葉と裏腹に、その表情は軟らかな笑みへと変わっていた、セシリアもまさかヒルトが現れるとは夢にも思わず、その表情を綻ばせていた。

 二人はヒルトの機体が変わっているのに直ぐ気付くも、それは後々聞けば良いと思い、言葉を飲み込む。

 新たに現れた機体に、襲撃者は先攻の一撃と謂わんばかりに高密度圧縮粒子熱線を放つ、放たれた周囲に陽炎が立ち込める。

 射撃に気付いたセシリアと鈴音は射線から退避し、叫んだ。


「ヒルトさん! 避けてくださいな!!」

「絶対防御が無いんだから、怪我じゃすまないわよッ!!」


 避けようともしないヒルトに、一斉に回避するように叫ぶ二人に対してヒルトは微動だにしなかった、避けようとしないヒルトに、二人は焦りの色を見せる。


「……避ける必要は無いぜ、セシリア、鈴音!」


 そう叫び、左腕を構えるとその前面を大きく覆うようにエネルギーシールドが展開、圧縮粒子熱線を遮る。


「あ、あの圧縮粒子熱線を防いでるの!? あれ、凄まじい威力なのよッ!?」

「強固なエネルギーシールドですわ……! シャルロットさんのパッケージ《ガーデン・カーテン》を上回る……これがヒルトさんの新たな機体……!」


 完全に遮る圧倒的な防御力に、二人は驚きの声を上げる。

 強固なエネルギーシールドに阻まれ、相手にダメージを与えられないと判断した襲撃者――次の行動に移ろうと動く、だが――。


「――ッ!! させませんわよ!!」

『――――――』


 降り注ぐ粒子の弾雨、爆ぜるアリーナの地表、上空へと退避する襲撃者だったが――。


「この瞬間を……待ってたわよッ!!!! ヒルトばっかりに良い格好させないんだからッ!!」


 先回りしていた鈴音の怒濤の連撃が襲撃者を襲った、質量のある双天牙月による一撃一撃が、襲撃者のブレードに金属疲労を与えていく。

 打ち合う刃と刃、休むことの無い強撃に、遂にブレードが根元からへし折れた。

 チャンスと謂わんばかりに鈴音は一基残った衝撃砲を最大出力でチャージを開始した。

 ウェイトのある一撃は隙を生み出す――だが、その隙を消すのがセシリア、ヒルトの役目だった。


「させませんわ!! ブルー・ティアーズ! 行ってくださいなッ!!」


 そう指令を下すセシリア、二基のブルー・ティアーズが挟撃する様に襲撃、砲口からビームが放たれる。

 鈴音への攻撃を止め回避に専念しようと空中を動き回る襲撃者――だが、避けようとした矢先、ビームが弧を描いて曲がり、左肩部装甲と右脚部を撃ち抜かれる。

 装甲の破片がパラパラと落ちていく――防戦一方になるとプログラムが判断したその時、下からヒルトの機体から射出されたワイヤーブレードが空気を切り裂く音と共に複数基強襲を仕掛けてきた。

 撃ち抜かれた右脚部と左脚部を補足され、ワイヤーブレードが絡まると、力任せに地表へと叩き付けられる。

 轟音と共に舞う砂煙、襲撃者の機体から紫電が迸る――機体内部に深刻なダメージを受けたからだった。

 だが、そんな襲撃者に対して降り注いだのは実弾とビームの雨、空中からはセシリアの粒子ビームが関節を撃ち抜き、地表にいるヒルトからはフライヤーユニットに備わったガトリングガンによる面制圧射撃によって完全に動きを止められていた。

 アリーナ内部に轟く轟音と銃声、聞く人によっては其処が戦場かと勘違いさせる様な激しさがあった。


「……待たせたわね、ヒルト、セシリア! ――これで――終わりよォォォッ!!」


 鈴音の言葉を合図にピタリと止む銃撃の雨、砂塵舞う中心目掛けて、鈴音は最大チャージした衝撃砲を放った。

 不可視の弾丸は、舞う砂塵を消し飛ばし、襲撃者の機体に直撃を浴びせた。

 天を仰ぐ様に掲げるその腕、その先に居たヒルトは――。


「……終わりだよ、無駄な足掻きはせずに休みな……」


 誰に対して言ったのかわからない独り言、その言葉が起因になったのかわからないが、襲撃者の機体は機能を停止した。


「……ふぅ、何とか倒せたわね」


 鈴音がそう言葉を口にし、地表へと降り立つ――それと同時に纏っていた甲龍の装甲は光の粒子となって弾けとんだ。

 セシリアも地表へと降りる――ブルー・ティアーズもエネルギーの限界が来たらしく、装甲が青い光の粒子となって弾ける。


「え、えぇ……。 ……警戒だけはしておきませんと……」

「大丈夫よ。 セシリアとヒルトが足止めして、アタシの最大チャージした衝撃砲をマトモに浴びたんだから、もうエネルギーも無いでしょ」


 そう言って不意に近付く鈴音、軽く足で装甲に触れるも動く気配はなかった。

 セシリアもそれを見て安堵の溜め息を吐く――一気に疲れが出たのか、その場に座り込んでしまった。


「セシリア、疲れたか?」


 空中から声を掛けてきたヒルト、IS装着を解除せずにセシリアに近付くとセシリアは顔を上げた。


「ふふっ、このぐらいの事でわたくしは疲れませんわよ――何て……流石のわたくしも参りましたわ……」


 顔を上げたセシリアの表情に疲労の色が見えた、これまで絶対防御によって守られていたという安心感が無く、油断すれば命を失うかもしれないという実戦が精神的にも肉体的にも疲労を高めたのだろうとヒルトは思った。

 まだ他のアリーナでは戦いが続いてる――ヒルトがそう感じたその時、機能を停止した筈の襲撃者のライン・アイに光が点る。


「えっ?」


 鈴音の顔色が一気に青ざめる、彼女はISを身に纏っていないからだ。

 この状態で攻撃を受けようものならただではすまない――最悪命を落とすかもしれないと彼女の第六感がそれを告げた。

 天を仰ぐその手が握り拳に変わる、勢いを着けずそのまま彼女の腹部へと一撃を叩き込もうとしたその時、鈴音と襲撃者に割って入ったのはヒルトだった。

 彼女を庇うように一撃を受け止める、ぺたんと尻餅をついた鈴音はヒルトを見上げた。

 残ったエネルギーを使い果たしたのか、完全に機能を停止させた襲撃者、それを確認するとヒルトは鈴音の方へと振り向く。


「鈴音、大丈夫か?」

「あ、ぅ……ぅん」


 手を差し伸べられ、勢いつけてヒルトは鈴音を立たせた。

 一方の鈴音は、心臓の鼓動が高鳴るのと顔が赤くなるのを感じ、内心テンパりそうになっていた。

 だが、鈴音の内心とは裏腹に、ヒルトは襲撃者の機体からコアを抜き取る、また再起動されて暴れられては堪らないからだ。

 抜き取ったコアを鈴音へと手渡すヒルト。


「鈴音、コアを頼んだぞ――てか、顔が赤いぞ?」

「へ……? き、気のせいよバカッ!」


 気のせいには見えないと思ったヒルトだったが、その言葉は呑み込んだ。


「……まだ他のアリーナでは戦闘が続いてる。 セシリア、鈴音、二人はそのコアを持って退避するんだ」

「ヒルトさんはどうなさいますの? ――まさか……」


 セシリアはヒルトがそのまま継続して戦闘に向かうのを悟る、鈴音もそれを感じ、瞼を閉じた。


「――ヒルトさん、御武運を……」

「ぶ、無事に帰ってこないと、許さないんだからねッ!!」


 二人はそう伝えるしかなかった、本来ならヒルトと共に向かいたい――だが、機体のシールドエネルギー切れ及び内部ダメージの蓄積が酷いため、仮に着いていっても足手まといになるのは明白だった。


「大丈夫だ、無茶はしないさこれがな。 ――じゃあ、行ってくる!」


 そう言い、そのままアリーナを覆うシールドバリアーを突破し、ヒルトは新たなアリーナへと向かった。

 残された二人はただただヒルトの無事を祈るだけしか出来ない事に、悔しい思いをしたのだった。 
 

 
後書き
次は誰かな誰かな 
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