つぶやき

海戦型
 
暇つぶしに
最近なんだかやる気が出ない。なので取り敢えずなんか話を考えようと思って1時間くらいで作ったプロローグを呟きで晒してみます。前々から思っていたんですが、「短編小説なんか全部呟きで済ませばいいじゃない」と考えてる自分がいる気がしてなりません。以下、例のブツ。



 今から約50年前に、とある研究チームが人類未発見のエネルギーを観測することに成功した。後に「アイテール」……和訳では「霊素」と呼ばれるこのエネルギーは、新エネルギー発見のための実験が失敗したことによって偶発的に発見されたものだった。
 アイテール――それは地球そのものから発生し、大気中を満たすエネルギー。未だ詳しい原理は不明だが、地球から無尽蔵に発生しているそれは再生可能エネルギーの一種とされた。安定性も高くて管理が容易なアイテールはあっというまに 霊素工学という一大分野を築き、現在の日本は発電施設の9割がアイテール機関に変更されている。そのエネルギー革命は日本の経済と技術を大きく発展させたが、同時に弊害をも生み出すこととなる。

 小さいものにもなると電池と同程度にまで一般に浸透したたアイテール機関は、仮に破損して高濃度アイテールが漏洩しても危険性はないと考えられていた、事実、アイテール機関に関連する事故で死者や後遺症の残る人間が出ても、それはアイテール機関の周辺機器に異常を来たした事故に過ぎず、元々大気中にあるアイテールそのものに何ら危険性はないと考えられていた。
 ところが、後の研究でとんでもない事実が判明する。

 高濃度アイテールは人間の胎児、その脳細胞に極めて特殊な遺伝子変異を引き起こすことが発覚したのだ。

 そしてその遺伝子変異を起こした子供はある一時期までは普通の子供と変わらずに育つ。そして、丁度第一次性徴に当たる10歳前後の時期に――唐突にその変異細胞の使い方を理解する。
ある者は虚空に炎を発生させ、ある者はその身体能力が異常なまでに強化され、またある者は物質そのものを手も触れずに変形させる。

 ――異能の発現である。

 それは現実には起こりえない事象を引き起こす異質な能力にして、現実的物理法則の一時的な改変。
 科学的に再現できないにも拘らず、現実にその異常は発生している不可解な事実の発生。故に異質。
 そしてそれは、特定の人間の意識によってトリガーを引かれる。だからこそ能力。
 故に、人はそれを異能と呼び恐れる。

 異能を持った子供たちは、一様にベルガー波と呼ばれる脳波の発生が異常に強くなる。そのため世間は異能を持った子供たちを、ベルガー波とその名付け親であるドイツの科学者「ハンス・ベルガー」から取って「ベルガーチャイルド」と呼んだ。そして彼らの持つ異能は、人類の繁栄に常につきまとう問題という意味を込めて「 業(カルマ)」と名付けた。
 発見された当初こそ異端児としての蔑称の側面を持っていたベルガーチャイルドだったが、カルマを行使できるという一点を除いては人と変わりなく、またカルマにもさまざまな条件があることが判明したため、政府はベルガーチャイルドを一挙に集めて育成する機関、「アルファ機関」を創設。
 そこで人道的観点と保護者、本人の同意の下で異能研究を進めつつ、彼らを受け入れる事の出来る社会環境の創設に勤めた。


 そして半世紀もの時代が過ぎ――西暦2064年。


 異能の力は国連の議会で正式に社会の一部と認められ、今では日本中のどこにでも一人はいる存在となっていた。
 ベルガーチャイルドという言葉は単なる異能者を表す言葉として「ベルガー」と略され、その差別意識も大幅に緩和されていた。
 胎児の状態で高濃度アイテールを浴びるという状況は極一部の限られた施設と突発的な事故でしかありえないから数は少なくなる。それに法律によって、故意にベルガーチャイルドを生み出す事は法律で罰則規定が設けられた。ベルガーの際限ない増加は社会をいたずらに混乱させるためだ。子供の脳波を調べればベルガーかどうかは直ぐに分かるし、アイテール機関を利用したものにはその全てに政府管理のデータチップが内蔵されているため、故意に生み出した際に発覚しない可能性は極めて低い。
 そのため、敢えて胎児を高濃度アイテールに晒そうと考えるような人間は少なく、ベルガーの出生率は全体の0,01パーセント――2064年までのデータでは年間2~300人の間に留まっている。
故意に生み出したベルガーで悪だくみ企てる犯罪組織も出てきたが、政府側にもベルガーがいるため激しい増徴は起きず、睨み合いの均衡が保たれている。



「――このように、諸君らベルガーの社会的地位は一般の人間と然程変わらない段階になっている。だが、それでも異能そのものが危険性を失っている訳ではない。事実、法律改正によってカルマを用いた犯罪に関する『異能法』も生まれているし、時折ベルガーによる犯罪行為が新聞に取りざたされることも、当然諸君はご存じの事だろう――よって」
 そこで一度言葉を区切ったその女性は、一度そこで言葉を噤んで檀上から下の生徒達を見渡した。
「我々、『国立異能者育成機関・ 天岩戸専門学校』――略称、 天専(あません)の教師の仕事は!諸君ら幼いベルガーにカルマの使い方と分別を弁えて、社会の何所に出しても恥ずかしくない人間に育て上げる事である!――改めて、ようこそ新入生諸君!我々 天専は諸君らを歓迎しよう!」
 その力強い言葉が終わると共に、会場からは大きな拍手が上がった。
 ここは入学式が行われる体育館の中である。校長の力強い挨拶に気圧され、あるいは尊敬の念を覚えた生徒達は、たった今から正式にこの学校へ迎え入れられた。
  天岩戸専門学校。
 それはアルファ機関の現在の姿にして、全国の異能に目覚めたベルガーが集められる日本唯一の異能者専門学校。中高――成績次第では大学も――一貫の特別尽くしな学校である。

(ここから始まるんだなー、中学時代。友達ちゃんとできるかなぁ……?)

ある者は期待に胸を躍らせて。

(見つけられるかな……アタイの正義)

ある者は持たざる何かを探し求めて。

(人に決められてばかりだ、僕の人生は。この学園に入ることも、ベルガーになったのも)

ある者は流されるがままに辿り着いて。

(家族も振り払ってこんな所まで来たんだもの。きっとここなら……居場所はあるよね)

ある者は存在するかも分からない希望に縋って。

(はぁ……上手く隠し通せればいいんだが、そう上手く事は進まないだろうなあ)

ばらばらな物語はやがて、一つのクラスで終結する。