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海戦型さんのつぶやき
つぶやき
海戦型
2014年 10月 30日 00時 07分
【ネタ】もしも一夏が疑り深かったら
「作為的なものを感じる・・・」
俺は藍越学園への入学を目指して確かに会場に入ったのだ。だのに辿り着いた場所がIS学園入試試験会場だったとはいったいどういう事か。そもそも、IS学園入試に貴重なISが持ち出されてむき出しの状態で置かれている時点で非常にきな臭い。現在、日本には10前後のISコアが存在するらしい。つまり、その10個は競技用や研究用にフルに使用されているのが筋であって、IS適性を調べるだけなら態々コアを内蔵したISなど用意する必要性がない。しかも、だ。よく考えてみれば入試試験以前に受験生はIS適性を予め調べているし、そもそもあの施設はISを動かす認可を得た施設が存在しない。
後で調べたら受験生の意欲向上だかとよく分からない説明を受けたが、眉唾物である。やはりこれは何者かによって意図的に誘導されたと見て良いだろう。あの施設に入ってから方向感覚が少しおかしかった気がする。指向性の特殊音波によって移動方向を誘導された可能性がある。男性である自分にISが反応したのならISに仕掛けがあった可能性も高い。ISに細工できるような人間は一夏が知る限り彼女の姉しか――
ちらり、と自分の所属する1組の教室内を見渡すと、見覚えのある顔がいた。幼馴染の篠ノ之箒だ。
「作為的なものを感じる・・・」
箒はIS開発の母である篠ノ之束の妹であり、政府直々の庇護を受けている重要人物である。学園にいること自体はおかしくない。だが、同じ1組にいるというのは少々おかしくないだろうか。学園は一学年に付き計8クラス存在する。つまり単純確率で同じクラスになる可能性は八分の一だ。だから箒と俺が同じクラスになる可能性は八分の一になるかというと、実はそうでもない。
何だかんだで箒は要護衛のVIPだ。そして俺もその立場に負けずとも劣らない重要人物である。つまり、表面上ランダムに見えても裏では俺と箒について様々な話し合いがあった筈だ。護衛対象をどのクラスに入れ、同じクラスに誰を入れ、護衛や面倒を見る役は誰がするかまで恐らく考えているだろう。つまり――話し合いの結果、箒と俺が同じクラスになったのには何らかの合理的理由があるはずだ。些細な事ではあるが、作為を感じずにはいられない。
同時に俺は他のクラスの面々も見た。非常に日本人が多い。というか、9割以上の生徒が日本人だ。
「作為的なものを感じる・・・」
学園は全8クラス、一クラス約30人で構成されている。つまり1年生は240人存在することになる。そして国際的機関であるIS学園には当然ながらアラスカ条約に批准したIS産業の将来を担うエリートたちが送り込まれてくる。この地球上で現在公的なIS操縦者育成機関はここしかなく、さらに言えばIS技術者育成機関としての側面も合わせている。アラスカ条約には世界中の主要先進国や国力を持った国が批准したため、この学園には世界中の富を持った人間が集まっていることになる。
その中で1組は構成する人間の国籍のほぼすべてが日本人。これは流石におかしいのではないだろうか。他のクラスの名簿もちらりと見てみたが、日本人の合計人数は40人近くに上る。いくら日本がIS発祥の地とはいえ、民間にISの情報はさほど出回っていないことから、これが単純な学力差によるものでhないことが分かる。計算の上では1年生全体の約17%が日本人――これは異常な数字だ。いくらなんでも日本人の占める割合が極端すぎる。しかも調べてみれば他の人種や国籍はバラバラなのに関わらず、1組だけ日本人が集中しているのだ。2,3年生はそうでもないのに何故今年だけこれほど日本人が多いのか?もしや自分が過ごしやすい環境にするための策略なのかとさえ勘ぐってしまう。もしこれが単純な日本びいきの結果だとしたら、各国のIS事情が一変してアラスカ条約にメスが入りかねない。にも拘らずこれで通っているというのはつまり、IS委員会黙認でこのような結果になったということだ。
そして――
「1組の担任になった織斑千冬だ」
(作為的なものを感じる・・・)
自分の姉がクラス担任。偶然はいくつも重なると必然へ変わる。間違いなく平等な人事で行われたものではないと確信した。おまけに箒と俺が同じ部屋と来たものだ。推測するに、同じ部屋に要人を集めた方が護衛しやすいか、もしくは一夏への配慮か。他にもハニートラップ対策など思いつく事情がいくらかあるが、さも自然に決まったかのような物言いをしておいて実際には何もかも作為的だ。
「それに、千冬姉は俺がクラス代表に選任されるとなった時、特に何も口を挟まなかった。これも作為的なものを感じる・・・」
クラス代表にへっぽこを選任すれば困るのは千冬である。何せ自分のクラスの評判を決める重要な役割なのだから。そして当然ながら評判が落ちれば1組全体も肩身の狭い思いをすることが出てくるだろう。そしていくらブリュンヒルデの弟だとしても俺自身はISに関して素人もいいところだ。双樹技術も知識も何もかもが足りていない。まさか無理にでも追い詰めて俺を奮い立たせる環境をつくり、男性IS操縦者の存在をアピールしつつ俺を叩き上げる腹積もりだろうか。
セシリア・オルコットが謎の日本人差別発言を開始した時にも、本来ならすぐに注意すべきだった千冬はしばし瞑目して発言が終わるのを待っていた。今になって思えば、あれは俺が我慢できずに喧嘩に乗るのを待っていたのではないだろうか。だとしたら、やられたものだ。
今日も明日も、一夏は作為的なものを感じながら毎日を過ごす。・・・ちょっと考えすぎじゃないか?
2014年 10月 30日 00時 07分