つぶやき

海戦型
 
連続つぶやきSS:鬼、縁、そして翼③
少年は強い衝撃を受けました。自分の父親は、本当の父親ではないということなのだと直ぐに理解しました。親子という関係を理解していなかったから今まで疑問にも思わなかったのです。それだけに、少年は信じていたものがあやふやになって急激に心細くなり、女の人こそ嘘をついているのではないかと疑いました。大人はみんな父親に従っているから、父親の方が正しいかもしれないと思ったのです。父親に真偽を問いただすと、女の人は嘘つきだから信用するなと怒られました。

父親は直ぐに暴力を振るうけれど、言う事を聞いていれば褒めてくれるしご飯を与えてくれました。でも、女の人が言っていることがまったくの狂言だとは少年には思えませんでした。どちらを信用すればいいのか、少年はとても悩みました。剣の使い方を父親に教わる時も、女の人に知識を授かる時も、内心でずっと悩んでいました。悩む少年を見かねた女の人は、こっそり少年にあることを教えました。
「翼を持った一族には、その一族にしか使えない武器を持っていたそうよ。強い風の加護をうけた武器で、他の種族には扱うことが出来ないんだって。実は一度だけそれを見たことがあって……銀色の不思議な剣だったわ。もしもあなたがそれを扱えるのならば、父親は嘘つきね」
少年はそれを聞いて、直感的にその剣が父親の部屋に飾ってあるかの銀色の剣ではないかと思いました。いても経ってもいられなくなった少年は、父親の部屋に走りました。その心に、信じていた父親に裏切られる不安と恐怖を抱えながら。

何やらアジトの入り口が騒がしく、父親はそちらに向かったようでした。勝手に入ると怒られるだけに、今しかないと思った少年は部屋に飛び込みました。剣は相も変わらず眩い光沢を放っています。少年は内心の不安と真実を知ることへの恐怖から手を震えさせながら、恐る恐る剣を携え、鞘から刃を抜きます。それは片刃のカタナという剣でした。

その瞬間、少年の身体を今まで感じたことのないほどに心地よい風が包みました。それは今までに感じたことのない、包まれるような優しい風でした。そして――気が付けば、少年の背中には本人の意思を無視して飛びだした翼が現れていました。ですがその翼は今までのそれとは違います。茶色っぽくて荒い羽根は全て抜け落ち、その中から吸い込まれるほどに深い漆黒の双翼が現れたのです。少年は、根拠もないのに自分が空を自由に飛べるようになったのだと確信しました。 
ヤー☆冬兎
 
もしかして…
もしかして堕天使⁉︎
自由に飛べるっていいよね。うん