つぶやき

海戦型
 
スパロボの敵を語るだけ 3rd
 Zシリーズの敵を語り尽します。

 無韻Z。最近スパロボにありがちな「扱いの難しい部分を端折る」と「原作終了後参戦」が少ない、個人的にはとっても嬉しいシナリオです。ぶっちゃけ世界観やミステリアス雰囲気は無韻時代が一番完成していたと思います。で、そんなZシリーズの敵はといえば、カオスでめちゃくちゃな世界を生きるに相応しいブッチギリな連中でした。
 最初は味方、されどその善性がある一瞬を境に豪快にひっくり返る。おかしな世界におかしくなってしまったある種の変態性を剥き出しにした彼らの在り方は、どこかMXのラスボスにも通ずる雰囲気があります。その方向性は「ひたすらな妄信」。彼らの凶暴性は極めて個人的な方向に向かっていますが、元締めが世界レベルの事を起こしているが故にどこまでも破壊が拡大していく人間固有の破滅願望を感じさせられます。
 そしてその後に待つラスボスは……敢えて言及は避けますが、キレッキレの中ボスクラスを軽く凌駕するカオスの権化にして最悪の愉快犯。奴のせいでZが嫌いという人も噂によるといるらしいですが、私はあのブッチギリなキャラクターを越える敵を作るのは難しいだろうというぐらい稀有で貴重な敵だと思います。ちなみにあいつに嫌がらせをしたいなら男主人公推奨なのは既プレイの方はご存知でしょう。


 第二次Zいってみよう。携帯機じゃねーかというツッコミはお控えください。
 個人的に転換期なので具体名出していきます。ネタばれ注意です。

 アイムは単なる愉快犯的嘘つきなので、正直ちょっとキャラは薄く感じます。彼の場合はスフィアが主役たちの想像を超える力を持っていることを示すための存在という割合が大きすぎたか、或いはスフィア・リアクターの反作用で本来あるべき部分も嘘にすり替わっていたのかもしれません。

 まぁそれはさておき、私がここで感じたのがシュバルとウェインの違いです。
 シュバルは最初ガイオウの狗として登場しましたが、私は最初からこのシュバルという男に違和感を感じていました。口を開けばガイオウ様ガイオウ様と小物っぽい雰囲気を醸し出すくせにイザ戦闘になると明らかに武人然とした立ち振る舞い。おまけにパイロット技能に「極」。ガイオウに心底屈するようなヘタレだとは、私にはどうしても思えませんでした。
 そしてその予想は的中。シュバルはインサラウムの為に敢えて狗を演じているだけの立派な武人であることが判明しました。この時、私の中でのインサラウム株が上昇していました。

 そしてその株をストップ安まで落としたのがシュバルの弟子のウェインです。
 俺は強い俺は強いとベラベラ長い能書きを垂れ、俺はシュバル以上だとか機体も新型だとかさんざんビッグマウスを叩きますが、この時点では「極」も持っていないし、なにより強者の雰囲気が欠片もない。追い詰められてから「本気出してなかったぜ」と言い出しましたが、態度が非情に見苦しい。
 シュバルの生き様が言い訳なしで筋が通っていただけに、「これがあの男の弟子とはな……失望したぞ」みたいなバトル漫画のボスキャラの気分を味わいました。

 そのウェインも上司ジェラウドの死を境に成長する訳なのですが……私は正直ジェラウドもインサラウム株を下げた原因の一つだと思います。
 ジェラウドは物静かで王家に仕える武骨な武人で、「俺はこういう不器用な生き方しかできない」といった感じなのですが……インサラウム最強騎士のくせに活躍も大してなくあっさり死ぬ。つまり、設定ばかり先行して中身が地味なんです。ウェインを成長させるイベントとしての存在の側面が強い。ウェインが喋りすぎならジェラウドは喋らなすぎ。寡黙なキャラはその分存在感を出さねばならないのに、彼の場合は自分のことを喋らな過ぎて薄い存在になってしまっています。

 あとジェラウドからウェインに受け継がれる機体のディアムドなのですが、デザインが格好いい代わりに配色が抑えめになっています。ジェラウドの寡黙な雰囲気にはマッチしてますが、口が軽めのウェインが乗るにはちょっとミスマッチな印象が……。
 ただ、インサラウムは後半で王子が覚醒したりマリリンが腹括ったりと全体で言えば最終決戦に相応しい場が作り出されています。こういう展開は最初がマイナスから始まるからこそ最後の追い上げが熱いもの。ただウェイン部分は運悪く下げた分を補う程上がれなかっただけなのかもしれません。

 ラスボスのガイオウに関しては文句ありません。ド派手で傲慢だけど決して虚勢は張らないし、純粋に戦いを愛するが為に戦士に対する敬意が感じられます。再世編では意外な一面を見せつつも最終的には闘争にすべてのエネルギーを振り切る戦闘狂っぷりを見せつけ、最初から最後まで戦いを楽しみ切ったという一種の清々しさを感じさせる純粋なボスでした。

 最後に何故かシオニーちゃん。別に私はシオニストではありませんが、あの人の小物感は笑って済ませられる可愛さがある気がします。ああいう愛嬌のあるボスはスパロボでは少数派ですし、結構好きです。


 さて、第三次Zですが……正直オリキャラのクオリティは全体見渡しても中の下。なので問題児をピックアップしていきましょう。

 「三回行動おじさん」或いは「きたないフェリーニ」ことガドライト。みんな大好き運命に見捨てられてクズと化したおっさんです。その行動は一貫して陰湿。ひたすら陰湿。顔こそヘラヘラしていますが、自分の能力と立場を利用して地球に理不尽な嫌がらせを強い続ける彼の救いのなさは印象深いところです。スフィアの反作用もあり非常に複雑な心理をしており、しかも口だけでなく本当に強い。
 問題はそのクズになりすぎた言動です。無韻Zラスボスも高レベルのクズなのですが、彼の場合は普段ヘラヘラ上から目線のくせに追い詰めらると逆切れして暴力をふるうという酒に溺れたダメ亭主みたいなクズさ(というか、女性に手こそ挙げないものの本当に酒飲みのダメ亭主です)。言うならば圧倒的に小物なのです。その心理的な脆さが格を感じさせず、半端な印象を与える。
 恐らく元々そのようなコンセプトのキャラクターだったのでしょう。そこは納得できます。ただ、天獄編で生き残っていた意味は全く感じませんでした。何故なら結局人の話を聞かずに勝手に突っ走って死んだからです。娘二人が生き残ったんだったら自分も生き残って守る覚悟くらい決められなかったのか、というのが素直な印象です。

 ギルターも挙げておきます。しつこい小物です。いつもやられて帰っていくバイキンマン的な存在の扱いなのですが、半端に卑怯で半端に高圧的で半端に頭が悪く、更に言うとバイキンマンのような愛嬌も取って付けた程度しかないただの半端者です。精神的にも執念のようなものが半端で悪役としてそもそも及第点以下であり、滑稽な男に振り回されなければいけない味方の姿が滑稽に思えて虚しさしか感じません。

 そして一番の問題児、御使い4人衆。
 まずサクリファイ。ダメ人間にして出番が少ない上にわがままなので全然ボス感がない。ああー!とか叫んであっさりやられてしまうので本当に残念なお方です。

 次にテンプティ。敵サイドの存在であることがバレバレ過ぎる上に自分では碌に戦わず、出てきたと思ったらルルーシュに虐められてアドヴェントに殺されるだけの人です。様々な悪事が因果応報とばかりに自分に命中して死んだ自業自得のおバカでしかなく、トドメがアドヴェントに持っていかれるから感慨も皆無。虚しい。

 そしてハゲのドクトリン。御使い中で最も出番が少なく、最も魅力がなく、実は御使い内で最も現実が見えていなかった人です。そもそも主人公たちとの接触どころか出番そのものがわずか数話で、潜伏期間の長さに反比例して目立たないというセミも憐れむ御仁。この男もアドヴェントにやられて勝手に消滅します。虚しい。

 ラスト、アドヴェント。最初から怪しさ全開の嘘つき爽やかクズです。大物感を漂わせていたし実際かなり凄いことをしていたのですが、如何せん彼は行動内容のスケールが微妙に小さく、悪く言えばセコイ方法を多用するので自ら自分の品位を落としています。
 最終的にはラスボスとして君臨しますが、絶対者アピールをしすぎて現実のプレイ内容との乖離っぷりが滑稽に見えてきます。挙句は計画の内容に無理があったとかで勝手に内ゲバを起こして負け、負け惜しみに本音のクズ部分を全開にして味方陣営を罵ったかと思えばあっさり負けを認めて変態と一緒に因果地平の彼方へと旅立っていきます。うーん……大団円で終わったのはいいのですが、ラスボスとしての格は正直ガイオウとジ・エーデルの方が上でしたね。

 あ、飛び火になりますがヴィルダークも熱いけどちょっと残念な人ですよね。正直、使命感に縛られ過ぎて自滅した存在だという印象です。今までの犠牲と無念を背負って戦うと言いつつも自分が間違っていることはどこかで分かっている。その矛盾を抱えてでも押し通す意識が彼は少しばかり弱いです。案外、その欠点を補ってくれるのが他の次元将――ガイオウなんかだったのかもしれません。


 さんざん酷評のようなことを書いておいて今更とも思いますが、特に御使いに関しては出番を後半に引っ張りすぎたが故にシナリオが駆け足になった弊害だと私は考えてます。例えば第二次再世編は非常に高水準な作品に仕上がりましたが、その前の破界編はあまりにも世界の真実を伏せすぎているため作品一本を使っておいて世界の解釈が殆ど広がらないという結果に終わっています。時獄編も破界編に比べればまとまった話にはなっていますが。天獄編のスケールの大きさを考えると世界観の補てんとしては無駄遣い感が否めません。
 つまり、御使いは会社の販売計画の結果として生じたとも思われるこのズレのツケを支払わされた結果かなぁ、と。

 しかし、それでも好きだスーパーロボット大戦。
 特にクロスオーバーとしての質は近年更に高まっているように感じます。
 願わくば次のスパロボでは素晴らしい敵が出てくることを願って……話を締めくくらせていただきます。