つぶやき

C.D./hack
 
セリフー。
 ユキ

「悔しいよ。……―――――――――――――悔しいに決まってるだろ!?なんも知らない、今まで出て気もしなかった存在が突然湧いて出て今まで積み上げてきたもの全部奪っていったんだぞ!?世界でも何でもコントロールできて、皆を救える神様だと言うなら何故皆を救わない!!その力さえあれば世界を平和だの何でもできるじゃないか!なぜ真摯にそれを振るおうとせず、ちっぽけな僕をこんな地獄に閉じ込めてるんだ!?皆敵で!それでいてみんな幸せで!!僕ができなかったことを全部、簡単にやり遂げて!!そんな存在にちっぽけな僕が敵うわけないだろう!?ただ嫌だったから、目の前で死なれるのが、笑顔が消えるのが嫌だったからただこの拳を血に染めてやって来たんだ!!それがなんだ、あいつは血も流さずにやり遂げた!!つながりを全部持っていったんだ!!そんな存在に全部失った僕がどう戦えっていうんだよ――――――――――――――――ッッ!!」

「さいごですけど。ぼくをしんぱいしてくれてありがとう。くろいかみさま」

「どんな最期でもいい。ミンナガすクわれrなra.」

 未来ユキ

「此処が私の死に場所だ。聖杯は解体された。そろそろ私も死ぬのだろう。ランサー、ライダー、バーサーカー、キャスター、アサシン、セイバー、アーチャー……いくつもの犠牲があって、君は戦争を生きぬいた。生き残ることはできた。では次に、君は何をなすのか。――――――――――――――――幾何の時も経たことだ、きっと答えは出ているだろう?さぁ、聞かせてくれ士郎。英雄達や私や彼を見て、そして君が今まで選択してきた行動全てをまとめた答えを」

「私の死に場所は此処だ。だがひとつ言うなれば、好きな女の約束をまた破ってしまったことが後悔でならない。二人とも。いつか私が愛し、私を愛してくれた人がこの世界を憎んで壊しに来るだろう。その時は思い切りぶん殴って、今から私がいう事を伝えてくれ」

「間違っていた。ずっとそう思っていた。私のこの結末を私は後悔したのだろう。だが、切嗣や士郎に会って心の底から思えたことがある。正義の味方は苦悩し、戦い、利用されて朽ちていく。だがそれを聞いて我に返った。答えは得た。私は間違えていなかった。私は少しの人々でも、心に残る正義の味方になれたのだということを」

 哀しみ

「どこまで行ける正義の味方にお前はなれた。誰もがお前のその姿を見て英雄と言うだろうよ」

「ばーか、泣いてるガキ一人置いて今更帰れるかっての。だからよ、今だけは使わせてもらうぜ。―――――――――――――――SPIRITS!!」

「未来に命賭ける価値はある。大博打だ、感情王。一緒に命賭けようぜ」


リオンくーん

どこへ行っても周囲は赤く燃えている。本当に生存者などいるのかと疑ってしまうほどに。
ゆっくりと歩く。今のところ怪人はいない。ただ本当に人の気配など――――――――――――

前言撤回しよう、ある。それも人であっても人あらざる者の気配が。しかしおかしいのはこんな燃やされて何もない村に数体の怪人が何の用があるのだろう?

思わず足の速度を上げ、近くにいる怪人達に目を向ける。何かを中心に取り囲んでいるかのように見えた。中心にいたのは――――――――――――――――――

「あ」

思わず声が漏れた。中心にいたのは少女と少年だった。年齢は9歳くらいか。少年には見た所片手がない。少年は少女に覆いかぶさるようにしながらも、黒光りしているそれを残っている手で怪人達に向けていた。

少年は泣いている。銃声が響く。猛烈な吐き気と冷や汗が襲ってきた。思わず地に膝をつく。口を押えてもう一度見直した。そして。

気付いてしまった。

少年の手が、震えていることに。怪人達に銃弾など効かない。むしろ少年の怯える姿を恍惚とした表情で見ていた。

少年は叫んだ。ひたすら撃って撃って撃って撃ち続けた。――――――――――――それでも。

怪人達は無傷だった。

少年は泣いている。そして少女を片手でぎゅっと抱いた。覚悟を決めたような表情で、弾倉を取り出して、黒い拳銃を再び怪人達に向けた。また撃ち続ける。そして怪人の一体が少年へと確実に歩を進めていた。

もういい。

心剣で造り出した槍を投げる。怪人にそれは当たり、歩を進めていた怪人は力を失って倒れた。しかし少年は銃を下げない。こちらまで敵だと思っているのだろうか?

いや、違う。

「もういい」

リオンは少年を抱きしめた。とても細い体で、生きているのが不思議なくらいだった。その体は震えていた。

「もう撃たなくていいんだよ。…………誰も傷つけなくていいんだよ」

銃は今も怖い。恐ろしくてたまらない。けれど。この少年はもっと辛かったのだ。守るために、怪人であろうとも撃たねばならなかったことが辛くてたまらなかったのだ。怖くてしょうがなかったのだ。

だから二度とあんな思いをするのは俺だけで充分だと。リオンはそう思った。

怪人が隙を見て襲い掛かってくる。瞬時に抜刀して切り裂く。

怪人の一人が前へ出て言った。

「なるほど、貴様素晴らしい能力を備えているな改造人間か?敵でも味方でも関係はない。私の名は鋼鉄参謀。貴様を武人と見た!故に聞こう……貴様の作戦目的とIDは!?」

子供が泣いている。この二人を守るため、あの時の自分の様にはしないため―――――――――――

この瞬間だけ、リオンは名乗った。

「正義」

「歌原理央」

そして少年達の前に出るとリオンは二人に向け笑顔で言った。

「……なあ聞いてくれるか……」

きっと日本語分からないだろうと思い、ゆっくりと紡ぐ。

「お・れ・は・み・か・た・だ 」

少年は泣きやんだ。なぜ泣き止んだかはわからない。だが、その笑顔に信頼できる何かを、温かい何かを感じたのだ。

同時に怪人達は、三人のライダーを相手にしてひるまなかったほどの鋼鉄参謀ですら自分たちに向けられた冷たい視線に戦慄した。

「さぁ、かかってこいよ」

守る戦いが始まった―――――――――――――――――――――!!