第十二話 ベーネミュンデ侯爵夫人(その6)
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……。ベーネミュンデ侯爵夫人の産んだ子が死産だったことだな。確かにブラウンシュバイク大公とリッテンハイム侯では侯爵夫人は興奮するだろう。修羅場になりかねない。
「まあ不本意では有ろうが乗りかかった船と言う奴だ。今少し手伝ってくれ」
「……止むを得ませんね」
溜息交じりの返答だったがリヒテンラーデ侯は嬉しそうに頷いた。もしかするとこの老人、ベーネミュンデ侯爵夫人が苦手なのかもしれない。そう思うと少し可笑しかった。それにしてもブラウンシュバイク公は若いだけに何かと厄介事を押し付けられるようだ。それも可笑しかった。
その後は少し雑談をした後散会することになった。リッテンハイム侯とリヒテンラーデ侯を置いて先に失礼する。応接室を出るとキルヒアイスがフェルナー大佐と共に奥から出てきた。二人とも笑みを浮かべているところを見ると楽しい時間を過ごせたらしい、結構な事だ。俺も出来ればそちらでシミュレーションでもしていたかった。
ブラウンシュバイク公が俺達を見送ってくれたのだが驚いたことに外にまで出て見送ってくれた。公が話しかけてきたのは地上車に乗り込む時だった。どうやらそれが目的だったらしい。
「とりあえずグリューネワルト伯爵夫人、ミッターマイヤー少将の身は安全なようです」
「感謝しております」
社交辞令ではなかった。今回の一件、俺は動かずに済んだ。貴族達も俺を危険視することは無いだろう。そして公が俺に好意的だという事も改めて貴族達は知ったはずだ。収穫は大きい。
「とりあえずです。今回は凌ぎましたが次は分からない。連中は私も、そしてミューゼル提督にも好意を持っていない。十分に気を付けてください」
その通りだ、ブラウンシュバイク公に礼を言って地上車に乗った。公は俺達の姿が見えなくなるまで外で見送ってくれた。
帝国暦486年 8月12日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 エーリッヒ・フォン・ブラウンシュバイク
ラインハルトの乗る地上車が小さくなっていく。それを見ながらフェルナーに問いかけた。
「どうかな、アントン。キルヒアイス中佐は」
「出来るね、ただの幼馴染ではないという事か」
他に人が居ないせいだろう。口調が友達の口調だ。だがそれが嬉しかった。生臭い話も軽やかに話せる。
「あの二人、どっちが上かな」
「もちろん、ミューゼル提督さ」
俺の言葉にフェルナーが肩を竦めた。
「やれやれだな、キルヒアイス中佐の上にミューゼル提督か……。敵に回せば容易ではない。卿の気持ちが良く分かったよ」
「それが分からない連中も居る。侮っている奴らはいずれ酷い目に遭うだろう」
ラインハルトの地上車が視界から消えた。それを見届けてから踵を返す。
「侯爵夫人の一件はかたが付いた、そう思って良いのかな」
気楽
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