第T章:剣の世界の魔法使い
魔法使いVS地獄の王子
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もしれない。キリトを見せしめに殺されて……。
そういえば、キリトはどうなったのだろうか。アスナが助けに来たようだったが……。
シェリーナは、崖から身を乗り出し、眼下のキリト達を探し――――
「あ……」
そこでは、キリトとアスナが唇を重ねあわせて抱き合っていた。
キリトは、アスナを選んだのだ。
「……当然、ですよね……」
「?……どうかしましたか」
「いえ」
しかしシェリーナは、自分の眼から何か熱いものがこぼれていくのを止めることができなかった。
わかっていた。シェリーナはあの日、キリトの事をあきらめたのだ。自分が到底追いつける存在ではない。自分では、彼の足手まといになってしまう。そう、自分を戒めて、彼の元から去ったはずだ。キリトの隣には、自分のような脆弱な女ではなく、アスナのような強い人がいるべきなのだ。そう、自分で見切りをつけたはずだった。
けれども、涙はいつまでもいつまでも流れ出てくる。止まらない。SAOのオーバーな感情表現機能が恨めしい。ドレイクに、心配をかけてしまったではないか。
「ど、どうしたんですか!?何か、怪我でも……」
「いえ……いえ……なんでも、なんでもないんです……」
それでも、涙は止まらなかった。心の中に、ぽっかりと穴が開いたような気分だった。
「うっ……うっ……ふぅ……うぅ……ぁぁ……」
嗚咽を漏らすシェリーナの背中に、ふと、意外とがっしりした掌が当てられる。掌は、シェリーナが落ち着くまで背中をさすってくれていた。ドレイクだった。
「……落ち着きましたか」
「はい……」
ドレイクは、苦笑いを浮かべた。
「ごめんなさい。ハラスメントフラグをたててしまったようです」
「いえ。大丈夫です」
視界に表示された【対象を黒鉄宮に送りますか?】の表示の、【No】を選択する。紫色の警告ウィンドウは、しゅわっ、という音と共に消滅した。
「……何かが失われたときに、それと対価に何かが手に入る。この世界は……いえ、この世はそんな法則の元に動いてます」
ドレイクが、ポツリとつぶやいた。
「それは、魔法のようなものです。私の《魔法》も、決して無対価で力を発揮できるものではない……シェリーナ。何かを失ったのであれば、それによって得られたモノを探してください。それが、もう二度と《失わない》ことへのヒントになります」
「……はい」
何を、得たのか……。シェリーナは、それを探しながら、立ち上がった。
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