第2部:学祭1日目
第6話『思慕』
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榊野学園学祭、当日……
「おはよう!」
元気よく唯は、食卓に座る家族に声をかける。
きょうは両親が特製の弁当を作ってくれた。
「おはよう、唯」
「いよいよ、今日だな」
両親はその日も働くので、見学ができないが、期待はしているらしい。
「榊野の学祭は2日間あるけど、2日間ライブは大変だろうな。」
「ううん、お父さん、」唯は首を振って、「私たちが演奏するのは1日目だけだよ。
大丈夫、しっかり演奏して、放課後ティータイムの存在をアピールするから」
「楽しんできてね。それじゃ、いってきます」
青い包みの弁当をおいて、両親は家を後にした。
憂は朝食のみそ汁を作っているようだ。
ただ調理中にしては、金属のこすれあう音が、カララ、ゴロロとなっている。
「憂も来てね。ライブは今日だけ、午後の3時からだから、気をつけてね」
「そうだなあ……。考えておくね」
味噌汁をかき回しながら、憂はつぶやくように言った。
「じゃ、行ってきます!」
唯は憂の奇行が気になった。
あのメモは一体何だったんだろう……。
それを頭を振ってかき消して、踵を返して家を飛び出した。
「あ、純ちゃん!」
ギターを抱えて外に出ると、癖っ毛、ツインテールの憂の友達が待っていた。
「おはよう、唯先輩。いよいよライブですね」
その友達、鈴木純が手を振りながら唯に挨拶をする。
「ライブは今日だけだからね。憂と一緒に見てきてね! じゃ、いってきます」
駆け足で学校へ向かった。
「おはよう、憂! あがるね!!」
純は、友人の家の玄関から、勝手に台所に飛び込んでしまう。
「あ、純ちゃん、おはよう……」
少し振り向いて、憂は再び鍋をかき回しはじめた。
「いつまで料理作ってるの? 唯先輩行っちゃったよ。」
なれなれしく純は近づき、鍋を見た。
ぞっとなった。
憂がかき回している鍋には、みそ汁も何も入っていなかったのだ。
空の状態でお玉をかき回していたのである。
「な……どうしたの、憂…。最近、元気ないけど……」
「ん?」
「あ、そっか! そういえば唯先輩に男ができたって噂だよね。まあ、仲の良いお姉ちゃんを取られた気分になっているのは、分からなくないけど」
ガシャン!
憂は激昂してお玉を床にたたきつけた。冗談半分で言ったつもりだったのだが。
「あ……」純は後ずさりしながらも、「と、とりあえず、落ち着こうよ。
そうだ、榊野学園の学祭行こうよ。こういうときには、明るくパーッといくのがいいのよ、パーっと!!」
「そうだ、マコちゃんにメール!」
走りながら、唯は携帯でメールを入力し始めた。
あの日から、誠とは毎日メールのやりとりをしている。
今日は特に、それが楽しみで仕方な
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