暁 〜小説投稿サイト〜
私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?
最終話 迎えに来たのは彼女の方ですよ?
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「あんなの、どうやって相手をしたら良いって言うのよ!」

 異界化したコミュニティの元農耕地に、悲痛な美月の叫びが響く。

 その美月の声に続く黒き死に神の斬撃!
 それは、死そのものを振り撒き、すべての生命を刈り取る死に神の一撃。
 いや、おそらく穢れを嫌うハクに取ってその一撃は、掠る事さえ致命傷に至る斬撃であろうか。

 しかし!
 その死を招く斬撃も、身を翻したハクの長い髪の毛を僅かに一房、刈り取るに留まる。

 ――が、しかし、一度や二度、攻撃を回避された所で悔しそうな雰囲気ひとつを発する事もなく、右上段から手首を返しての左下段、そしてまた右上段からと矢継ぎ早に鎌を振るう黒き死に神。
 その様は正に死に神に相応しい姿。この目の前の巫女服姿の少女を。そして、彼女の背後の存在するすべての生命を刈り取るまでは絶対に止まらないかのような勢い。

 振るった鎌が完全に振り切られる前に、更に続く斬撃が放たれている状態。
 ただひたすら続けられる力押しの猛攻。そもそも、鎌のような武器に決まった攻撃方法など存在しない故の、この連続攻撃。

 但し、ハクはその攻撃を冷静な視線ですべて紙一重にて躱して行く。
 そう、美月は知って居る。この状態……。一見して死に神の猛攻に対して打つ手がない状態に見えるこの状況は、むしろハクのペースで有る事を。

 彼の剣は後の先。先手は常に相手が取り、その攻撃が自らに届く前に相手を刺し貫く剣。この猛攻の最中に完全に彼を捉えられない限り、死に神の方にも絶対の勝機と言う物は訪れない。
 しかし、相手はどのような傷も立ち所に回復させて仕舞う不死に近い存在。
 このままでは、彼の方にも勝機が訪れる事はない。

 双方決め手を欠く千日手の状態。
 ……いや、現状だけで言うのなら、疲れを知って居る存在の彼の方が不利だと言わざるを得ない。

 美月はそう思考を巡らせ続ける。
 何故か、無意識の内にハクの事を『彼』と表現しながら……。
 まして、美月自身はハクが剣を振るう事を知ったのは、先ほどバンダナの青年を相手にした時に初めて知ったはず。
 しかし、彼女は何故か、ハクの剣が『後の先』で有る事を知って居て、現在の戦いの推移が彼女のペースで有る事も何故か知って居る。
 そして、自らのその考えをまったく疑問に感じる事もない。

 円を描くように回避を続けるハク。その動きは正に舞うが如し。

 死に神の鎌が振り下ろされる瞬間には、身体を低く大地に手を添え、
 下段から薙ぎ払われる際は、半歩足を引くような形で鎌に空を斬らせ、
 そして、刃の攻撃の合間合間に放って来る石突きに因る攻撃も軽くいなして仕舞う。

 現在の状況。一か所に留まる事なく戦い続けるハクと黒き死に神の攻防は、美月の弓で
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