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第一章〜囚われの少女〜
第十五幕『悪魔の所業』
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今この世に己の命が存在するのは、どうしてなのだろう」
己の命、愛する者の死、自分を陥れた神のような存在。
その何もかもを否定するかのように、孤独な男は呟いた。

「何もかも信じられない、ジュリエッタはきっとまだ生きている」
黒く、その想いはどこまでも黒く、己のその運命を染めてゆく。
ガラスのように透明で、純粋な信念はもろく崩れてしまった。
 それからエリオは、孤独な時間を幾夜も過ごした。
綿花のようにたおやかだった恋心は、憎しみの色に染められた。
その色がそこから滴る程までに。

『その目で確かめたくはないか?
ジュリエッタが生きているのか死んでいるのか』

 夜になると独房の前を悪魔が、外の自由さを見せつけるかのように何度も横切る。

『お前は易々と信じているつもりか?
あんな遣いの戯言を』

『お前が死んだと聞かされて、すでに姫は他の男のものになっているのさ』

『お前はただの捨て駒に過ぎなかったのさ』

『姫は自分の生活が退屈だっただけじゃないのか?』


――


 そんな夜を幾夜も過ごした男。

『此処ヨリ出でて、復讐ヲ。
我を此処へ閉じ込めタ、非道な国王ヲ。
己の我儘に巻き込み、遂にハ我ヲ見捨てタ冷酷ナ姫ヲ』

疑心暗鬼を生じ、ついには自我を失った。
男の恨みはその身を真っ黒なものとし、悪魔の騎士となり果ててしまった。

 その存在は惨劇を呼ぶ。
一つの歯車は孤独の中で大きな存在となり、多くの犠牲を生むこととなる。
巨大な歯車により飲み込まれ、もろく儚くつぶされる。
狂った時の歯車は、加速することさえも自らの原動力とし、ただひたすらに加速し続ける。
この惨劇を止めることは、もはや誰にもできないだろう。

『壊シテヤル、此ノ国ノ全テヲ』

 雷が轟く、薄暗い灰色の空。
分厚い雲がその国すべてを覆い尽くした。


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