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第一章〜囚われの少女〜
第十一幕『逃げた小鳥』
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の♪」
これは名案、とでもいうかのように団長は生き生きとしていた。

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「我が美しき姫――ジュリエッタ。この国の騎士でありながら、私はあなたのことを愛してしまった。これはきっと、天より与えられた罰なのだ」
役になり切った様子で、シドは片方の手を胸にあてた。
「ああ、エリオ。あなたのそれが罰だというのなら、私はなんて罪深いの。もういっそ、姫という名を捨ててしまいたい♪」
対するジュリエッタ役はシドよりもたくましい体つきをした男――団長だ。シドの妄想していた“ジュリエッタ”像は、その瞬間に打ち砕かれた。
「団長、それ最高!」ミカエラは目の端に涙が滲むほど笑っている。
「ラ、ライラさん……」こうなってはまるで喜劇だ。
――この、演劇というものは役の演じ方一つで喜劇にも悲劇にもなる。そういう事もあり、色んな人間が色んな役ができるようにしているのだ。「喜劇も悪くないわねぇ♪」
 一人一人が、さまざまな仮面をもっている。そしてこの仮面は、つける人物によって物語が変わる。
 それから夜は更け、港へ着く予定までの時間は刻一刻と迫る。
「明日に備えて今日は寝ましょ。ジャックは……答えによってはお互い覚悟が必要ね」解散の合図とともにそれぞれ席を立ち始める。
「その時の計画は、また港へ着いてから考えるわ。港へ着くのは明日の早朝。このまま真っ直ぐ船が進んでくれればだけどね」

「嵐が来ても大丈夫さ、この船はそんなにヤワじゃない。なんたって、蒸気と動力のハイブリッド飛行船だぜ?」造船の知識が少しばかりあるシドは得意げに笑った。
「壊れた時は、シドがいるから大丈夫ね♪」「ああ、俺に任せとけ」

――そして、夜が明けた。

 早朝――
「あそこがオレリアの港だな」
船の先頭を見張っていたシドは、双眼鏡の向こう側を見据える。しばらくすると、“演劇団『マスク・パレード』”の一行を乗せた宙船は高度を下げ、そのままオレリアに到着する。「さぁ、碇を降ろすぞ!」
 シドは意気揚々としたステップを踏み、バレエダンサーのようにその場でくるくると回り始める。どうやら、何かの役になりきっているようだ。引き締まった体で軽快に踊る。
 船乗りたちは、閑静な港に荷を降ろす。その目には、シドの様子が何とも可笑しく映った事だろう。構わず得意げに飛び上がり、その姿をシドは人々に見せつける。早朝というのにもかかわらず、オレリアの港は人々で賑わっていた。
「ごらんの皆様方、はじめまして! 演劇団『マスク・パレード』でございます。わたくし、シド・ガルドと申します。空の日が最も高く上る頃が劇の始まりでございます。わたくしたちの芝居をご覧くださいますよう、どうぞごひいきに願います」お辞儀をした後、人々の死角に消えた。
「アンタって……やっぱバカねぇ」
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