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少女1人>リリカルマジカル
第二十六話 少年期H
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いるはずのないところだった。

 ……うん、そのはずだったんだ。


「――あれ? こっちらへんに行ったと思ってたんだけ……あっ」
「あっ」

 ゴガンッ、と角を曲がった先に何故かいたガキと正面衝突した。あまりの衝撃にお互いに地面に片手をつき、もう片方の手で頭を押さえながらまるで地の底から這い出るような声で呻き合う。

 なんか上空から、『路地裏に響くゾンビのような呻き声。わぁ、ホラー空間』とのんきな声が聞こえてきた。2人いたのか、という考えもよぎったが……その前にこの状況見た第一声がそれってどうなんだ!?

「お…い。ちょっと、コーラルさん。まずは心配するのが先じゃないか?」

 俺とぶつかったガキも同じことを思ったらしい。涙目になりながら反論している。まださっきのダメージでふらふらする頭に俺は手を当てながら、そいつの言葉に心の中で同意した。というか、もう喋れるぐらい回復したのか。お前絶対石頭だろ。

『あ、すいません。あまりにマッチした感じでしたので』
「……まぁ確かにゾンビっぽくはあったか。『うーうぅー』とか『あーあぁー』とか言ってたし。…なんか赤ちゃんみたいな感じもするな」
『路地裏に響く赤ちゃんの声も結構怖いと思いますよ』
「あ、じゃあさ。『うーうぅー』の後に『ウマウマ』つけとけば怖くなくね? ゾンビも腰振って踊りだすかもよ」

 おかしい。なんでいつの間にか、怖くない路地裏シチュエーション作りの話になっているんだ。しかもわけがわからない。あと、こいつら完全に俺のこと忘れているよな。痛みも少し引いてきたため、改めて顔をあげてそいつらを観察してみる。

 ガキの方はやや癖のある黒髪に黒い目をしているが、かすかに入り込んでいる光に当たってプリムラのような淡い紫のようにも見えた。同い年ぐらいで高すぎない通った声が俺の耳に入る。逆にそいつよりも高めの機械的な音声はデバイスだったようだ。深い緑色の宝石が宙を漂っている。

 俺はそれを見て小さく舌打ちをする。少なくともデバイスなんて高価な物を持っている時点で、こいつは俺とは違うのだろう。何よりもまずいのは魔導師であるということだ。なんでよりにもよってこんな場所にいる。俺は自身の不運に苛立ちが募った。


「あ、いけね。えっと大丈夫か? すげぇ音しちゃったけど」
「……別に。もういいからさっさと行けよ」
「いや、でもさ――」
「聞こえなかったのか。てめぇみたいなやつがなんでここにいるのかは知らねぇが、こんな所2度と来ない方がいいぞ」

 ばつが悪そうに話すそいつの言葉を遮る。確かにこいつはよそ見して突っ立っていたし、かなり痛みはあったが、前方を見ずに走っていた俺にも非はある。つまりお互い様。何よりもめんどくさいことにこれ以上関わりたくなかった。
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