第三部 1979年
孤独な戦い
匪賊狩り その1
[1/4]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
インド洋に浮かぶセイロン島。
この地にあるスリランカは、南アジア最大の仏教国である。
伝承によれば、紀元前4世紀にヴィジャヤ王子がインドから来訪し、その子孫がアヌラーダプラに都を構え、シンハラ王朝を建国したとされる。
また、ヴィジャヤ王子の子孫から、シンハラ人がはじまったとも伝わっている。
史実でも、インドとも非常に近い距離にあるため、紀元前250年にはすでに仏教が伝来した。
その後、小乗仏教(上座部仏教)の拠点となり、ここから12世紀ごろにかけて東南アジア諸国に伝播していった。
しかし、17世紀以降の列強侵略により、一時的に仏教は衰えるも、18世紀半ばにビルマやシャム(今日のタイ)から再伝来した。
19世紀にはいると、英国統治下という背景の中で、シンハラ人民族主義という形で、今日の仏教の隆盛を取り戻した。
インド亜大陸に支配権を持っていたイギリスは、抵抗を続けるシンハラ人を差別し、タミル人を重用した。
彼らは少数者でありながら、英国の支配下で農場の労働者としてインド南部から大量入植した。
このことは、今日まで続くシンハラ人とインド系のヒンズー教徒であるタミル人との間に軋轢を生じさせることとなった。
さて、マサキたち一行といえば、モルディブを抜け出してスリランカに向かった。
スリランカの北部を根城にするタミル・イーラム解放の虎を壊滅するためである。
BETAに侵略された世界の並行世界である出身のマサキにとって、タミル・イーラム解放の虎は危険な存在であった。
このテロリスト集団の為にスリランカは30年近い血みどろの内戦を繰り広げた。
では、テロ集団、タミル・イーラム解放の虎とは、何者か。
この組織は、1976年スリランカ北部にタミル人国家建国を目標として作られた武装集団である。
スリランカの少数民族で、ヒンズー教徒のタミル人。
彼らは、スリランカの多数を占める仏教徒のシンハラ人との融和を拒否した。
そして、排他的で民族主義的なテロ集団を作り上げた。
無論、インド洋に浮かぶ島で他国の援助なくして存続できない。
内戦中に北部に駐留したインド軍によって支援を受けた彼らは、勢力を拡大し、航空戦力と水上戦力を持つほどとなった。
タミル・イーラム解放の虎は、一時帰国軍をもしのぐ武力を手に入れた。
それ故に、スリランカの国情は混乱し、相次ぐ首脳暗殺や無差別テロを繰り返すほどであった。
マサキはスリランカにとって思うところはない。
思い出されるのは、上座部仏教の一大拠点ということである。
信心深い人々が、シャムやビルマに通って、受具式を行い、古代からの仏教信仰を復興させた土地ということぐらい。
付け加えれば、1952年のサンフランシスコ講和条約の際に、時の首相が、仏教の精神を
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ