第一章
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西王母の桃
漢の武帝の頃のことである。
武帝に東郡の民が侏儒、即ち小人を献上した。小人は人の掌位の大きさで質素だが生活な服を着ている若い男だった。
その男が自分に一礼してから人間の言葉を喋りかつ学識が備えているのを見て武帝は笑って言った。
「これは珍しい、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「この小人のことをより知りたくなった」
皇帝の玉座から朝廷の臣達に言った。
「こうしたことについては東方朔か」
「ですな、東方朔殿ならご存知でしょう」
「この小人のことも詳しく」
「ではですね」
「すぐに東方朔殿をこの宮廷に呼びますね」
「そうするとしよう」
武帝がこう言うとだった。
鯰の様な髭を生やし飄々とした外見の男が朝廷にひょっこりと出て来た、そのうえで武帝の前に拝謁して言ってきた。
「お呼びでしょうか」
「待て、今呼ぶと言ったところだぞ」
武帝は自分に拝謁した男に驚いて言った。
「そなたを」
「聞こえましたので」
「それでか」
「はい、陛下や使者の肩にご苦労をかけるのはよくないと思いまして」
その為にというのだ。
「参上しました」
「そうであったか」
「左様であります」
「流石は仙人と言うべきか」
武帝はその男東方朔を見て述べた。
「呼ぶと決めてすぐに参上するとはな」
「左様ですな」
「流石は東方朔殿です」
「全く以て見事ですな」
廷臣達も驚くばかりだった、そしてその驚きが落ち着いてからだった。
武帝は東方朔に対してあらためて問うた。
「そこにいる小人であるが」
「何と、この者は」
今度は東方朔が驚いて言った。
「これはいけませぬ」
「?何かよくないのか」
「西王母様のところの庭師ではないですか」
「西王母?崑崙のか」
「左様であります」
「はい、実はです」
その小人も言ってきた。
「私は崑崙の庭師でして」
「そうであったのか」
「旅に出て東郡に出たところで」
「人に見付かってか」
「そこの百姓に。それで百姓と話して」
「実はです」
皇帝に小人を献上した民も言ってきた、こちらは初老の男だ。
「それで陛下にこの人を献上するとわしが褒美を貰えると言われて」
「朕に献上したのだな」
「そうした次第でして」
「その後は陛下にお話して方術で崑崙に戻ろうと考えていました」
「そうであったか」
「ですが」
小人は東方朔を見て言った。
「この悪童と会うとは」
「東方朔が悪童とな」
「この者は随分悪戯好きでして」
こそこそと廷臣達の中に隠れようとする彼を見て武帝に話した。
「崑崙の桃を三度も盗んで食べています」
「そんなことをしておったか」
「西王母様のお庭の桃を」
「それは
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