暁 〜小説投稿サイト〜
仮想空間の歌う少年
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「先生!」
「早く雪宮君!」

僕と詩乃は特別病棟に入り倉橋先生がすでにモニターでコンコンの容体を確認していた。そして近くのベッドには明日奈がすでにアミュスフィアをつけて寝ていた。そうして倉橋先生からアミュスフィアを一つ貰う。ちなみにALOのメモリーは病院に置いてあったのでその点はラッキーだった。

「…でも僕は…。」

僕はもう一つのアミュスフィアを着けるのを躊躇ってしまう。

これでコンコンと合うのは最後かもしれない。だけど…。

「さっき言ったでしょ?」

すると詩乃がいつの間にかに僕のとなりに来て肩をポンポン叩く。そうしてそのまま肩を持ちながら。

「あーだこーだ考えてないで。行ってみなさい。
それが佳らしいわよ。」
「…。」

僕はアミュスフィアを恐る恐る着けて、ベッドに横たわる。そしていつも通りの笑顔で。

「…ありがとう。詩乃。」
「礼はいらないわよ。」
「…。」

さあ、行こう。いつもの魔法の呪文を。
僕らしく歌いながら。

「リンク♪スタート♪」

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「君も大変だね。」

佳が仮想空間に旅立つと先生は苦笑いしながら私に話しかけてきた。

「佳がウダウダするのはもう、慣れてますから。」

そう、佳はいつだって笑顔の仮面を被り、常に余裕をもって本心を掴ませないけど。非常時は本当に脆い。誰かが絶対に支えないと壊れてしまう。

あの郵便局の時の様に。

「まあ、ウダウダするのが雪宮君らしいね。」
「そうですね。」

倉橋先生が苦笑いのまま話す。私は相槌を打つと倉橋先生は少し真面目な顔で。

「今だから話すけど…
あんな風にウダウダするのは紺野君の前だだけだったんだ。」
「え?」
「君なら分かってるとおもうけど…。雪宮君はいつだって本心を掴ませないけど。紺野君のはちゃめちゃな前では唯一本心を出していたんだ。」

倉橋先生は悲しい思い出を思い出す様に遠くを眺めると私に向き直る。

「だから君…朝田君はとても凄い。あの雪宮君の柔らかい。でも壊れない仮面を簡単に壊したんだから。」
「…。」

私はその話を返す事が出来なかった。ただ佳の寝顔を見ることしか。
私は佳の手を握る。

「大丈夫。
…佳なら決められるよ。」
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