三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第44話 あなたは、嘘をついています
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「嘘?」
シドウの問いに、聞き返すアラン。
「アランさん、あなたは『不運』と言っていましたけど。本当は心のどこかで運がいいと思いませんでしたか。ホッとしませんでしたか。とめてくれる人が来てよかったって」
「思いませんでしたが?」
即答。表情も変わらない。シドウのいる方向から――山頂方向から――の風で、彼の赤い髪をなびかせただけだ。
「嘘だと思います。あなたは本当は優しい人です。誰かにとめてほしかったんです」
「残念ですが、私は優しくありません」
またアランが手のひらを構えた。
「やめてください。戦いたくありません」
抗議は無視され、アランがその手のひらを斜め下に向けた。
シドウはその瞬間に空へと飛んでいた。
直後。シドウが立っていた場所に、小さな爆音とともに、炎が地面から円形に出現した。先ほどのような荒々しい火ではなく、シンプルで無駄のない淡い色の、しかし相当な高温と思われる炎だった。
「よい反応です。ですが空というのは――」
すぐにアランの手が上空を向く。
今度は轟音とともに、大きな火球が発せられた。
何か大きなもので殴られたかのような衝撃とともに、強い痛みがシドウの全身に走った。
バランスを失い墜落すると、また打ち付けられる痛みが全身を襲う。
「格好の的ですね。ドラゴンの飛行は小回りがあまり効かないようですので」
そのアランの指摘、シドウには遥か遠くから聞こえてくるように感じた。
命中した魔法の爆音が大きく、体の外と内どちらからも響いてきたため、耳が一時的に遠くなったのだ。
「シドウ!! 大丈夫!?」
「大丈夫」
今度はティアが駆け寄ってきてしまった。
彼女の声がクリアに聞こえたおかげで耳はすぐに回復したと理解しながら、体を起こす。
「シドウ。腹くくって」
「……」
ティアがシドウの大きな腹板をポンと叩いた。
「どう考えても決裂ってやつでしょ。話し合いが無理なら戦うしかないよ」
「でも、相手が――」
「相手はあんた自身とあんたの母親を殺そうとしてる敵!」
そう言うと、ティアはシドウの前に出た。
「ていうかアラン。黙って聞いてればさあ」
手を腰に当て、赤髪の青年を見据えた。
「あんたが過去に酷い目に遭ったってのはわかるよ? でももう何年経ってると思ってるの? しかも一緒にいたころそんな話一回もしたことなかったよね? なんで? シドウがドラゴンの子って知っていたわけでしょ? 言えばよかったよね?」
「……」
「当ててあげよっか? 言ったら、シドウのことだからあんたに謝り倒してたと思うけど、それが怖かったんでしょ? さっき復讐のために生きるとか言ってたけど。実の
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