三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第43話 許しては、もらえないのですか
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んなこと……」
「いや、私からもそれをすすめよう。シドウ、離れていなさい」
「――!?」
死刑宣告されている本人から声が飛んできて、シドウは驚く。
「このような日がいつか来るのかもしれない、とは思っていた」
「母さん……」
「よい御覚悟です。硬い爪を振るうのか、それとも鋭い牙で噛みつこうとするのか、燃え盛る炎を吐くのか。どうぞご自由に、そして全力で抵抗なさってください。あなたがどんな手段に打って出ようとも、私は確実に死刑を執行します」
その煽りには、自信と余裕が満ちているようだった。
だが。
「抵抗するつもりはない。望む方法で処刑してほしい」
デュラが静かに自らの刑死を受容すると、赤髪の青年の表情は一変した。
「それでは意味がありません。私がこの日のためにどれだけの準備と修行をしてきたか。抵抗していただいて、そして命が尽きるまで苦しんでいただかないと困ります」
「……。今の私は人間に生かされている身だ。人間に手をあげるつもりはない。ただもしも一つ願えるのであれば、死ぬ前にドラゴン族族長の娘として、そしてドラゴン族最後の生き残りとして、そなたに詫びを入れ――」
デュラがそこまで言うと、アランの濃い碧眼が強く光った。
赤い髪が激しくざわつく。地面に広がる薄い植生の揺れが、彼を中心に水面の波紋のごとく広がった。
「ふざけるなっ」
シドウらが行動を共にしていたときには聞いたこともなかったような口調。
デュラに向けられた手のひらが、強烈に発光した。
爆音は激しかった。
あたりは濃い煙に覆われ、視界が失われた。
煙が晴れると、デュラの前方で翼を畳み、受け身のような姿勢で黒煙をあげるドラゴンの姿があった。
「シドウ!」
これはティアの声である。
シドウがとっさに間に入り、アランが放った魔法を体で受けたのだ。
「アランさん……」
その場で態勢を戻すシドウ。その声は一段と落ちくぼんだ。
自身の体からは黒煙が上がっている。が、無事だったからである。
兄弟たちを焼いた火魔法は、おそらく下から高温の炎を出現させたものだろうと思われた。
地面から火を出し、周りの木々は焼かず、対象のみを一撃で倒す。
通常はそのような火魔法の操作は不可能だ。伝説の勇者の仲間であったという魔法使いを師匠に持つ彼だからできた技だと思われた。
だが、今のはただの大火球。鱗で受ければなんともない大火球。
計算づくで出した魔法ではなく、きっと衝動的に放った一発――。
「なるほど。わかりました。邪魔をするということですね」
口調を元に戻した赤髪の青年は、一つ大きく息を吐いた。
「復讐成就の前に、一度は一緒に旅をした者
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