Hey baby. How long will you stop crying. You will be smile soon.
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大量のキラーアントに囲まれた中で、リリは双剣を抱いていた。
今のリリに唯一のこされた物。
“灰色にそまった"双剣。
金と朱の鮮やかさは消え、刃は間引かれたように死んでいた。
中央の宝石でさえも石色になった。石のなまくら。
目の前では、キラーアントがカチカチとはを鳴らしている。
「悔しいなぁ…」
リリは冒険者が嫌いだった。
だが、それよりも自分自身の事が嫌いだった。
「神様…」
リリは誰かに頼られたかった。
必要とされたかった。
使い潰されるのではなく、真っ当に役に立ちたかった。
「どうして…」
自分以外の誰かになりたかった。
発現した魔法も、そんな願いの現れのような物だった。
「どうして…リリをこんなリリにしたんですか…」
恨み言の相手は、ソーマなのか運命の神なのか、それとも世界を作った誰かなのか。
ギシャァ! とキラーアントが威嚇する。
「いえ…もう…関係ないですね…」
キラーアントの包囲が徐々に小さくなる。
「さみしいなぁ……………ああ…そうなんだ…リリは…寂しいんだ…」
誰かと居たかった。
誰かの側に居たかった。
「でも…もう…」
やっと還れる。やっと終われる。
「ああ……ベル様…」
最後に口から出たのは、あの兎のような男の子の名前だった。
キシャァァァァァアアアアァァァッッ!!!
ついにキラーアントが、リリに飛びかかる。
無意識に強く握り締めた双剣が、仄かな熱を放つ。
刹那、リリを灼熱のゆりかごが包み込んだ。
飛びかかったキラーアントは焔に触れると、灰と化した。
カツン…と魔石が落ちる。
「……ベル………さま………」
握り締めた双剣が守ってくれた。
あの冒険者が守ってくれた。
どこか抜けている冒険者が。
今まで見た中で最も速いあの人が。
自分が騙したあの人が。
あの純粋すぎる人が。
「……ベル様……ベル様……リリは…リリは…!」
リリが双剣を見ると、黄金と深紅の輝きを取り戻し、宝玉は爛々と煌めいている。
ヴゥン…と聞きなれない音がリリの鼓膜をたたいた。
音がしたのは、キラーアントの後方。
リリの正面。
揺らめく焔を挟んだ向こうがわ。
リリが目をこらす。
影があった。
縦に伸びる影。
まるで地面から浮き出たような。
始めは一本の線だったそれが一瞬で広がった。
そこから、人影が出てくる。
「アーイズビルグ」
人影が地面に棒状の何かを打ち付ける。
一瞬の内に、辺り一帯が氷に閉ざされた。
唯一氷が無いのは、リリを覆う焔の中だけ。
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