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新訳紅桜篇
10 スパイを甘く見てはいけない。
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_「じゃあ、もう逃げていい?
  だってもう、時間ないでしょ?」

_「ああ、いいぜェ。せいぜい捕まんねェようになァ。」

_「大丈夫、私、かくれんぼには自信あるから。
  あと、数えるのは30秒ね、だってこの船、超広いから。」


 じゃ、と言ってその場を去る。
 角を曲がったところで、『例の場所』に瞬間移動した。

 え? モチロンあの魔法を使って。


 隠し持っていた杖で、呪文を唱えてから、『部屋』に入る。
 全て元通りにしておいた。


 さてさて。ここからが楽しみだなぁ。


 独りひそかに笑っていると、そとで声がした。

_「オイ、大至急アンナを探せ、ーーーー」


 晋助の声だ。


 …晋助、それはないんじゃない!?
 ズルはいけないよ、ズルは。
 アンタ、大の大人でしょ?


 そんなことを考えていると、ふと部屋から声がした。

_「どうせ、30分も満たないうちに捕まると思うがなァ。」



 音からして、色々と部屋をあさっているようだ。
 アイツ、そんなことしていいの?
 プライバシーってもんを知らんのかね、アイツは。




  − 2時間後 ー


 やっと解放された。

 戸締りをして杖をしまうと、部屋の前に瞬間移動し、部屋の戸を開けた。


 中にはちゃんと、晋助がいたようだ。


_「オイ、お前どこ行ってたんだァ?心配したんだぜェ。」

_「ドンマイだったな、晋助。だから言っただろう?
  私はかくれんぼには自信があるって。」

_「ま、どうでもいいから、とにかく戻んぞ。
  お前の荷物をどうにかせんといかんだろう?」


 あ、忘れてた。

_「そうだな、そうするとしよう。」



 晋助の部屋に戻ると、また子がオロオロしていた。

_「あー、もう!どこ行ってたんスか?探したんスよ!?」


 そうそう、晋助が大人げないことしてたからでしょ? wwww

_「すいませんね、先輩ィ。
  なにしろ色々と忙しかったものですから。

  お許しくださいな テヘ」

_「テヘ、じゃないッスよ。ま、とにかく見つかったんで安心したッス。
  じゃ、私はこの辺で。」


 と言ってまた子は去っていった。

_「零杏、」


 ん?

 後ろを振り返ると、晋助の顔がすぐ近くに迫っていた。


 え?


 すると、景色が反転して、なぜか晋助が上にいる。



_「放せ、晋助。」

_「…ヤなこった。」


 暴れてみても、何してみても、晋助(かれ)には全然効かなかった。


_「暴れんなや、痛いだろうが。」


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