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黒川暗子の怪人事情
正義は辛いよ
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灰田(はいた)文乃(ふみの)は今巷で話題の人気ヒーローK.Aのサポーターである。
サポーターの仕事は多岐にわたり例えば怪人を倒した後政府から報酬をもらい壊れた物(怪人が壊した物を含む)の弁償や『ヒーロー』のサイン会等のイベントを行う場合はその手配
文乃の場合はK.Aの生活能力が壊滅的なのでその世話も見ている

灰田文乃はサポーターである…………サポーターであるがそれより前に雑誌記者である
月刊雑誌『ジャスティス』の数ページを任されているが文乃の書いた記事が世に出ることはない

そもそも記事を書いていないのだから当然だ
サポーターとしての仕事が忙しすぎるのだ

無口で事件があるとき以外はぼーっとしている『ヒーロー』は事件の大きさにこだわらず耳に入ったら直行してしまう
あまり会話をしてくれず取材もできない

会社からしたら働かない穀潰しと変わらないのではないか?
そうではない

何故なら文乃をK.Aのサポーターにしておけば文乃の会社はK.Aを応援している唯一の企業でいれるのだ
そのため月刊雑誌『ジャスティス』は毎月売り切れ完売
唯一謎の『ヒーロー』K.Aについての情報が載る可能性がある雑誌なのだから子供から大人まで夢中だ

文乃としてもぜひ記事にしたいが忙しい
なので今日文乃はせめて謎の『ヒーロー』K.Aが何故K.Aと名乗るのか彼の晩御飯である肉じゃがをタッパーに詰めて彼の住んでいる六畳一間のアパートに訪れた(ちなみに彼は大活躍ヒーローなので本来は億ションどころか豪邸に住めるほどのお金を持っている)
それもビッシリとスーツを着て

「灰田です!入りますよー」

声だけかけて合鍵を使い部屋に入ると相変わらず大人気ヒーローは部屋の隅でぼーっとテレビを眺めていた
もちろんニュースである
そして近場で事件があればすぐに駆けつける
実際に年齢を聞いたことが無いのでわからないが文乃の見立てではまだ高校生程度の年齢に思える彼は『ヒーロー』であること以外の行動をしない
遊びに行くことはもちろん家事もしない
本を読んでいると思ったら格闘技や怪人についての難しい本だった



「…………どうも、いつもありがとうございます」

ぼそぼそとお礼を述べる大人気ヒーロー
彼と会話できるのは社内でも文乃だけだ
ここまで歩み寄るのに大変苦労した

鞄から彼の食事を取り出し並べると彼はぼそぼそといただきますと言うと食事を始めた
彼の世話をする前は自炊することがほとんどなかったが最近では少し凝った料理を作ってあげようかと思う程度にはなった

女子力の向上である

いつもなら彼が食事をするまで正座で待機して食べ終わると片づけて帰るが今日の文乃はいつもと違う
少しだけ彼との距離を詰めようと決心している


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