第一章 邂逅のブロンズソード
第2話 姫騎士ダイアン
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
王国軍が秘密裏に養成していた暗殺部隊じゃ――」
動揺を隠しきれず、帝国兵達が声を荒げた瞬間。
「ふいっち!」
事故は、起きた。
「――は?」
不遜に口元を緩めながら、優雅に空中で回転していた男は――華麗に着地するものと思いきや、頭から地面に突き刺さってしまったのだ。
石畳さえ貫通する勢いで、彼の上半身は無惨に埋没し――空気に触れている下半身だけが、ヒクヒクと痙攣していた。
一応生きてはいるようだが、抜け出して来る気配はない。過程はどうあれ今の状況を鑑みるなら、結果的には帝国兵達の勝利と言えるだろう。
だが、彼らはあまりの事態に空いた口が塞がらず、一つの疑問に思考回路の全てを支配されてしまっていた。
結局こいつは何だったのか、と。
「そこのあなた達! 何をしているのですか!」
その時。
涼風のように艶やかな声が、街道に響き渡る。
「げっ!?」
「まずい、あのお転婆姫か!」
それを耳にした帝国兵達は我に返ると、焦りを滲ませた表情で互いの顔を見合わせる。既に地面に突き刺さった男のことなど、眼中にはない。
「仕方ねぇ、ずらかるか!」
「……クソッ、敗戦国の癖に偉そうにしやがって。いつか絶対、ヒィヒィ啼かせてやるからな……!」
帝国兵達は短いやり取りの中で撤退することを選択し、足早にその場から逃走していく。その判断に滞りがないことから、この事態には慣れていることが伺えた。
あっさりと少女を手放した彼らは、全く間に姿を消してしまう。
彼女が顔を上げる頃には足音すらなくなっており、現場には石畳に突き立てられた男の下半身のみが残されていた。
「くっ……! あの帝国兵達、どこへ……!」
「……!?」
すると、少女の眼前に――帝国兵達が退く原因となった声の主が駆け付けてきた。
「あ、あ、あの……!」
「……遅くなってしまい、申し訳ありません。――お怪我はありませんか?」
透き通るような白い肌。太陽の輝きを浴び、眩い煌めきを放つ栗色のショートボブ。蒼く済んだ瞳に、芸術の如く整い尽くされた目鼻立ち。
加えて十五、六歳前後の体格でありながら、その身体のラインは完成形に近しい女性らしさを備えている。新緑の色を湛えた軽鎧とミニスカートの上からでも、そのなだらかなラインが伺えた。
さらに彼女の左腕には、一角獣の紋章で彩られた盾が装備されており、その腰には同様に一角獣の角を象った剣が提げられている。
そんな彼女の凛々しい戦乙女の姿に、少女はすっかり目を奪われていた。慈しむような微笑みを浮かべて手を差し伸べるその姿に、少女は年上でありながら完膚なきまでに魅了されてしまっている。
「そ、そんな……! 私なんかには、もったい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ