第一章 邂逅のブロンズソード
第2話 姫騎士ダイアン
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「そ、そんな!」
そんな時。
帝国兵達に縋り付くように、店のオーナーらしき初老の男性が制止に入る。
だが、彼の言葉を真摯に受け止めるような人間達なら、そもそも女性を強引に連れ帰るような真似はしない。
「お願いします、その娘は私達にとっては家族なんです! お代ならお返ししますから、どうかその娘だけは……!」
「――あぁもう、うるせぇな! グダグダ抜かすとこの女だけじゃ済まなくなるぞ!」
「うがっ……!」
「キャアッ! ルーケンさんっ!」
懸命に食い下がる男性の鼻頭に、剣の柄が減り込む。痛烈な一撃を受けた彼は膝から崩れ落ち、帝国兵の一人から罵声を浴びせられた。
その光景を目の当たりにした少女は、我に返ると短い悲鳴を上げ、すぐさま彼のそばに駆け寄ろうとした――が、他の帝国兵達に両脇を固められていては、身動きなど取れるはずもない。
ルーケンと呼ばれた男性は、なおも少女を助けようとするが――彼の覚束ない足取りでは、もう帝国兵達を追うことはできないだろう。
そうしている間にも、少女は帝国兵の男達に連れ去られようとしていた。
街の人々はその様子を見送りながら、やがて申し訳なさそうに目を伏せて、この場を離れていく。帝国兵にだけは、目を付けられないように。
それが、敗戦国の民が生き延びる術なのだから。
――だが。
「ちょっと待った!」
その理から外れた男が一人。
帝国兵達の前に現れた。
「あ? なんだお前」
「女の子に乱暴したり! 人に怪我させたり! そんなことをしてるあんた達を、見過ごすわけには行かないな! さぁ、彼女を離せッ!」
「……はぁ?」
身の程を知らない――としか思えぬ男の言葉に、帝国兵達は唖然としている。
それにより、数秒程度の沈黙が流れ――
「ぶっ……はははは! なにお前! 正義の味方気取りか!? しかもその格好で!?」
「イカれた奴がいるもんだな、王国には!」
「や、やべぇ! 笑い死にしそう!」
――爆笑に次ぐ爆笑。絶え間ない笑い声が、城下町の往来に轟いていた。
王国の騎士団ですら、怯えてまともに取り合えない帝国兵を前に、この台詞を吐けば笑われて当然なのだが……当の本人はきょとんとしている。
「あ、あのな! ジブン、結構真面目に言ってるんだけど……!」
「ひひひ、わかった、わかったからもうこれ以上笑わせんなって。聞かなかったことにしといてやるからよ」
「イイ歳こいてダセェ格好してんじゃねーよ、ギャハハハ!」
「騎士団ごっこはそろそろ卒業しろよ、親が泣くぞ!」
そんな彼の傍らを素通りしつつ、男達は下品な笑い声を上げて往来を進んでいく。一方、少女は現れた男を虚ろな瞳で見つめていた。
彼らが笑う理由には、男
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