本編
第二話
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イズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ、門を開けて頂戴」
だがその答えは意外な事に賊でも客人でもなかった。ルイズ・フランソワーズ、その名前を彼は知っていた、自分がここで勤め始めるよりも数年程前に忽然と姿を消したヴァリエール家の三女だ。彼女が行方不明になった時は、ヴァリエール家当主、つまりルイズの父親が私設の軍隊を総動員し、さらにはトリステイン王家までも巻き込んで大騒動になった、今では落ち着いてはいるがそれでもまだ軍の一部は捜索隊として当てられている。それが急になんの前触れもなく唐突に本人が自分で帰ってきたというのだ。これはますます怪しいと彼は思ったが、万が一ということもある、何より自分はその騒動中心である三女の顔を知らない。
「暫し待たれよ」
これは流石に自分で判断することはできないと彼は考え、上司の意見を仰ぐことに決めた。一度門の内側に入り、念のため鍵を閉め庭を走り抜け屋敷に入った彼は近くにいたメイドを呼び止め執事長を呼んできてもらうように言った。執事長であれば三女の顔も見知っているし適格な判断をしてくれると考えて行動だった。
それから待つこと数分、すでに老年に差し掛かりながらも背筋は真っすぐで皺一つない燕尾服もあいまってある種の貫禄のようなものさえ感じる執事長がゆっくりとやってきた。
「どうされたのですか?」
そう問う執事長は門番から事情を聴くと目を見開いて一目散に外に向かって駆け出た。そして門の外にいる少女の姿を見ると、いつもは冷静である執事長は人が変わったように慌てて門番から引っ手繰るようにして門の鍵を受け取ると、手でゆっくり開けるのも煩わしいとばかりに体当たりするように門をこじ開けると少女の前に膝をついた。
「おう、おう、その姿は間違いなくルイズお嬢様! よくぞ、よくぞ御無事で御戻りに……私はお嬢様が消えてしまったあの日からずっと探しておりました!」
「久しぶりね爺、長い間留守にしてごめなさい」
「滅相もございません! ずいぶん立派になられたようで……」
少女に縋りつくようにして涙を流す執事長の姿は普段の様子とは全く正反対で、まるでそこらの平民の家にもいそうな歳を食ったおじいちゃんという感じだった。
「ささ、すぐにお屋敷の中へ、お父上とお母上にもこのことお伝えしなければ!」
「姉さま達は屋敷にはいないの?」
「残念ながらお二人はここにはおりませんが、すぐに使いの者を出しますのご安心ください。さ、お荷物をお持ちします」
「ごめんなさい、この荷物は皆へのお土産も入ってるから自分で持っておきたいの」
「おお、そうでございましたか! それでは一刻も早くそれをお渡ししなければ」
門番である彼はその光景を見て執事長の
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